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てんかんでも働ける?仕事選び・発作対応・支援制度を徹底解説

てんかんでも働ける?仕事選び・発作対応・支援制度を徹底解説

著者: フラカラ編集部

このコラムのまとめ

てんかんと診断されても、治療で発作をコントロールしながら働いている方は大勢います。本記事では仕事選びの考え方、職場での発作対応、同僚への伝え方、障害者雇用や自立支援医療などの支援制度まで、てんかんと仕事の両立に必要な情報を2026年3月時点の最新データとともにお届けします。

てんかんと仕事を両立するために本人ができること

てんかんの発作は脳の一時的な電気的異常によって起こるもので、知的能力や仕事のスキルとは関係ありません。とはいえ、職場で安心して力を発揮するには「自分の発作パターンを正しく把握し、それを周囲に伝える準備をしておくこと」が出発点になります。

まず知っておきたい「自分の発作の特徴」

同じ「てんかん」でも、全身けいれんを伴う強直間代発作から、数秒間ぼんやりする欠神発作まで症状の幅は広く、誘因も人それぞれです。主治医と一緒に、発作の種類、平均的な持続時間、起こりやすい時間帯やシチュエーション、服薬中の副作用の有無を整理しておくと、就職活動や職場での説明がスムーズになります。

発作の特徴を把握するうえで有効なのが「発作日誌」です。日時・状況・前兆の有無・持続時間を記録し続けると、本人も気づかなかったパターンが見えてきます。スマートフォンのメモアプリで十分ですので、まずは1か月続けてみてください。

神経内科医

就職・転職活動で「てんかん」をどう伝えるか

てんかんを開示するかどうかに、法的な義務はありません。開示(オープン就労)と非開示(クローズ就労)のどちらを選ぶかは、発作の頻度や職種、自分の価値観によって変わります。

開示を選ぶ場合は、「病名を伝えて終わり」ではなく、「薬で発作はほぼコントロールできていること」「万が一発作が起きたときの対処法」「これまでの就労実績」をセットで伝えるのがポイントです。面接官の不安を先回りして解消することで、合理的配慮の話し合いがぐっとスムーズになります。

「発作が起きたらどうする?」職場対応プランのつくり方

発作対応プランとは、発作時に周囲がとるべき行動をA4一枚にまとめたものです。信頼できる上司や同僚と共有しておくと、いざというとき双方の安心材料になります。

項目 記載内容の例
発作のタイプ 全身けいれん(強直間代発作)/数秒間の意識消失(欠神発作)など
発作時にしてほしいこと
  • 周囲の危険物を取り除く
  • 無理に押さえつけず見守る
  • 発作の開始時刻を記録する
発作後の対応
  • 横向きにして気道を確保
  • 静かな場所で30分程度休ませる
救急車を呼ぶ基準 5分以上けいれんが続く/意識が戻らないまま再発作/外傷がある
緊急連絡先 主治医○○クリニック(03-xxxx-xxxx)/家族(090-xxxx-xxxx)

発作の引き金を遠ざける日常習慣

てんかん発作の誘因として特に多いのが、睡眠不足・過度なストレス・疲労の蓄積です。「生活リズムを整えることが、もうひとつの治療」という意識で日常を組み立てると、発作頻度の安定につながります。

生活リズムの安定化

  • 休日も含めて起床・就寝時間を一定にする——週末の「寝だめ」は発作リスクを上げる要因になる
  • 成人は6〜8時間の睡眠を確保し、寝る前1時間はスマホの画面を避ける
  • カフェインとアルコールは「少量をたまに」が目安。深酒の翌朝は発作が起きやすい

服薬管理のコツ

  • 毎朝の歯磨きなど、すでに習慣化している行動とセットにして飲み忘れを防ぐ
  • スマホのリマインダーやピルケースを活用する
  • 出張・旅行時に備えて、職場のデスクにも予備の薬を置いておく

「発作がないから薬を減らしたい」と自己判断する方がいますが、発作が起きていないのは薬が効いている証拠です。減薬や変更は必ず主治医と相談してください。自己管理を続けられること自体が、社会人としての大きな強みです。

産業医

てんかんのある人に向いている仕事・避けたい仕事

「てんかんだから○○の仕事はできない」と最初から門を閉ざす必要はありません。約80%の患者は薬物治療で発作をコントロールできるとされており、発作が安定していれば職種の選択肢は幅広いものです。ただし、安全面から慎重な判断が必要な領域もあります。

相性の良い職種と業務内容

万が一発作が起きたとき、身体的リスクが低い環境で、かつ自分のスキルを発揮できる仕事が第一候補になります。具体的には以下のような職種で多くの方が活躍しています。

  • 事務・経理・総務など座って行うデスクワーク全般
  • プログラミング・Webデザイン・データ入力などPC中心の業務
  • 検品・組立・包装など安全な環境での軽作業

「デスクワークしかできない」という印象を持つ方もいますが、それは発作時の安全性を重視した結果であって、能力の問題ではありません。実際には、営業事務や広報、マーケティングなど、コミュニケーション力を活かして働いている方もたくさんいます。

就労支援コンサルタント

安全面から慎重な判断が必要な職種

以下の職種は、法律上の制限がある場合や、発作時に本人や他者の生命に関わるリスクが高い場合があるため、主治医と相談したうえで検討しましょう。

  • 航空機パイロット・船員——法律上の制限あり
  • タクシー・バス・トラックなど運転を主業務とする職種
  • 高所での建設作業や電気工事
  • 大型プレス機・切断機など危険な機械を直接操作する業務

在宅ワーク・フレックスタイムという選択肢

通勤ラッシュの疲労を避けられる在宅勤務や、体調に合わせて出勤時間を調整できるフレックスタイム制は、てんかんのある方にとって大きなアドバンテージです。

在宅勤務と相性の良い仕事

  • ITエンジニア・プログラマー
  • Webライター・編集者
  • データ入力・オンライン事務

フレックスタイム・時短勤務の活かし方

朝方に発作が起きやすいタイプの方は、遅めの出社が可能なフレックスタイム制を活用することで、発作リスクの高い時間帯に無理をしなくて済みます。通院日に半休を取りやすい制度があるかどうかも、職場選びのチェックポイントです。

診断直後は「もう以前のようには働けないのか」と落ち込みました。でも上司に状況を伝えたところ、フレックスタイムの利用を提案してもらえて。朝の発作リスクが高い時間帯を避けて出社するようになってから、体調も仕事のパフォーマンスも安定しました。

ITエンジニア(30代・男性)

発作が安定している方であれば、職種の制限は想像より少ないケースがほとんどです。自分の強みやスキルを軸に仕事を選び、「安全面の工夫」は後から環境調整で対応する——この順番で考えると、選択肢が広がります。

迷ったときは、就労支援機関やハローワークの専門窓口に相談してみましょう。客観的な視点が、思わぬ適職の発見につながることもあります。

職場の理解を得るためにできること

てんかんは「目に見えない病気」の代表格です。発作がなければ周囲はまったく気づかないことも多く、だからこそ「伝え方」と「仕組みづくり」がものを言います。

企業が提供できる合理的配慮の具体例

2024年4月から、民間企業にも障害者への合理的配慮の提供が法的義務となりました。てんかんのある方が受けられる配慮は「特別扱い」ではなく、能力を正当に発揮するための環境整備です。

配慮の領域 具体的な内容
勤務時間・休憩
  • 通院のための定期的な半休・時間休の取得
  • こまめな休憩の確保(発作の前兆があれば離席可能にする)
  • フレックスタイムや時差出勤の導入
業務内容
  • 高所作業や危険な機械操作を伴う業務の免除
  • 夜勤・交代制シフトの調整
作業環境
  • 点滅する照明やストロボ光の回避(光過敏性がある場合)
  • 発作後に横になれる休憩スペースの確保

同僚への説明——「病名」より「対処法」を伝える

てんかんについてチーム内で共有する場合、説明会のような形を取るケースもあります。ただし、どこまで伝えるかは本人の意思が最優先。同意なく病名が広まることのないよう、人事や上司との間で情報の範囲をあらかじめ決めておきましょう。

  • 本人が「ここまで伝えてOK」と納得した範囲だけを共有する
  • 病名よりも「発作が起きたときにどう対応すればいいか」に焦点を当てる
  • プライバシーへの配慮と、噂話の禁止を参加者に明確に伝える
  • 可能であれば産業医や保健師など専門職に同席を依頼する

説明の場では「てんかんのある人」というラベルではなく、「○○さんに万が一体調変化があった場合の対応手順」という切り口で話すと、聞く側もフラットに受け止めやすくなります。病名よりも具体的な行動を共有するほうが、実際に役立つ情報になります。

産業カウンセラー

オフィスの安全対策チェックリスト

発作時の転倒や衝突のリスクを減らすために、以下のような環境整備が効果的です。多くは大きなコストをかけずに実施できるものばかりです。

  • デスクや棚の角にクッション材を貼り付ける
  • 通路に私物やダンボールなど障害物を置かない
  • 滑りやすい箇所には滑り止めマットを敷く
  • 休憩スペースに横になれるスペースを確保する

実際の企業事例——「配慮」が全員の働きやすさにつながった話

あるIT企業では、てんかんのある社員を受け入れるにあたり、完全フレックスタイム制の導入、在宅勤務オプションの拡大、発作対応マニュアルのデジタル化と全社共有を行いました。導入後、当事者だけでなく他の社員からも「柔軟な働き方ができるようになった」と好評で、結果的に離職率の低下にもつながったそうです。

正直に言うと、最初は「特別扱いにならないか」と心配していました。ところが、発作対応マニュアルをきっかけに社内の緊急時対応全般が見直され、AED講習まで実施することに。てんかんへの配慮が、職場全体の安全意識を底上げする結果になりました。

人事部長(製造業)

てんかんのある方が使える支援制度とサービス

「制度を知っているかどうか」で、経済的な負担も就職活動の進め方も大きく変わります。ここでは、てんかんのある方が2026年3月時点で利用できる主な公的支援を整理しました。

障害者雇用制度——手帳の取得から応募まで

精神障害者保健福祉手帳を取得すると、企業の障害者雇用枠で応募できるようになります。手帳の申請は、主治医の診断書をもとに居住地の市区町村窓口で行います。

「手帳を取る=障害者と認めること」に抵抗がある方は少なくありません。でも手帳は"支援を受けるための道具"です。合理的配慮の交渉がしやすくなり、税控除や公共料金の減免といった経済的メリットもあります。取得したからといって、使わない場面では提示する義務もありません。

障害者職業カウンセラー

障害者雇用枠で働くメリット

障害特性に合わせた業務内容や勤務条件の設定、通院への配慮、ジョブコーチなどの定着支援が受けやすくなります。法定雇用率(2026年3月時点で2.5%)の達成を目指す企業側にとっても、てんかんがコントロールされ安定して働ける人材は貴重な存在です。

就労支援サービスの使い分け

就職活動の段階や目的に応じて、複数の支援機関を組み合わせて利用できます。

  • ハローワーク(障害者専門窓口)——求人紹介、職業相談、面接対策などを無料で利用可能
  • 障害者就業・生活支援センター——就労面と生活面の両方から相談に乗ってくれる地域の拠点
  • 就労移行支援事業所——最長2年間、ビジネスマナーからPC訓練、実習、就活サポートまで一貫して受けられる
  • 障害者職業センター——職業評価やジョブコーチ派遣など、専門性の高い支援を提供

就労移行支援は、ブランクが長い方や「いきなり就職は不安」という方に特におすすめです。体力や集中力の回復、ビジネスマナーの再確認、模擬面接など、"働くための土台"をじっくり固められます。焦らず準備することが、結果的に長く働き続ける近道になります。

就労移行支援事業所スタッフ

医療費を軽くする「自立支援医療」と通院への配慮

自立支援医療(精神通院医療)を申請すると、てんかんの通院・処方にかかる自己負担が3割から原則1割に軽減されます。抗てんかん薬は長期にわたって飲み続けるものなので、この差は家計に直結します。申請先は市区町村の障害福祉課で、原則1年ごとの更新が必要です。

治療を継続するうえでは、通院日を固定できる勤務形態の選択や、厚生労働省が策定した「治療と仕事の両立支援ガイドライン」の活用も検討してみてください。

複数の制度を組み合わせることで、経済的にも精神的にも余裕が生まれます。「自分にはどれが使えるか分からない」という場合は、まず最寄りのハローワーク障害者窓口や障害者就業・生活支援センターに相談してみましょう。

てんかんと仕事のQ&A——よくある5つの不安に答える

当事者の方から寄せられることの多い疑問を、Q&A形式でまとめました。

面接で「てんかんがある」と伝えるべき?

Q: 就職面接でてんかんのことを正直に話すべきか迷っています。黙っていたほうが受かりやすいのでは……。

求職中のAさん

A: 法律上、てんかんの開示義務はありません。ただし、業務中に発作が起こる可能性があるなら、安全確保と合理的配慮の観点から伝えておくほうが双方にとって安心です。伝える際は「薬で発作はコントロールできている」「過去○年間、業務中の発作はゼロ」など、安定性を示す具体的な事実を添えましょう。

職場で発作が起きた後、どう復帰すればいい?

Q: 先日、職場で初めて発作を起こしてしまいました。同僚の目が気になって出社がつらいです。

会社員Cさん

A: まず主治医に状況を報告し、復帰のタイミングを相談してください。そのうえで、上司や人事と面談し、発作対応プランの共有と今後の配慮事項を確認します。「発作の様子を見て驚かせてしまったかもしれませんが、対応してくださりありがとうございました」と同僚にひと言伝えるだけで、空気はずいぶん和らぎます。

車の運転が必要な仕事はできる?

Q: 営業職なので社用車の運転が必須です。てんかんがあっても運転免許は持てるのでしょうか?

営業職Eさん

A: 道路交通法上、「発作が過去2年間なく、今後も発作が起こるおそれがないと医師が認めた場合」などの条件を満たせば運転免許の取得・更新は可能です。ただし、大型免許や第二種免許には追加の条件があります。主治医に「運転適性に関する診断書」を書いてもらい、会社と代替手段(公共交通機関・同行者運転など)について話し合うのが現実的です。

てんかんがあってもキャリアアップできる?

Q: 入社5年目ですが、てんかんがあると管理職にはなれないのでしょうか。

会社員Gさん

A: てんかんがあることは、昇進や管理職登用の法的な障壁にはなりません。発作がコントロールされている方で、マネジメントや専門職として活躍しているケースは数多くあります。自分の専門性やリーダーシップを磨きつつ、体調管理を継続していくことが両立の鍵です。

Q: 健康診断でてんかんのことを書くべきですか?

会社員Iさん

A: 健康診断の問診票への記載は、安全な職場環境をつくるうえで意味のある情報です。健診結果は原則として産業医・保健師が管理し、会社には「就業上の配慮が必要かどうか」のみが伝えられるのが一般的です。不安があれば、記載前に産業医に「情報の取り扱い範囲」を確認してみてください。

そもそも「てんかん」とは?——職場で共有したい基礎知識

日本におけるてんかんの有病率は人口の約1%、およそ100万人と推定されています。これは糖尿病や喘息と同程度のありふれた疾患ですが、「けいれん=怖い」というイメージが先行し、実態とのギャップが偏見につながっているのが現状です。

てんかん発作の種類——けいれんだけではない

てんかん発作は、脳のどの部分で異常な電気活動が起きるかによって多様な症状を示します。「てんかん=全身けいれん」というイメージは、実際の発作パターンのごく一部にすぎません。

発作の分類 代表的なタイプと特徴
全般発作
(脳全体が関与)
  • 強直間代発作:全身が硬直→けいれん。いわゆる「大発作」
  • 欠神発作:数秒〜30秒間ぼんやりして動作が止まる。主に小児に多い
  • ミオクロニー発作:体の一部がピクッと動く短い発作
  • 脱力発作:突然力が抜けて崩れるように倒れる
焦点発作
(脳の一部から始まる)
  • 焦点意識保持発作:意識はあるが、手足のけいれんや感覚異常が生じる
  • 焦点意識減損発作:意識がぼんやりし、口をもぐもぐさせるなどの自動症を伴う
  • 二次性全般化:焦点発作から脳全体に広がり、全身けいれんに移行する

欠神発作は「ぼーっとしている」「話を聞いていない」と誤解されやすい発作です。周囲が気づかないまま何年も見過ごされるケースもあります。数秒間フリーズしてすぐ元に戻る——そんな様子に心当たりがあれば、一度専門医を受診してみてください。

神経内科医

発作の頻度と仕事への実際の影響

約80%の方は適切な薬物治療で発作がコントロールできるとされています。つまり、てんかんのある方の大多数は、日常業務に支障が出るような発作を繰り返しているわけではありません。発作の頻度やタイプを正確に把握し、「この人にはどんな配慮が必要か」を個別に判断することが、職場での過剰な制限を防ぐカギになります。

いまだに根強い3つの誤解

  • 「てんかんは精神疾患」→ 誤り。てんかんは脳の神経系の疾患であり、精神疾患とは分類が異なる
  • 「発作中に口にタオルを噛ませるべき」→ 危険。窒息や歯の損傷の原因になる。横向きに寝かせて気道を確保するのが正しい対応
  • 「てんかん=知的障害」→ 誤り。てんかんと知的能力に直接の因果関係はなく、多くの方が一般的な知的水準で社会生活を送っている

治療の柱は薬物療法——約70%がコントロール可能

治療の基本は抗てんかん薬の内服です。通常はひとつの薬剤から始め、効果が不十分であれば種類の変更や追加を検討します。約60〜70%の患者は薬物療法で発作をコントロールでき、薬が合わないケースでも外科手術や迷走神経刺激療法、ケトン食療法などの選択肢があります。

発作の誘因として特に注意が必要なのは、睡眠不足、過度なストレス、疲労、アルコール、光刺激(光過敏性がある方のみ)です。これらを理解しておくと、職場環境の調整が具体的に進めやすくなります。

てんかんへの正しい理解が広まることは、当事者だけでなく職場全体のリスク管理能力を高めることにつながります。「知る」ことが、最初の合理的配慮です。

発作が起きたときの職場対応マニュアル

てんかん発作の多くは数分以内に自然に収まりますが、目の前で起きると誰でも動揺するものです。「慌てず・押さえつけず・見守る」が基本。あらかじめ手順を頭に入れておけば、冷静に対応できます。

けいれん発作が起きたら——3ステップで対応

ステップ やるべきこと
1. 安全確保
  • 机の角や落下物など、周囲の危険物を素早く取り除く
  • 頭の下に丸めた上着やクッションを敷く
  • 口に物を入れない(舌を噛むリスクより窒息リスクのほうが高い)
2. 体勢を整える
  • けいれんが治まりはじめたら、横向き(回復体位)に寝かせる
  • 衣服の首元をゆるめて気道を確保する
3. 時間を記録
  • 発作の開始時刻と持続時間をスマホなどで記録する
  • 5分以上続く場合は救急車を呼ぶ

初めてけいれん発作を目にすると、ものすごく長く感じるかもしれません。でも実際には2〜3分で治まることがほとんどです。大声で呼びかけたり、体を揺さぶったりせず、安全を確認して静かに見守ること。それが「何よりの対応」です。

救急救命士

意識がぼんやりする発作(欠神発作・焦点意識減損発作)の場合

けいれんを伴わないタイプの発作では、本人がふらふら歩き出したり、無意識に口を動かしたりすることがあります。無理に動きを止めず、危険な場所(階段、車道など)に近づかないようそっと誘導し、発作が終わるまで(通常1〜3分)そばで見守りましょう。

「救急車を呼ぶべきか」の判断基準

  • けいれんが5分以上続いている
  • 意識が戻らないまま、次の発作が始まった
  • 発作中の転倒などで明らかな外傷がある
  • 本人にとって初めての発作である(てんかんの診断がない場合)

緊急連絡カードの携帯を習慣に

財布やスマホケースに、氏名・てんかんの種類・服用薬・主治医の連絡先・発作時の対応メモを記載したカードを入れておくと、万が一の外出先での発作にも備えられます。スマートフォンの「メディカルID」機能を使えば、ロック画面からでも情報を表示できます。

発作記録シート——治療にも職場改善にもつながるデータ

発作が起きた場合は、日時、場所、直前の状況(睡眠不足、ストレス、服薬忘れなど)、発作の様子、持続時間、発作後の状態を記録しておきましょう。このデータは主治医の薬剤調整の材料になるだけでなく、職場で「どういう状況を避ければ発作リスクを下げられるか」を検討する根拠にもなります。

記録には本人の医療情報が含まれるため、職場で共有する場合は必ず本人の同意を得たうえで、閲覧範囲を限定してください。

てんかんと社会生活——運転免許・妊娠出産・学校生活

てんかんは仕事だけでなく、日常のさまざまな場面に関わってきます。ここでは特に質問の多い3つのテーマについて触れておきます。

運転免許と移動手段

道路交通法上、てんかんのある方の運転免許取得・更新には「発作が2年以上ないこと」「医師が運転に支障がないと判断していること」などの条件があります。発作の種類によっては条件付きで取得できるケースもあるため、主治医に確認しましょう。運転が難しい場合は、公共交通機関の活用や通勤手当の交渉、福祉タクシーの利用なども視野に入れてください。

運転免許に関する最新の基準は、各都道府県の運転免許センターまたは主治医に確認するのが確実です。

妊娠・出産・育児

てんかんのある女性の多くが安全に妊娠・出産を経験しています。妊娠を考え始めた段階で主治医と相談し、抗てんかん薬の種類やリスクを確認したうえで、葉酸の摂取開始など必要な準備を進めましょう。妊娠中はホルモンバランスの変化で発作頻度が変わることもあるため、定期的なフォローアップが欠かせません。

育児中は睡眠不足が発作の誘因になりやすいため、パートナーや家族との役割分担、必要に応じたファミリーサポート等の外部サービスの活用を早めに計画しておきましょう。

学校生活と将来の進路

てんかんのあるお子さん・学生にとって、学校側の理解と適切な対応は安心して学ぶための土台です。入学時や進級時に、発作の種類・頻度・対応方法を学校と共有し、必要に応じて個別の教育支援計画を依頼しましょう。年齢が上がるにつれ、本人が自分のてんかんについて周囲に説明できる力を少しずつ育てていくことも、将来の就労や社会生活に直結する大切な準備です。

まとめ:てんかんは「管理できる」疾患——自分らしいキャリアを築くために

ここまで、てんかんを抱えながら働くための考え方や、安心して過ごすための準備について解説してきました。
てんかんとともに長くキャリアを築くためには、発作のコントロールはもちろん、「いかに物理的なリスクを減らし、心身のエネルギーを守るか」という環境選びの視点が欠かせません。
最後に、仕事探しや復職の際に指針となる「安全に働くための3つの条件」を図にまとめました。これからのキャリアを考える際のチェックリストとして活用してください。

てんかん安全に長く働く3つの仕事選び

てんかんの治療は年々進歩しており、適切な薬物療法で約80%の方が発作をコントロールできる時代になっています。それでも職場で不安やためらいを感じる場面はあるかもしれません。そのときに頼りになるのが、自分の発作パターンの理解、発作対応プランの準備、そして支援制度の活用です。

「てんかんがあるから」ではなく「てんかんがあっても自分の強みを活かせる環境はどこか」——この問いを軸に置くと、仕事選びもキャリア形成も前向きに進められるはずです。

てんかんは私の一部であって、私のすべてではありません。診断されたときは「もう好きな仕事はできないかも」と思いました。でも治療を続けながら自分なりの工夫を重ねた結果、今はデザイナーとして10年以上キャリアを積んでいます。大切なのは、完璧を目指すことではなく、自分に合ったペースで歩き続けることだと思います。

グラフィックデザイナー(35歳・女性)

てんかんがあっても、一人ひとりの個性と能力を活かした働き方は実現できます。主治医、就労支援機関、職場の理解者——味方は必ずいます。まずは一歩、相談することから始めてみてください。