障がいのある人と生活保護法|対象になるケースや誤解されやすい点
著者: フラカラ編集部
このコラムのまとめ
「障がいがあっても生活保護を受けられる?」「自分は生活保護の対象になる?」「障害年金と生活保護は同時に受給できる?」など、生活保護に関して疑問を感じている人も多いのではないでしょうか。今回は、生活保護の仕組みを説明するとともに、障がいのある人でも生活保護の対象になるかや、誤解されがちなポイントなどを解説します。生活保護を受けるのは決して恥ずかしいことではなく、健康かつ文化的に生きるための権利です。困窮していて生活保護を検討している人は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
生活保護(生活保護法)とは?障害者でも対象になる?
生活保護とは、生活保護法に基づき、生活に困窮している人に対して必要な扶助を行い、最低限度の生活を保障しつつ自立を助長する制度です。支給額は一律ではなく、世帯の状況に応じて決まります。
生活保護では、最低生活費という支給額の目安が設けられています。健康で文化的な最低限度の生活を維持するために必要な1か月の費用を指し、年齢・世帯構成・所在地などを基準に決定されます。世帯の収入が最低生活費に満たない場合に、不足分が保護費として補われるシステムです。なお収入は就労収入だけでなく、年金などの給付・仕送り・財産収入なども含まれます。
生活保護は、障害がある人も対象です。障害のない人と同じく、資産の活用や他制度の利用可能性も含めて検討し、なお不足があるときに適用されます。障害によって就労の制約や通院・介助の負担が重なり家計が崩れやすい場合は、その事情もふまえて判断されます。
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生活保護の対象になるケース
生活保護の対象になるかは、世帯の収入が最低生活費を下回っているかで判断されます。給与だけでなく年金や仕送りなども含めて収入を整理し、預貯金などの資産を生活費に充ててもなお不足が続く場合は、対象になり得ます。
もちろん、障害や病気で働くことが難しい人や、治療や介護で家計が圧迫されている人、家族からの援助が期待できない人なども対象になる可能性が十分にあるといえるでしょう。
なお、現在働いていて収入がある人でも、収入額が最低生活費に満たなければ不足分の受給が可能です。また持ち家や自動車があると対象外と思われがちですが、自治体に相談したうえで居住用として保有が認められる場合や、一定条件で自動車の保有が認められる場合もあります。逆に、住まいがない状態でも申請できます。
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障害者手帳があると生活保護を受けやすくなる?
障害者手帳があると、必ずしも生活保護を受けやすくなるわけではありません。生活保護は最低生活費と収入の差を補う制度なので、手帳の有無より、世帯の収入・資産や他制度の利用状況をふまえて不足があるかを中心に判断されます。手帳があっても収入が基準を上回れば対象にならず、手帳がなくても困窮の程度によっては対象になります。
ただし、手帳が役立つ場面があるのも事実。障害の状態を公的に示す資料として、就労が難しい事情や生活上の制約を説明しやすくなります。また、申請者の支援の必要性が認知されやすいことから、審査がスムーズに進むケースも有り得るでしょう。
生活保護と障害年金の違いは?
生活保護と障害年金は、目的と判定基準が異なります。生活保護は、世帯の収入と最低生活費を比べて不足があるときに不足分を補う仕組み。収入や資産の状況に応じて、支給額が調整されます。
一方の障害年金は、病気やけがで生活や仕事などが制限される状態になった場合に、年金制度から給付される公的年金です。収入や財産の制限はなく、家族や親族から援助があっても減額されない点も大きな違いだといえるでしょう。
障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金があり、初診日や加入している年金制度・保険料の納付状況・障害等級などの要件で判断されます。請求は年金請求書などを提出して行い、市区町村役場や年金事務所などで申請を行います。
なお、適用条件も異なります。生活保護の適用条件は家族・親族などの援助が受けられない・資産を持っていない・病気や怪我で就労ができない・公的融資や支援がうけられないなどが条件です。
障害者年金は、障害の原因となった傷病により初めて病院に行った日(初診日)が年金制度の被保険者期間であること。初診日の前日において、年金保険料を一定期間以上納付している。障害年金の基準をクリアした障害の状態に該当していることが挙げられます。
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生活保護と障害年金は同時に受給できる?
生活保護と障害年金は同時に受給できます。そもそも、生活保護は年金などほかの制度が利用できる場合は、そちらを先に申請する必要があります。そのため、生活保護を受ける場合で障害年金を利用できる場合、年金申請が必須となる仕組みです。
ただし、両方を別々に満額で受け取れるわけではありません。生活保護は最低生活費と収入の差額を補う制度なので、障害年金を受け取る場合、その年金は収入として扱われ、生活保護費はその分だけ差し引かれます。
また、障害年金は2か月に1回の支給で、生活保護費は毎月支給されるため、年金が入る月は保護費が大幅に減る点には注意が必要です。月ごとに受給される金額が変わるので、計画的な家計管理が大切です。
支給される金額は併用でも大きく変わらないため、それほどメリットを感じないかもしれませんが、実は障害者加算という制度が受けられる利点があります。以下で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
生活保護と障害年金の同時受給のメリットは障害者加算
生活保護と障害年金を同時受給するメリットは、障害者加算です。障害年金1級または2級を受給している人は、生活保護に障害者加算がプラスされます。支給額や受給条件は地域によって異なるものの、概ね月額1〜3万円程度の加算が見込まれます。
障害者加算が追加される理由としては、障害がない人よりも多めの保護費が必要になることが挙げられるでしょう。例えば足が不自由な場合、近所に買い物に行く際でもタクシーを利用するケースが考えられます。障害があることによって発生しうるコストを、障害者加算で賄うイメージです。
障害のある人と生活保護でよくある誤解
障害のある人と生活保護でよくある誤解としては、支給額や申請に関してのトピックが挙げられます。以下で個別に解説しているので、参考にしてみてください。
生活保護と障害年金は両方満額もらえるので収入が増える
生活保護と障害年金を同時に受給して、両方満額もらえれば収入が増えるというのは、よくある誤解のひとつです。上述したとおり、障害年金は収入として認定されるため、年金が支給されるとその分だけ生活保護費が調整されます。
例えば最低生活費が月13万円で障害年金が月7万円なら、不足分の月6万円が生活保護費として支給され、合計は月13万円になります。年金が月9万円の場合の生活保護費は、月4万円です。
生活保護を受けていると障害年金は申請できない
生活保護を受給中でも、障害年金の申請はできます。生活保護は、活用できる年金や手当など他制度を活用する考え方が前提なので、受給中に年金請求を進めることは制度とも矛盾しません。
注意点すべきポイントは、申請した事実と進捗、決定後の支給額などを福祉事務所へ共有すること。障害年金は収入として認定され保護費が調整されるため、決定通知などが届いたら速やかに報告しましょう。
障害年金をもらうと生活保護が打ち切りになる
障害年金を受給したからといって、生活保護が自動で打ち切られるわけではありません。生活保護は差額補填なので、障害年金で支給されるぶんの保護費が減る形で調整されます。調整の結果、最低生活費に足りないなら生活保護は継続します。
保護の廃止につながるのは、年金などの収入が最低生活費を上回り、不足分がなくなった場合です。例えば最低生活費が月13万円で障害年金が月14万円の場合は最低生活費を超えているため、生活保護を必要としない状態になります。
家族には必ず連絡(扶養照会)がある
生活保護を申請すると、家族に必ず連絡がいくというのも、ありがちな勘違いです。生活保護を申請すると、まず扶養義務者がいるかが確認され、本人からの聞き取りなどで扶養の可能性を調べます。そのうえで、扶養義務の履行が期待できると判断される相手に対して照会を行う仕組みなので、一律に全親族へ連絡する運用ではありません。連絡してほしくない人がいる場合は、ケースワーカーに理由を添えて伝えれば、強引に連絡されることもないでしょう。
照会方法も、対象者の区分に応じて重点的に調査する相手を絞り、それ以外は文書照会など必要最小限度の連絡が行われるので、周囲の人すべてに申請していることがバレることもありません。
また、DVや虐待の背景がある、一定期間音信不通で交流が断絶している、借金や相続をめぐる対立のような著しい関係不良がある場合などは、個別に慎重に検討したうえで扶養照会を行わないケースもあります。
生活保護の申請方法や手続きの流れ
生活保護の申請窓口は、居住地または現在地を管轄する福祉事務所です。これらの窓口で、まずは相談を行います。世帯構成・収入と支出・預貯金などの資産・年金や手当の受給状況・健康状態などを伝えましょう。
相談をする際には、預金通帳・健康保険証・賃貸契約書・年金決定通知書・障害者手帳・診断書などを持っていくと調査がスムーズに進みますよ。相談ののち申請書を提出すれば、手続きが始まります。なお、申請する意思がある場合は、相談せずに申請のみ行うことも可能です。
申請後は、家庭訪問などで生活状況の調査などが行われ、扶助の要否と必要量が決まります。決定は原則として申請の翌日から14日以内、特別の場合でも30日以内に通知するとされています。
生活保護の障害者加算の申請方法
生活保護の障害者加算は、申請しないと支給されません。申請したい場合は、福祉事務所に対して障害者手帳・国民年金証明書・特別児童扶養手当証書・福祉手当認定通知書・医師の診断書・障害の程度が証明できる書類のいずれかの提出が必要なため、用意しておきましょう。
認定条件は、障害等級表の1級もしくは2級、または国民年金法施行令別表に定める1級のいずれかに該当する障害のある人。障害等級表の3級または国民年金法施行令別表に定める2級のいずれかに該当する障害のある人も対象です。
認定条件を満たしており、申請が受理されれば、原則として申請月(または受給要件を満たした月)から加算が適用されます。
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まとめ
今回は、生活保護の仕組みを説明するとともに、障がいのある人でも生活保護の対象になるかや、誤解されがちなポイントなどを解説しました。
障がいのある人でも、生活保護は受けられます。また障害の程度によるものの、障害者加算が受けられるケースもあります。加えて、障害年金をもらっている人でも、最低生活費よりも収入が低ければ生活保護を受給できる可能性も十分あるといえるでしょう。
生活保護を受けるのは決して恥ずかしいことではありません。健康かつ文化的に生きるための権利です。障がいが原因で生活に困っている人は、申請を検討してみてください。