PTSDの人が安心して働くための配慮と支援制度の活用ガイド
著者: フラカラ編集部
このコラムのまとめ
PTSDを抱えながらも安心して働き続けるための実践的ガイド。症状の理解から適切な職場環境の選び方、利用できる支援制度、復職のステップまで解説。実際に働き続ける人の体験談や専門家の助言を交え、PTSDと共存しながら自分らしいキャリアを築くためのポイントを紹介しています。
PTSDの人が利用できる支援制度と申請方法
PTSDの症状があっても適切な支援を受けることで、安定した生活や職場復帰への道が開けます。ここでは、主な支援制度とその申請方法を紹介します。
自立支援医療制度の活用法
自立支援医療制度は、PTSDを含む精神障害の治療にかかる医療費の自己負担を軽減する制度です。通常3割の医療費負担が原則1割になります。
対象となる治療と申請方法
対象となるのは通院での診察、処方薬の調剤、精神科デイケアなどです。申請には診断書、申請書、健康保険証、身分証明書などが必要です。お住まいの市区町村の障害福祉課で手続きができます。
精神科医
傷病手当金・障害年金の申請方法
PTSDで働けなくなった場合、傷病手当金を受給できる可能性があります。健康保険加入者が対象で、標準報酬日額の約3分の2が最長1年6ヶ月支給されます。申請は加入している健康保険協会や健康保険組合で行います。
長期的に症状が続く場合は、障害年金の申請も検討できます。申請には医師の診断書など複数の書類が必要です。
障害者手帳と雇用支援制度
精神障害者保健福祉手帳を取得すると、就労支援サービスの利用や税金の減免などの支援を受けられます。申請には診断書、写真、申請書などが必要で、市区町村の窓口で手続きします。
手帳があれば障害者雇用枠での就労や就労移行支援などのサービスを利用できます。
その他利用できる支援
犯罪被害によるPTSDの場合は、犯罪被害給付制度を利用できることがあります。また、症状が重く就労が難しい状況では、生活保護の申請も選択肢の一つです。
精神保健福祉士
これらの支援制度をうまく活用することで、PTSDの治療に専念しながらも経済的な基盤を保つことができます。自分の状況に合った制度を選び、必要な支援を受けることが、回復への第一歩となるでしょう。
PTSDの人が働き続けるための職場での配慮
PTSDの症状があっても、適切な環境調整と周囲の理解があれば、多くの人が働き続けることができます。ここでは、具体的な配慮点を解説します。
トリガーを把握し環境を整える方法
PTSDの人にとって、症状を悪化させる「トリガー」を特定し、対策を講じることが重要です。
- 静かな場所や壁に向かった席など、刺激の少ない作業環境を確保する
- 突然の大きな音や予測不能な状況を減らす工夫をする
- 一時的に休める「クールダウンスペース」を設ける
臨床心理士
業務内容・勤務形態の調整
症状特性に合わせた業務調整は、能力発揮と症状悪化予防の両面で効果的です。
- フレックスタイムや在宅勤務の活用
- 予測可能性が高く、突発的な変更が少ない業務への配置
- トリガーとなる状況を含む業務の免除
上司・同僚への伝え方
職場での理解を得るには、適切なコミュニケーションが重要です。
- 全てを詳細に話す必要はなく、業務に関係する症状と必要な配慮に焦点を当てる
- 医学的な説明よりも「こうしてもらえると助かる」という具体的な協力依頼の形が効果的
- 配慮を求める理由と業務上のメリットを結びつける
PTSDを含む精神障害のある人には、「合理的配慮」を受ける権利があります。
必要に応じて産業医や産業保健スタッフのサポートを活用し、自分に合った職場環境づくりを進めていきましょう。
PTSDの人の就職・復職のための具体的ステップ
PTSDがある中での就職や復職は不安も多いものですが、段階的なアプローチで安定した職場復帰や新たな就職を実現できます。
就労移行支援事業所の活用法
就労移行支援事業所は、障害のある人の就職準備をサポートする福祉サービスです。
- 体調管理や生活リズムの安定化支援
- ストレス対処法や症状管理スキルの習得
- 職場体験や企業実習の機会提供
- 就職活動の具体的サポートと就職後の定着支援
利用には「障害福祉サービス受給者証」が必要です。お住まいの市区町村の障害福祉課で相談してください。
リワークプログラムの活用
リワークは休職中の方が職場復帰に向けて準備するプログラムです。
就労支援員
段階的な復職プラン
復職は以下のような段階を踏むことで、無理なくスムーズに進められます。
- 準備段階:生活リズムの確立、短時間の集中作業の練習
- 第1段階:短時間勤務(1日2〜4時間)、週3日程度
- 第2段階:勤務時間延長(1日4〜6時間)、週4日程度
- 第3段階:ほぼ通常勤務時間、週5日
職場との復職前面談
復職面談では、以下のポイントを明確に伝えましょう。
- 段階的復職の具体的スケジュール
- 業務内容と量の調整(特にトリガーとなる業務の回避)
- 症状悪化時の対応手順
- 定期的な状況確認の機会の設定
焦らずに一歩ずつ進み、必要な支援を活用しながら、自分のペースで働ける環境を作っていきましょう。
PTSDの人に向いている仕事環境と職種
PTSDの症状は人によって異なるため、「絶対に向いている仕事」というよりも、自分の症状特性や対処能力に合った環境や職種を選ぶことが大切です。
ストレス軽減につながる職場環境
PTSDの症状管理のしやすさという観点から、以下のような特徴を持つ環境が働きやすい傾向があります。
- 静かで落ち着いた雰囲気の職場
- 個人スペースが確保されている環境
- 予測可能性が高く、突発的な変化が少ない
- 休憩できる静かなスペースがある
- メンタルヘルスへの理解がある組織文化
症状別に配慮された職種例
症状のタイプによって、比較的働きやすい職種の特徴も異なります。
フラッシュバックや侵入症状が強い場合
- データ入力やシステム管理などのIT関連職
- 会計や経理など、定型的な業務が中心の職種
- 研究職や分析業務(じっくり取り組める環境)
過覚醒症状が強い場合
- 図書館関連の仕事(司書など)
- 在宅ワークが可能な執筆や編集業務
- 深夜勤務のあるデータセンター監視など(人との接触が少ない)
キャリアカウンセラー
テレワーク・フレックスの活用
柔軟な働き方は、PTSDの症状管理との両立に役立ちます。テレワークでは安全な自宅環境で働け、通勤ストレスを避けられるメリットがあります。フレックスタイム制は体調に合わせた勤務時間調整が可能です。
最適な仕事環境は人それぞれです。自分の症状の特徴や強み、興味に合わせて選択することが重要です。
どんな職種でも、適切な配慮があれば多くの仕事に挑戦できる可能性があります。
PTSDと働き続けている人の体験談
PTSDと診断された後も働き続けている人々は、さまざまな工夫や支援を活用しながら職業生活を送っています。実際の体験談から、困難を乗り越えるためのヒントを見出しましょう。
困難を乗り越えた工夫と転機
30代・事務職・Aさん
40代・製造業・Bさん
支援制度を活用した実例
30代・金融機関勤務・Cさん
体験者からのアドバイス
- 「完全回復」を目指すよりも、「症状と共存しながら自分らしく生きる道」を探す
- 調子の良い時に無理をしすぎず、エネルギー配分を考えた働き方を心がける
- 小さな成功体験を積み重ねることで、少しずつ自信を取り戻す
- 支援制度の活用は「甘え」ではなく「回復のための投資」と捉える
PTSDから回復し就労支援員となったDさん
職場の人がPTSDの同僚にできる配慮と接し方
PTSDを持つ同僚と働く際、適切な配慮と理解ある接し方は、お互いが安心して働ける職場づくりに貢献します。このセクションでは、効果的なサポート方法を解説します。
信頼関係を構築するコミュニケーション法
PTSDの人との信頼関係構築には、以下のような姿勢が重要です。
- 遮らずに最後まで話を聴く(傾聴)
- 評価や判断をせず、そのまま受け止める(受容)
- 簡単な解決策や励ましの言葉を性急に提案しない
- 相手のペースを尊重する
PTSDを持つ会社員
緊急時の適切なサポート方法
職場でフラッシュバックなどの症状が現れた場合の基本的な対応は以下の通りです。
- 安全な環境を確保する(人目の少ない静かな場所へ誘導)
- 穏やかな声で話しかける(大きな声や急な動きは避ける)
- 現在の日時や場所を静かに伝える(「今は〇月〇日で、ここは〇〇です」)
- 呼吸を整えるサポートをする(「一緒にゆっくり深呼吸しましょう」)
- 本人の意思を尊重する(無理に接触したり、閉じ込めたりしない)
過剰な気遣いを避けた自然な関わり方
日常業務での自然なサポート方法は以下の通りです。
- 業務指示は明確に、できれば文書で残す
- スケジュール変更は可能な限り事前に伝える
- 能力を発揮できる機会を提供する(特別扱いし過ぎない)
- 成功体験に対して具体的な評価をフィードバックする
何より重要なのは、「病気や障害」ではなく「一人の人間」として接することです。
症状や診断名ではなく、その人自身の個性や能力、貢献に焦点を当てた関わりが、真の意味での共生社会への一歩となります。
専門家に相談できる窓口一覧
PTSDの症状と向き合いながら働くためには、適切な専門機関や相談窓口を知っておくことが重要です。症状の程度や状況に応じて、様々な分野の専門家に相談することができます。
医療機関・カウンセリング
精神科・心療内科
PTSDの専門的な治療を受けるための主な医療機関です。
- トラウマ治療の専門プログラムがある精神科クリニック・病院
- 認知行動療法(特に持続エクスポージャー療法、EMDR療法など)を提供している医療機関
- 大学病院の精神科(特に外傷ストレス関連障害の専門外来)
臨床心理士
就労支援機関
PTSDと共に働くための支援を行う主な機関です。
- 地域障害者職業センター:職業評価、職業準備支援、リワーク支援などを実施
- 障害者就業・生活支援センター:就業面と生活面の一体的な相談支援
- ハローワーク「専門援助部門」:障害者向けの職業相談・紹介
- 就労移行支援事業所:就労スキルトレーニング、就職活動支援
法的支援・権利擁護
PTSDが犯罪被害や職場の問題に起因する場合の相談窓口は以下の通りです。
- 全国被害者支援ネットワーク(全国共通ナビダイヤル:0570-783-554)
- 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)
- 総合労働相談コーナー(各労働局や労働基準監督署に設置)
相談窓口を利用する際は、症状やこれまでの経過をメモしておくなど、事前準備をすると相談がスムーズに進みます。
一人で抱え込まず、これらの専門家や支援機関を活用してください。
PTSDとは?働く上での影響について
PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、命の危険を感じるような出来事や深刻な恐怖体験により、その記憶が繰り返し思い出される精神障害です。単なるストレスではなく、トラウマによる脳機能の変化が関わる障害として理解されています。
PTSDの主な症状と仕事への影響
侵入症状(フラッシュバック)
トラウマとなった出来事の記憶が、本人の意思とは無関係に突然よみがえる現象です。
- 仕事への影響:会議中に集中力が途切れる、突然のパニック反応により業務が中断するなど
回避症状
トラウマを思い出させる状況や場所、話題などを避ける行動です。
- 仕事への影響:特定の業務や場所を避ける、チーム活動を回避し孤立しがちになるなど
過覚醒症状
常に神経が張り詰めた状態が続き、些細な刺激に過剰に反応します。
- 仕事への影響:集中困難、予測せぬ変化へのストレス、睡眠障害による疲労など
精神科医
単純性PTSDと複雑性PTSDの違い
単純性PTSDは一回の明確なトラウマ体験により生じるのに対し、複雑性PTSDは長期間の繰り返しのトラウマ(虐待、DVなど)によって引き起こされ、感情調節の問題や対人関係の困難さなどより複雑な症状を伴います。
PTSDは「弱さ」ではなく、トラウマへの脳と心の自然な反応です。適切な理解と支援があれば、多くの人が症状と共存しながらも充実した職業生活を送ることができます。
PTSDの症状悪化時の対処法
PTSDの症状はストレスやトリガー(引き金となる状況)に遭遇することで悪化することがあります。特に職場では予期せぬトリガーに遭遇する可能性も高く、症状悪化時の対処法を知っておくことが重要です。
休職の判断基準とタイミング
以下のようなサインが続く場合は、休職を検討するタイミングかもしれません。
- 症状が日常生活や仕事に著しい支障をきたしている
- 睡眠障害が深刻で、慢性的な疲労状態にある
- フラッシュバックの頻度や強さが増している
- 通勤そのものに強い不安や恐怖を感じる
産業医
症状悪化時の緊急対応プラン
職場でフラッシュバックが起きた場合の対処法
- 安全な場所に移動する(静かで人目につきにくい場所)
- グラウンディング技法を実践する(「今ここ」に意識を戻す)
- ゆっくりと呼吸を整える
- 水を飲む(冷たい水で現実感を取り戻す)
効果的なグラウンディング技法
- 足の裏で床の感触をしっかりと感じる
- 手のひらで椅子や机の質感を確認する
- 周囲の音に意識的に耳を傾ける
- 5-4-3-2-1テクニック(5つ見えるもの、4つ聞こえる音...と順に意識する)
症状悪化は回復の過程で起こりうるものです。適切な対処法を身につけ、必要に応じて休息や医療的サポートを求めることで、長期的な回復と職業生活の継続が可能になります。
まとめ:PTSDがあっても安心して働き続けるために
PTSDがあっても、適切な支援と環境調整によって安心して働き続けることは可能です。自己理解と症状管理、職場環境の調整、専門的支援の活用、そして周囲の理解と協力という4つの柱がバランスよく機能することが重要です。
精神科医
症状の完全な消失を待つのではなく、症状と共存しながら自分らしく生きる道を探っていきましょう。あなたは一人ではありません。
