双極性障害の「躁状態・うつ状態」別の就労対策と再発を防ぐ環境調整術
著者: フラカラ編集部
このコラムのまとめ
双極性障害があっても安定して働くための具体的な方法を解説。躁状態・うつ状態それぞれの症状に合わせた就労対策、職場での対処法、環境調整術を紹介。さらに適した仕事の選び方や実際の成功事例を通して、双極性障害とともに自分らしく働き続けるポイントがわかります。
双極性障害と上手に付き合いながら長く働くためのポイント
双極性障害の方が安定して長く働くためには、症状の特性を理解し適切な対策を講じることが重要です。以下では、職場で活躍するための具体的なポイントを解説します。
障害者手帳の取得と活用法
双極性障害の方は、精神障害者保健福祉手帳を取得することで様々な支援を受けることができます。
- 手帳を取得すると、公共交通機関の割引や税金控除などの経済的支援を受けられます
- 障害者雇用枠での就職が可能になり、より自分の体調に配慮された環境で働くことができます
- 自立支援医療制度を利用することで、通院医療費の自己負担が軽減されます
就労支援専門家
早期に躁状態に気づける環境づくり
双極性障害の悪化を防ぎ安定して働くためには、躁状態の前兆に早く気づける環境を整えることが大切です。
- 信頼できる上司や同僚に自分の症状について理解してもらいましょう
- 睡眠時間が短くなると躁状態を引き起こしやすくなるため、十分な休息を確保できる働き方を心がけましょう
- 自身の体調変化を記録するための日記やアプリを活用するのも効果的です
職場への伝え方と理解を得るためのコミュニケーション
双極性障害について職場で理解を得るためには、適切なコミュニケーション方法が重要です。
| 伝えるタイミング | 伝え方のポイント |
|---|---|
| 体調が安定しているとき | 自分の症状の特徴と対処法を冷静に伝える |
| 症状が現れ始めたとき | 事前に決めておいた合図や言葉で周囲に知らせる |
伝える際は、「自分でこのように対処します」という主体的な姿勢を示すことが大切です。また、自分の強みや貢献できる点も一緒に伝えると、より理解を得やすくなります。
服薬管理と通院の継続を支える仕組みづくり
双極性障害の安定した就労のためには、服薬管理と定期的な通院が欠かせません。
- 服薬を忘れないよう、スマホのアラームやお薬カレンダーを活用しましょう
- 通院のための休暇取得について、あらかじめ上司と相談しておきます
- 症状が安定していても治療は継続し、主治医と密にコミュニケーションを取りましょう
精神科医
フレックスタイム制度を活用したり、通院日を固定して業務スケジュールを調整したりすることで、仕事と治療を無理なく両立させることができます。通院時間を確保できる職場環境は、長く働き続けるための重要な要素です。
双極性障害の方に適した仕事と働き方の選び方
双極性障害の方が長く安定して働き続けるためには、自分の症状の特徴を理解し、それに合った仕事や働き方を選ぶことが重要です。
双極性障害に向いている職種・業界の特徴
双極性障害の方には、症状の波に対応しやすい特徴を持つ職種や業界があります。
- マニュアル化されていて手順が明確な仕事(データ入力、事務作業など)
- 自分のペースで進められる業務(プログラミング、ライティング、デザインなど)
- 短い締め切りが少なく、長期的なスケジュールで取り組める仕事
- ストレスが比較的少なく、過度な責任を負わない業務
就労支援カウンセラー
雇用形態別のメリット・デメリット
双極性障害の方がどの雇用形態を選ぶかは、症状の特徴や生活スタイルによって異なります。
| 雇用形態 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 正社員 | ・安定した収入 ・福利厚生が充実 |
・勤務時間が固定的 ・責任が重い場合がある |
| パート・アルバイト | ・勤務時間の調整がしやすい ・責任が比較的軽い |
・収入が不安定 ・福利厚生が少ない |
| フリーランス | ・時間や場所の自由度が高い ・自分のペースで働ける |
・収入の不安定さ ・自己管理能力が求められる |
在宅勤務・フレックス制など柔軟な働き方
近年増えている柔軟な働き方は、双極性障害の方にとって大きなメリットがあります。
- 通勤によるストレスや疲労を軽減できる
- 自分の体調に合わせて休憩を取りやすい
- 睡眠リズムを整えやすく、生活パターンを維持しやすい
在宅勤務の場合は、「仕事モード」と「休息モード」の切り替えが難しくなることもあるため、メリハリをつけることが重要です。
就労継続支援事業所の活用
一般企業での就労にハードルを感じる場合は、就労継続支援事業所の活用も選択肢の一つです。
- 就労継続支援A型:雇用契約を結び、最低賃金が保障される働き方
- 就労継続支援B型:雇用契約を結ばず、自分のペースで働ける
これらの事業所では、専門スタッフによるサポートを受けながら働くことができます。体調に合わせた作業時間の調整や休憩、通院のための配慮も受けやすい環境です。
双極性障害の再発予防のための環境調整術
双極性障害の方が長く安定して働き続けるためには、症状の再発を防ぐ環境づくりが不可欠です。日常生活や職場環境を適切に調整することで、症状の波を小さくし、安定した状態を維持することができます。
生活リズムの安定化による症状コントロール法
双極性障害の再発を防ぐ上で最も重要なのが、規則正しい生活リズムの維持です。特に睡眠は症状の安定に直結します。
- 毎日同じ時間に起床・就寝する習慣をつけましょう
- 休日でも平日と同じ生活リズムを維持することが大切です
- 朝起きたら太陽の光を浴びることで、体内時計を整えましょう
- カフェインやアルコールの摂取は控え、特に夕方以降は避けましょう
精神科医
ストレス管理と休息の取り方
ストレスは双極性障害の症状を悪化させる大きな要因です。効果的なストレス管理と適切な休息の取り方を身につけることが重要です。
- 自分なりのストレス発散法を見つけましょう(趣味、散歩、音楽鑑賞など)
- 「NO」と言える勇気を持ち、無理な仕事や約束は断りましょう
- 疲れを感じたら早めに休息を取る習慣をつけましょう
特に仕事中は、定期的に短い休憩を取ることが大切です。1〜2時間ごとに5分程度の休憩を入れるだけでも、集中力の維持やストレスの軽減につながります。
服薬管理と通院の継続
双極性障害の再発予防において、適切な服薬と定期的な通院は欠かせません。症状が落ち着いているときでも治療を継続することが大切です。
- お薬カレンダーやスマートフォンのリマインダーを活用し、飲み忘れを防ぎましょう
- 症状や副作用を記録し、診察時に医師に伝えられるようにしましょう
- 「調子が良いから」という理由で自己判断での服薬中止や減量は避けましょう
周囲のサポートを上手に取り入れる方法
周囲の理解とサポートを得ることで、症状の悪化に早期に気づき、適切な対応ができるようになります。
- 家族や親しい友人に自分の症状や必要なサポートについて説明しましょう
- 職場では、必要に応じて上司や同僚に状況を伝え、理解を求めましょう
- 自分の症状の変化に気づいてくれる「キーパーソン」を決めておくと安心です
双極性障害の方の就労成功事例
双極性障害があっても、適切な環境調整や周囲の理解、自己管理によって長く安定して働き続けている方々がいます。ここでは、実際の成功事例をご紹介し、どのような工夫が効果的だったかを見ていきましょう。
躁状態・うつ状態を乗り越えて長期就労を実現した方法
Aさん(30代・男性)のケースは、IT企業でのプログラマーとして7年間安定して働き続けている成功例です。
Aさん(30代・男性・プログラマー)
Aさんの成功のポイント
- 自分の状態を上司に説明し、適切な業務調整を実現
- フレックスタイム制と在宅勤務を組み合わせた柔軟な働き方
- 睡眠時間を確保するためのルールを自分で設定
職場の理解を得て働き続けている人の工夫
Bさん(40代・女性)は事務職として10年以上同じ会社で勤務しています。会社側の理解とサポート体制によって安定した就労を続けることができています。
| Bさんが行った工夫 | 会社側の対応 |
|---|---|
| ・産業医との定期面談を活用 ・体調変化を記録するノートを作成 |
・残業免除の特別措置 ・通院日の有給休暇取得の優先許可 |
再発を経験しながらもキャリアを築いた人のストーリー
Cさん(35代・男性)のケースは、再発と休職を経験しながらも、最終的に自分に合った働き方を見つけてキャリアを築いた例です。
Cさん(35代・男性・フリーランスデザイナー)
障害者雇用制度を活用した成功例
Dさん(20代・女性)は、就労移行支援事業所を経て障害者雇用枠で大手企業に就職し、3年以上安定して勤務しています。
- 精神障害者保健福祉手帳の取得と障害者雇用制度の活用
- 週30時間の短時間勤務と通院のための特別休暇の取得
- ジョブコーチによる定着支援の活用
これらの事例に共通するのは、自分の障害について理解し、必要な配慮や環境調整を行うことの重要性です。
周囲との適切なコミュニケーションと、専門的な支援の活用も成功への道筋となっています。
双極性障害とは?躁状態とうつ状態の特徴を理解する
双極性障害は、気分が異常に高揚する「躁状態」と気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。かつては「躁うつ病」と呼ばれていました。双極性障害の特徴を理解することは、適切な対応や就労支援を考える上で欠かせません。
双極性障害の基本知識と種類(I型・II型)
双極性障害には主に以下の2つのタイプがあります。
| タイプ | 特徴 |
|---|---|
| 双極性障害I型 | 躁状態が強く現れ、社会的問題を起こすことも |
| 双極性障害II型 | 軽躁状態(躁状態より軽度)とうつ状態を繰り返す |
精神科医
躁状態の主な症状と仕事への影響
躁状態の主な症状には以下のようなものがあります。
- 気分の高揚:異常に楽観的になり、常にハイテンションな状態
- 睡眠時間の減少:2〜3時間しか眠らなくても疲れを感じない
- 思考の速さと散漫さ:アイデアが次々と浮かぶが、まとまりがない
- 衝動的な行動:過度の浪費、無計画な投資などのリスク行動
- イライラや攻撃性:些細なことで怒りが爆発することがある
うつ状態の主な症状と仕事への影響
うつ状態の主な症状には以下のようなものがあります。
- 抑うつ気分:悲しさ、空虚感、絶望感が続く
- 興味・喜びの喪失:以前は楽しめたことに興味や喜びを感じない
- 疲労感・気力の低下:日常的な活動をするのにも大きな努力が必要
- 集中力・思考力の低下:決断が難しく、思考が鈍くなる
- 自殺念慮:死について考える、自殺を考える
混合状態について知っておくべきこと
双極性障害では、躁状態とうつ状態が同時に現れる「混合状態」が生じることがあります。この状態は特に注意が必要です。
双極性障害は治療によって症状をコントロールすることが可能な疾患です。気分安定薬や抗精神病薬などの薬物療法と、認知行動療法などの心理療法を組み合わせた包括的な治療が効果的です。
躁状態における就労対策と職場での対処法
双極性障害の躁状態は、エネルギーに満ち溢れている一方で、判断力の低下や衝動性の高まりなど、職場での様々な問題を引き起こす可能性があります。ここでは、躁状態の前兆を見逃さないための方法や、職場での具体的な対処法を解説します。
躁状態の予兆を見逃さないためのセルフモニタリング術
躁状態の前兆に早く気づくために、以下のような変化に注意しましょう。
- 睡眠時間の減少(寝なくても元気に感じる)
- 思考の速さの変化(考えが次々と浮かぶ)
- 話し方の変化(早口になる、話が止まらなくなる)
- 活動量の増加(じっとしていられない)
- 気分の高揚(普段より楽観的になる)
双極性障害とともに10年以上働いている会社員
躁状態でも無理なく働くための環境調整のポイント
躁状態の兆候がある場合でも、適切な環境調整によって仕事を続けることが可能です。
- 静かな作業環境を確保する(会議室の利用、パーティションの活用など)
- 業務の優先順位付けを明確にする
- タスクを小さなステップに分け、一つずつ完了させる
- 1〜2時間ごとに短い休憩を取り、過度な興奮を鎮める
- カフェイン摂取を控える
上司や同僚への伝え方
躁状態の兆候がある場合、職場の理解とサポートを得ることが重要です。
- 症状が安定しているときに、信頼できる上司や同僚に状況を説明しておく
- 具体的な症状と対応方法を伝える
- 自己管理の努力も伝え、一方的な依存に見えないようにする
産業医や産業保健スタッフがいる職場では、まずそうした専門家に相談し、職場との橋渡し役になってもらうことも効果的です。
うつ状態における就労対策と職場での対処法
双極性障害のうつ状態は、気力の低下や集中力の減退などにより、仕事の生産性や意欲に大きく影響します。ここでは、うつ状態でも仕事を続けるための具体的な対策や、無理をせず休職するタイミングについて解説します。
うつ状態時のエネルギー管理と業務調整の方法
うつ状態では限られたエネルギーを効果的に使うことが重要です。
- 朝の時点で体調を5段階で評価し、その日の業務量を調整する
- 業務を「絶対にやるべきこと」「できればやること」「延期可能なこと」に分類する
- 通常の3分の1程度の小さな目標を設定し、達成感を得る
- 業務の合間に短い休憩を入れ、エネルギー回復の時間を確保する
就労支援カウンセラー
集中力・判断力低下時の仕事の進め方
うつ状態では集中力や判断力が低下するため、以下のような工夫を取り入れましょう。
- 大きな業務を15〜30分で完了できる小さなステップに分ける
- 業務手順を詳細にリスト化し、完了したものをチェックしていく
- 集中できる時間(例:15分)だけ集中し、その後短い休憩を取る
- 付箋やホワイトボードを使って、業務の進行状況を視覚化する
うつ状態でも続けられる働き方の工夫
うつ状態でも仕事を継続するための働き方の工夫
- 可能であれば短時間勤務や時差出勤を活用し、体調の良い時間帯に働く
- 在宅勤務を活用し、通勤の負担を減らす
- 対面よりもメールやチャットを活用し、心理的負担を軽減する
無理をせず休職するタイミングの見極め方
以下のような状況が見られたら、休職を検討するタイミングかもしれません。
- 基本的な生活機能の低下(食事や睡眠、身だしなみを整えるのも困難)
- 出社自体が大きな負担になっている
- 重大なミスが続き、周囲に迷惑をかける可能性がある
- 自殺念慮の出現
- 主治医から休職を勧められている
まとめ:双極性障害があっても自分らしく働き続けるために
双極性障害があっても、適切な治療と環境調整、自己管理によって安定した就労生活を送ることは可能です。本記事では、躁状態とうつ状態それぞれに対する具体的な対策や、再発予防のための環境調整術について解説してきました。
- 適切な治療の継続(服薬と定期的な通院)
- 自己管理能力の向上(症状の変化に敏感になる)
- 環境調整(職場環境や働き方を特性に合わせる)
精神科医

