てんかんでも働ける仕事は?向いている職種10選・避けるべき仕事・就労支援制度まで完全ガイド
著者: フラカラ編集部
このコラムのまとめ
てんかんのある方が安全に長く働ける仕事の選び方を解説。事務職・IT系・在宅ワークなど向いている職種10選、法的に制限のある仕事、オープン就労とクローズ就労の比較、就労移行支援・障害年金・自立支援医療の活用法まで網羅しました。
てんかんとは?——仕事選びの前に知っておくべき基礎知識
「発作が起きたらどうしよう」「就職先で理解は得られるだろうか」。
てんかんを抱えながら働く上で、職場での安全や周囲への対応に不安を感じるのは当然のことです。しかし、リスクを恐れて働くことを諦める必要はありません。
大切なのは、自分が働く環境を「安全なゾーン」に絞り込み、もしもの時の「備え」を万全にしておくことです。自分の体と心を守るための戦略さえあれば、社会の中で自分らしく、安定して働き続けることは可能です。
まずは、てんかん就労を成功させるための「生存戦略マップ」を整理しました。
図でお伝えした通り、無理をして危険な環境で働くのではなく、自分を守るための「安全な場所」を自ら選ぶことが、長く続けるための第一歩です。
「発作が起きたら終わり」ではありません。あらかじめ備えを固め、周囲の理解を得ておくことで、職場はあなたにとっての「安心して力を発揮できる場所」に変わります。焦らず、一歩ずつ安全な環境を整えていきましょう。
てんかんは特別な病気ではありません。厚生労働省の情報によると、日本国内の患者数は約100万人、有病率は人口の約0.5〜1%——つまり100〜200人に1人が持っている、非常に身近な脳の疾患です。
出典:
脳の神経細胞が一時的に過剰な電気信号を発することで起きる「てんかん発作」が特徴ですが、「白目をむいて倒れる」というイメージは症状のごく一部にすぎません。電気の異常放電が「脳のどこで起きるか」によって症状は千差万別です。
てんかん発作の種類——「焦点発作」と「全般発作」
| 発作のタイプ | 周囲から見た様子 | 仕事への影響 |
|---|---|---|
| 焦点発作(脳の一部で異常放電) | 手足が勝手にピクつく、意識がぼんやりして口をモグモグさせる(自動症)、デジャヴを感じる | 意識が保たれる場合もあり、デスクワーク中は周囲に気づかれないことも |
| 全般発作(脳全体で異常放電) | 突然意識を失い全身が硬直→けいれん(強直間代発作)、数秒間フリーズする(欠神発作)、一瞬筋肉がビクッとする(ミオクロニー発作) | 意識消失を伴う場合は転倒リスクがあり、安全な環境確保が必須 |
てんかん専門医
治療の基本——約7割は薬でコントロール可能
てんかんの治療は抗てんかん薬の服用が基本です。適切な薬を見つけることで、約7割の患者が発作のない生活(寛解状態)を維持できると報告されています。「薬を飲んでいれば大丈夫」という安心感は、仕事をする上での大きな土台になります。
薬だけではコントロールが難しい場合でも、外科手術や迷走神経刺激療法(VNS)といった次の選択肢があります。主治医と相談しながら、あなたの生活スタイルに合った治療法を見つけていきましょう。
てんかんの方に向いている仕事の3条件——「安全」「安定」「柔軟性」
てんかんがあると「仕事ができない」と思い込む方がいますが、それは大きな誤解です。適切な環境を選べば、多くの職種で活躍できます。仕事選びの判断軸になるのは「安全性」「生活リズムの安定」「柔軟な勤務体制」の3条件です。
条件①:万が一の発作でも安全な環境
発作が起きたときに自分や周囲に危険が及びにくい環境が大前提です。デスクワーク中心の室内作業、周囲に同僚がいてサポートが得られる環境、高所作業や危険な機械操作がない職場——こうした「もし倒れても大怪我しない」条件を最優先にしてください。
- オフィス内(カーペット敷き、机の角にガードあり)での座り仕事
- 同僚がいて、発作時に声をかけてもらえる環境
- 階段を使わずに済むバリアフリーなオフィス
条件②:規則正しい生活リズムを守れる勤務形態
睡眠不足や不規則な生活はてんかん発作のトリガーになりやすいことが知られています。夜勤・シフト制・長時間残業がなく、毎日決まった時間に帰宅して十分な睡眠を確保できる勤務形態が理想です。
- 勤務時間が固定されている(9時〜18時など)
- 夜勤・交代制シフトがない
- 残業が少なく、睡眠リズムを死守できる
- 定期的な通院のための半休・時間休が取りやすい
条件③:心身への過剰な負荷がかからない仕事
過度な疲労やストレスも発作の誘因になり得ます。身体的負荷が低いデスクワーク、精神的プレッシャーが穏やかな環境、適度に休憩が取れる職場——こうした条件が揃う仕事を選ぶことで、発作リスクを下げながら安定して働き続けることができます。
就労支援専門家
「てんかんだから○○しかできない」と最初から選択肢を狭める必要はありません。「発作への備え」さえできていれば、あなたの可能性は想像以上に広がります。
てんかんの方におすすめの職種10選——安全に能力を発揮できる仕事
前章の3条件を満たしやすい具体的な職種を10個紹介します。いずれも「座り仕事」「室内」「規則的な勤務」という共通点があり、発作リスクを最小化しながら働ける環境です。
①一般事務・データ入力
書類作成、ファイリング、データ入力——デスクワーク中心で身体的負担が少なく、勤務時間が規則的。障害者雇用枠でも求人数が多い職種です。万が一発作が起きても、椅子に座った状態であれば転倒リスクを大幅に抑えられます。
②プログラマー・システムエンジニア
IT系職種はリモートワーク率が高く、フレックス制を導入している企業も多いため、通勤負荷の軽減と生活リズムの維持がしやすい環境です。一人で集中する時間が長く、成果物で評価される点もてんかんの方に合っています。
③Webデザイナー
デスクワーク中心で自分のペースで業務を進めやすく、フリーランスとしての独立も選択肢に入るクリエイティブ職です。在宅勤務との相性も良好です。
④Webライター・編集者
在宅で完結できる案件が多く、締切さえ守れば作業時間は自分で決められます。体調の波に合わせたペース配分がしやすい職種です。
⑤動画編集・映像制作
座り仕事で身体的負担が少なく、在宅案件も豊富。需要が拡大中の分野で、スキルを積めば安定した収入を得やすい職種です。
⑥経理・会計事務
月次のルーティンが決まっており予測可能性が高い仕事。勤務時間も規則的で、簿記資格があれば障害者雇用枠でも求人の幅が広がります。
⑦インサイドセールス(内勤営業)
電話やメール、オンライン会議での営業活動が中心で、外回りの必要がない営業職です。「営業はできない」と諦める必要はなく、コミュニケーション力を活かしたい方にとって有力な選択肢です。
就労支援カウンセラー
⑧軽作業・倉庫内作業(危険な機械操作を除く)
検品、ピッキング、シール貼りなど、危険な機械操作を伴わない軽作業は、手順が明確で規則的に進められる仕事です。立ち仕事が含まれる場合は、発作時の転倒対策(作業エリアの安全確認)を事前に職場と共有しておきましょう。
⑨コールセンター・カスタマーサポート(在宅)
在宅型のコールセンターやチャットサポートは、通勤ゼロ・室内作業・マニュアル化された対応という三拍子が揃っています。シフト制の場合は夜勤を避けて日勤のみに絞ることが重要です。
⑩在宅ワーク全般
上記の職種の多くは在宅で遂行可能です。自宅という安全な環境で、体調に合わせた休憩を取りながら働ける在宅ワークは、てんかんの方にとって「通勤リスクゼロ」「発作時の安全性確保」という二重のメリットがあります。
| 職種 | てんかんの方に合う理由 |
|---|---|
| 一般事務 | 座り仕事中心、規則的な勤務、障害者雇用枠の求人が豊富 |
| プログラマー | リモート率が高い、フレックス制が浸透、成果物評価 |
| 経理・会計 | ルーティン業務中心、予測可能性が高い |
| インサイドセールス | 外回り不要、コミュニケーション力を活用可能 |
| 在宅ワーク全般 | 通勤リスクゼロ、発作時の安全性確保 |
条件面だけでなく、「やってみたい」「これなら楽しめそう」という直感も大切にしてください。てんかんがあっても、あなたらしいキャリアは築けます。
てんかんの方が避けるべき仕事と法的に制限のある職業
向いている仕事を知ることと同じくらい重要なのが、「安全上避けるべき仕事」と「法律で制限されている職業」を把握することです。
自動車運転が主な業務の仕事
道路交通法上、てんかんの方は「2年以上発作がなく、医師が運転に支障がないと判断した場合」に普通自動車免許の取得が認められます。しかし、職業としての運転——タクシー・バス・トラックドライバー、配送業務、営業車での外回り——は、運転中の発作が本人だけでなく他者の生命に関わるため、避けるのが賢明です。
- タクシー・バス・トラックドライバー
- 宅配・配送業務
- 営業車を使用する外回り営業
産業医
高所作業・危険な機械操作を伴う仕事
発作による意識消失時に転落や巻き込みの危険がある仕事は、発作の頻度にかかわらずリスクが高すぎます。
- 建設現場の足場作業
- 電柱での電気工事
- 工場でのプレス機・裁断機・旋盤の操作
不規則な勤務形態・夜勤のある仕事
睡眠不足と生活リズムの乱れはてんかん発作の代表的なトリガーです。夜勤・交代制シフト・不規則な長時間労働が常態化している仕事は、発作頻度を高めるリスクがあります。
法律上の制限がある職業
以下の職業は法律上、てんかんの症状がある場合に就くことが制限されています。
- 航空機操縦士・航空機乗務員(航空法)
- 船員(一部例外あり、船員法・船舶職員及び小型船舶操縦者法)
- 大型・中型自動車免許、第二種免許が必要な職種(道路交通法施行令)
ただし、これらは「てんかん=すべてダメ」ではなく、発作の状況によって個別に判断される部分もあります。詳細は主治医や就労支援機関に相談してください。
てんかんの方の就職活動——オープン就労 vs クローズ就労
てんかんのある方が就職する際、最初に判断を迫られるのが「病気を開示するか(オープン)、しないか(クローズ)」という選択です。
オープン就労とクローズ就労の比較
| オープン就労(障害者雇用枠等) | クローズ就労(一般枠) | |
|---|---|---|
| メリット | 発作時の対応や通院への配慮が得やすい、安全な業務に限定してもらえる | 求人の選択肢が広い、給与水準が比較的高い |
| デメリット | 選べる求人が限られる、給与が一般枠より低い傾向 | 配慮を受けにくい、症状を隠すストレスがかかる |
| 向いている人 | 発作が月1回以上ある、意識消失を伴う発作がある | 薬で長期間(2年以上)発作がコントロールされている |
就労支援コンサルタント
職場選びは「生存戦略」——給与よりも安全性を優先する
てんかんのある方の職場選びは、単なる仕事探しではなく「安全に働き続けるための環境設計」です。求人票の数字よりも、以下のポイントをシビアにチェックしてください。
- 通勤の負荷:乗り換えは複雑ではないか、ラッシュを避けて通えるか(移動の疲れは発作の引き金になりやすい)
- オフィスの物理的安全性:床がカーペット敷きか、机の角にガードがあるか、階段を使わずに済むか
- 睡眠リズムを守れるか:残業やシフト変動がなく、毎日決まった時間に帰宅できるか
- 通院への理解度:定期通院のための半休を嫌な顔をされずに取れる雰囲気か
てんかんと仕事を両立するための職場での管理と工夫
就職できたらそこで終わりではありません。てんかんと仕事を長期的に両立させるには、日々の自己管理と職場との情報共有が欠かせません。
自己管理——発作リスクを最小化する日常習慣
- 睡眠リズムの死守:毎日同じ時間に起床・就寝し、最低6〜8時間の睡眠を確保する。睡眠不足は最大の発作トリガー。
- 服薬管理の徹底:スマホのアラーム、ピルケース、職場に予備の薬を保管——「飲み忘れゼロ」を仕組みで実現する。
- 発作パターンの記録:発作が起きた日時・状況・前兆の有無を記録し、主治医と共有することで薬の調整精度が上がる。
- ストレス管理:ストレスが発作のトリガーになる場合は、1:2呼吸法や短時間の休憩をルーティンに組み込む。
発作時の対応を職場と共有する——「対応カード」のすすめ
万が一職場で発作が起きた場合に備え、対応方法を事前に共有しておくことが極めて重要です。A4サイズの「発作時対応カード」を作成し、デスクの引き出しや自分のロッカーに入れておく方法が効果的です。
| 発作時にやるべきこと | 絶対にやってはいけないこと |
|---|---|
| ・慌てず冷静に対応する ・周囲の危険物を遠ざける ・横向きに寝かせ、呼吸を確保する ・発作の時間を計測する ・5分以上続く場合は救急車を呼ぶ |
・口に物を入れない(舌を噛む心配は不要) ・無理に体を押さえつけない ・発作中に水分を与えない ・大勢で取り囲んで騒がない |
会社員・てんかん歴15年
周囲にサポートを求めるのは「弱さ」ではなく、安全に働くための「必須スキル」です。一人で抱え込まず、職場や支援機関を巻き込んで、あなたを守るチームを作りましょう。
てんかんと働き続ける人のリアルな体験談
てんかんがあっても、適切な環境と周囲の理解があれば長く活躍できる——それを実証している当事者の声を紹介します。
IT企業で10年以上勤務するプログラマー
Aさん(30代・プログラマー)
障害者雇用枠で安心して働く事務職
Bさん(40代・一般事務)
てんかんの方が使える就労支援・経済的支援制度——制度は「味方」、使い倒す
てんかんの方の就労と生活を支える公的制度をまとめます。一人で全部調べる必要はありません。まずは相談窓口に行き、「自分に使える制度を教えてください」と聞くところから始めましょう。
就労移行支援事業所——就職まで最長2年の伴走
障害者総合支援法に基づく福祉サービスで、パソコンスキル・ビジネスマナー・模擬面接などの訓練と就職活動の伴走支援を最長2年間受けられます。就職後も最長3年6ヶ月の定着支援があり、入社後の悩みもスタッフに相談できます。利用料は所得に応じて無料〜月額上限37,200円(大半の方が無料で利用)。
出典:
ハローワーク(障害者専門窓口)
全国のハローワークに設置された「専門援助部門」で、てんかんの特性を踏まえた求人紹介・面接対策を受けられます。精神障害者保健福祉手帳がなくても、医師の意見書があれば相談可能です。
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
就労面と生活面を一体的に支援する拠点で、全国に約340ヶ所設置。就職活動のサポートだけでなく、生活リズムの安定・服薬管理・通院の継続など「働くための土台」を包括的に支えてくれます。
出典:
地域障害者職業センター
全国47都道府県に設置された、職業リハビリテーションの専門機関です。職業評価(適性検査)、職業準備支援、ジョブコーチ支援(専門家が職場を訪問して本人と企業双方をサポート)など、より専門的な支援を受けられます。
てんかん支援拠点病院・相談窓口
各都道府県に指定された「てんかん診療拠点機関」では、医療面の相談に加えて就労に関する情報提供も行っています。また、日本てんかん協会(波の会)の相談ホットラインも活用できます。
出典:
自立支援医療制度——通院費の自己負担が1割に
てんかんは「精神通院医療」の対象です。通常3割の医療費自己負担が原則1割に軽減され、所得に応じた月額上限も設定されます。抗てんかん薬の長期服用による医療費負担を大幅に抑えられる重要な制度です。
出典:
障害年金
てんかんの発作の種類・頻度・日常生活への影響を総合的に判断して等級が決定されます。2026年3月時点の障害基礎年金2級の年額は約81万6,000円(月額約6万8,000円)、1級は約102万円です。申請手続きが複雑なため、社会保険労務士への相談をお勧めします。
出典:
傷病手当金
てんかんの症状悪化で休職する場合、健康保険の傷病手当金を利用できます。連続3日間の待期期間を経た4日目から、直近12ヶ月の標準報酬月額の平均を基に算出した日額の3分の2が支給。支給期間は通算で最長1年6ヶ月(2022年1月の法改正で通算制に変更)。
出典:
精神障害者保健福祉手帳
てんかんの症状が日常生活に一定以上の影響を与えている場合、取得が可能です。発作の頻度・種類・薬の副作用の影響などが判断基準になります。取得により障害者雇用枠への応募、税制優遇、公共料金の割引などが受けられます。
社会保険労務士
まとめ——てんかんは「人生の障害物」ではなく「環境選びの基準」
「てんかんがあるから働けない」——その思い込みは、今日ここで捨ててください。適切な治療で発作をコントロールし、安全な環境を選び、支援制度をフル活用すれば、あなたは十分に働ける。そして活躍できます。
この記事で繰り返しお伝えしてきたのは、次の3つです。
- 「安全」を最優先に。万が一発作が起きても大怪我しない環境、規則正しい勤務、睡眠リズムを守れる職場——この3条件がすべての出発点。
- 「備え」があれば可能性は広がる。発作パターンの把握、対応カードの共有、前兆のキャッチ——備えがあるだけで、選べる仕事の幅は格段に広がる。
- 一人で戦わない。就労移行支援、ハローワーク、なかぽつ、てんかん支援拠点病院——プロの力を借りることは「弱さ」ではなく「戦略」。
障害者就労支援専門家




