【体験談あり】ASDで「仕事が続かない・辞めがち」な原因とは?定着率を高める職場選びと配慮の求め方
著者: フラカラ編集部
このコラムのまとめ
ASDで仕事が続かない・辞めがちになる7つの原因を体験談とともに解説。職場定着率を高める職場選びの5つのポイント、合理的配慮の具体的な求め方、日常のセルフケア、就労移行支援など頼れる支援機関まで網羅。特性に合った環境と配慮で安定して働き続けるためのヒントをお届けします。
職場定着率を高める「合理的配慮」の求め方と具体例
ASDのある方が仕事を長く続けるためには、自分の特性に合った「合理的配慮」を職場から受けることが重要です。しかし、「どう伝えればいいか分からない」「わがままだと思われそう」と感じている方も多いでしょう。ここでは、合理的配慮の基本から伝え方、具体例まで解説します。
合理的配慮とは?ASD当事者が知っておくべき基本知識
障害者雇用での就労では、企業側から合理的配慮を受けながら働くことができるため、仕事による心身への負担を軽減することができます。合理的配慮とは、障害のある方が他の社員と同じように働けるよう、企業側が状況に応じて行う調整のことです。2024年4月からは民間企業にも提供が義務化されています。具体的には以下が含まれます。
- 業務内容や勤務時間の調整
- 物理的環境の整備(静かな座席・照明の調整など)
- コミュニケーション方法の工夫(指示の出し方の変更など)
- 定期面談の実施による困りごとの早期対応
合理的配慮は「特別扱い」ではなく、障害による不利を補い対等に働くための正当な権利です。遠慮せず必要な配慮を整理していきましょう。
配慮を伝えるタイミングと適切な伝え方
障害者雇用で就職する場合は、面接の段階で特性と必要な配慮を伝えることができます。「できないこと」だけでなく「できること」もセットで伝えること、具体的なエピソードを添えること、配慮内容を書面にまとめて渡すことがポイントです。入社後に新たな配慮が必要になった場合は、定期面談を活用しましょう。困りごとの「事実」と「影響」、そして「こうしてもらえると助かる」という対策をセットで伝えると理解されやすくなります。自分一人で伝えにくい場合は、支援機関のスタッフに同席してもらう方法も有効です。
就労支援スタッフ
ASDの人が職場に依頼しやすい配慮の具体例8選
ASDの特性に基づく代表的な配慮事項を8つ紹介します。自分に当てはまるものがあれば、職場への相談の参考にしてください。
- 指示は口頭ではなくテキスト・チャットでもらう
- 業務の優先順位を明確に示してもらう
- スケジュール変更は事前に共有してもらう
- 静かな作業スペースやノイズキャンセリングイヤホンの使用を認めてもらう
- 定期的な面談の場を設けてもらう
- 休憩のタイミングを自分で調整できるようにする
- 報連相のルール・タイミングを具体的に決めてもらう
- 評価基準を具体的な行動レベルで明文化してもらう
いずれも「曖昧さを減らし、具体的なルールに置き換える」という共通点があります。すべてを一度に求める必要はないので、特に必要度の高いものから優先的に相談していきましょう。
「ナビゲーションブック」を活用して自分の取扱説明書を作る方法
配慮を伝えるうえで非常に役立つのが「ナビゲーションブック」です。これは自分の障害特性・得意なこと・苦手なこと・希望する配慮事項を書面にまとめた、いわば「自分の取扱説明書」です。障害名と特性の概要、強みと苦手な場面、具体的な配慮のお願い、ストレスサインと体調悪化時に望む対応などを記載し、上司や人事担当者と共有します。口頭では伝えにくい内容も正確に伝わるうえ、上司が異動で変わった際の引き継ぎにも活用できます。作成に不安がある場合は、就労移行支援事業所や発達障害者支援センターのスタッフと一緒に取り組むのがおすすめです。
ASDの人が「仕事が続かない」を抜け出すための職場選び5つのポイント
ASDのある方が離職を繰り返す背景には、特性と職場環境のミスマッチが大きく関わっています。自分の特性に合った職場を選ぶことで、定着率は大きく向上します。ここでは押さえておきたい5つのポイントを解説します。
ポイント①:業務内容が明確でルーティン化されている職場を選ぶ
ASDのある人は臨機応変な対応が苦手で、イレギュラーな事態が起こると混乱しやすい傾向があります。一方で、決められたルールやマニュアル通りに行動することは得意です。業務マニュアルが整備されているか、突発業務の頻度はどの程度かを事前に確認しておきましょう。可能であれば企業インターンや職場見学で実際の働き方を体感しておくのがおすすめです。
ポイント②:指示系統がシンプルで直属の上司が明確な環境を重視する
複数の上司から異なる指示が飛んでくる環境では混乱やストレスが蓄積します。「誰に報告・相談すればよいか」が明確な職場を選びましょう。面接時に「困ったときの相談先はどなたですか?」と確認しておくだけでも、入社後のギャップを減らせます。
ポイント③:感覚過敏に配慮できる物理的環境があるか確認する
ASDのある人は感覚過敏なことが多く、オフィスの話し声や蛍光灯の光が集中力を大きく妨げることがあります。在宅勤務やリモートワークを導入している職場であれば、自分が居心地の良い空間で働けるためおすすめです。職場見学時に音量・照明・匂いなどを自分の感覚で確認しておきましょう。
ポイント④:障害者雇用枠・特例子会社という選択肢を検討する
障害への理解がない職場では、ASDの症状が「わがまま」と捉えられてしまう懸念があります。障害者雇用枠であれば合理的配慮を受けやすく、困りごとを率直に相談できる環境が整っています。障害者雇用には障害者手帳が必要なため、取得を検討する場合はまず主治医に相談してみましょう。
ポイント⑤:ASDの特性が強みになる職種を知っておく
「苦手を避ける」だけでなく、特性が強みとして活きる職種を積極的に選ぶ視点も大切です。正確さ・集中力が活きる経理事務やデータ入力、専門性を深められるプログラマーや研究職、対人負荷が少ない軽作業やテクニカルライターなどが代表例です。自分の得意・不得意を明確にし、強みを活かせる仕事を選びましょう。迷った場合は就労移行支援事業所や転職エージェントに相談するのが効果的です。
仕事を長く続けるために日常でできるセルフケアと工夫
職場選びや合理的配慮と同じくらい大切なのが、日常生活でコンディションを整える「セルフケア」の習慣です。ASDのある方は特性ゆえに疲労を自覚しにくく、限界を超えるまで頑張り続けてしまう傾向があります。ここでは日々実践できる4つの工夫を紹介します。
自分の特性と疲労サインを把握する
ASDのある方は過集中の状態が続き、気づかないうちに心身が消耗してしまうことがあります。「普段より音や光が気になる」「ミスや忘れ物が増えた」「趣味にも興味が持てない」などは疲労のサインかもしれません。日々の体調を5段階でメモするだけでも、自分の波を客観的に把握しやすくなります。
生活リズムを安定させてコンディションを整える
ASDのある方は時間管理が苦手な傾向があり、睡眠や食事のリズムが乱れやすくなります。起床・就寝の時間を固定する、食事の時間を一定にする、就寝前のルーティンを決めるなどの工夫で体内時計が整いやすくなります。リモートワークで仕事とプライベートの切り替えが難しい場合は、上司に率直に伝えることも大切です。
困ったときの相談先・逃げ道を事前に確保しておく
ASDのある方は困りごとが発生しても相談の仕方が分からず、一人で抱え込みがちです。困る前に「業務のことは上司に週1面談で」「体調面は主治医に通院時に」など、相談先と方法をリスト化しておきましょう。また、体調不良時に使える休暇制度の確認や、オフィス内のクールダウンスペースの把握など、限界を迎える前の「逃げ道」を用意しておくことも重要です。
「完璧に適応しなくていい」という考え方を持つ
こだわりが強く完璧主義な特性から、「周囲と同じようにできなければ」と自分を追い込みすぎると、うつ病や不安障害などの二次障害につながるリスクがあります。「自分のペースで成果を出せればいい」「苦手は工夫で補えばいい」と意識的に考え方を切り替えましょう。苦手な部分だけに目を向けず、自分の中にある「好き」や「やりたい」という気持ちを大切にすることが、働き続けるモチベーションにつながります。
一人で抱え込まないために|ASDの就労を支える支援機関・サービス
ASDのある方が仕事を長く続けるには、外部の支援機関とつながっておくことが大きな安心材料になります。自分だけで対処しようとせず、専門家の力を借りることで無理なく自分らしく働く方法が見つかりやすくなります。ここでは代表的な5つの支援機関を紹介します。
就労移行支援事業所
一般企業への就職を目指す方が、ビジネスマナーやパソコンスキルなどの実務訓練から就職活動のサポートまで一貫した支援を受けられる施設です。最大2年間利用でき、企業インターンで実践経験を積むこともできます。就労経験がない方や体調が不安定な方におすすめです。
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
「働くこと」と「暮らすこと」の両面を一体的にサポートする機関です。就労相談だけでなく金銭管理や健康管理など生活面の支援も受けられるため、どこに相談すればよいか分からない方の最初の窓口として活用しやすいでしょう。
障害者雇用専門の転職エージェント
体調が安定しすぐに就職・転職したい方向けのサービスです。ASDの特性に配慮のある求人の紹介、書類添削、面接練習、入社後の定着支援まで受けられます。非公開求人の紹介もあり、最短3週間程度での内定獲得も可能です。
発達障害者支援センター
都道府県・政令指定都市に設置されている総合相談窓口です。医療機関や福祉サービスの紹介、就労に関する助言などを無料で受けられます。診断を受けたばかりの方や、障害者雇用で働くべきか迷っている段階の方でも利用できます。
定着支援サービス(就労定着支援)
就職後に職場へ安定して通い続けられるよう、最大3年間サポートを受けられるサービスです。月1回以上の定期面談や企業との環境調整を行ってくれるため、入社後にじわじわと生じる困りごとにも早期に対処できます。過去に離職経験がある方には特に心強いサービスです。
支援機関は一つだけに頼るのではなく、自分の状況に応じて複数を組み合わせて活用するのが効果的です。まずは気になる機関への問い合わせや見学から始めてみましょう。
ASD(自閉スペクトラム症)とは?仕事に影響しやすい特性をおさらい
「仕事が続かない」「また辞めてしまった」——その悩みの背景には、ASDの特性が深く関わっている可能性があります。対策を考える前に、まずはASDの基本と仕事で影響が出やすい特性を整理しておきましょう。
ASDの基本的な特性
ASDとは、相手の気持ちを汲み取ったりコミュニケーションをとったりすることが苦手な特徴を持つ発達障害です。以前は自閉症やアスペルガー症候群と別々に呼ばれていましたが、現在はASD(自閉スペクトラム症)とまとめて呼ばれています。症状は個人差が大きく、大人になってから気付くケースも多くあります。先天性の障害のため完治はできませんが、適切な支援を受けることで困りごとの多くは解消できます。
仕事場面で表面化しやすい3つの困りごと
学生時代は目立たなかった特性が、社会人になり高度なコミュニケーションを求められることで初めて「困りごと」として表面化するケースは非常に多いです。仕事場面で特に影響が出やすい領域は以下の3つです。
- 対人関係面:相手の感情やニュアンスを読み取れず誤解される、意図せず無神経な発言をしてしまい孤立する
- コミュニケーション面:曖昧な指示が理解できず業務ミスにつながる、一方的に話してしまい報連相がすれ違う
- 活動面:マルチタスクや急な予定変更でパニックに陥る、感覚過敏により音・光・匂いで集中力が低下する
これらの困りごとは本人の努力不足ではなく、脳の情報処理の仕方が異なることに起因します。自分の特性を正しく理解し、適切な環境を選んだり配慮を受けたりすることで対処が可能です。
ASDの人が仕事を辞めがちになる7つの原因
ASDのある方が短期間で離職を繰り返す背景には、特性と職場環境のミスマッチがあります。「なぜ続かないのか」を客観的に把握することが対策の第一歩です。まずは、主な原因に関して図でまとめました。
いかがでしたでしょうか。ここから先は、これらを含めて代表的な7つの原因を解説します。
原因①:コミュニケーションのすれ違いによる人間関係の悪化
相手の感情を読み取れず意図せず無神経な発言をしてしまい、「失礼な人」と誤解されて孤立するケースが多く見られます。
原因②:暗黙の了解・空気を読む文化への適応困難
非言語コミュニケーションの理解が難しく、空気を読んだ行動が求められる場面で適切に振る舞えず、無理に合わせようとして消耗してしまいます。
原因③:マルチタスクや急な予定変更への対応が難しい
一つのことへの集中は得意ですが、複数の業務を同時に求められると混乱しやすく、急な変更でパニックに陥ることもあります。
原因④:感覚過敏(音・光・匂い)によるストレスの蓄積
周囲が気にならない音や光でも集中力を大きく妨げられ、我慢を続けた結果、ある日突然出勤できなくなるケースも珍しくありません。
原因⑤:こだわりの強さが職場で理解されにくい
正確さの追求が強みになる一方、自分のやり方に固執してしまい「融通がきかない」と評価されてしまうことがあります。
原因⑥:自分の特性に合わない職種・業務内容を選んでいる
特性を十分に理解しないまま対人スキルが求められる仕事を選んでしまい、日々の業務そのものが大きなストレスとなっているケースも多くあります。
原因⑦:二次障害(うつ・適応障害)の発症による離職
上記の原因が長期間解消されないと、うつ病や不安障害などの二次障害に発展するリスクがあります。二次障害が発症すると医療的な治療が必要となり、休職や退職を余儀なくされます。「最近疲れやすい」「気分の落ち込みが続く」と感じたら、早めに主治医へ相談しましょう。
【体験談】ASDのある方が「仕事が続かない・辞めがち」になったリアルな声
ASDのある方が仕事を辞めてしまう理由は一人ひとり異なりますが、「特性が理解されなかった」「環境が合わなかった」という共通点があります。ここでは4つのケースを紹介します。
体験談①:暗黙のルールが分からず孤立してしまった
Aさん(20代・男性)は一般雇用の事務職に就きましたが、昼休みの雑談に加われず「何を考えているか分からない」と言われ孤立。普通にしているつもりなのになぜ嫌われるのか分からず、半年で退職しました。その後ASDの診断を受け、現在は障害者雇用枠で働いています。
体験談②:マルチタスクについていけず自信を喪失した
Bさん(30代・女性)は営業事務として入社。電話対応をしながらデータ入力と来客対応をこなす業務についていけず、ミスを繰り返しました。その後、シングルタスク中心の経理部門へ異動したことで徐々に自信を取り戻しています。
体験談③:感覚過敏でオフィス環境に耐えられなかった
Cさん(20代・男性)はプログラマーとしてのスキルには自信がありましたが、オープンフロアの話し声や蛍光灯の光が気になり集中できず、3ヶ月で限界を迎え退職。イヤーマフの使用を認めてもらえていたら違ったかもしれないと振り返っています。
体験談④:上司の曖昧な指示にパニックを起こし退職を繰り返した
Dさん(30代・男性)は「いい感じにまとめといて」などの曖昧な指示に対応できず、3社をいずれも1年以内に退職。その後、就労移行支援で自分の特性を整理し、明確な指示を出す上司のもとで2年以上安定して勤務を続けています。
4つの体験談に共通しているのは、ASDの特性そのものではなく特性と環境のミスマッチが離職の原因だという点です。自分の特性を理解してくれる環境との出会いが、定着への大きなきっかけになっています。
まとめ|ASDで仕事が続かないのは「甘え」ではない。正しい環境と配慮で定着は実現できる
ASDのある方が仕事を辞めてしまう背景には、特性と職場環境のミスマッチという明確な原因があります。本記事では、離職につながる7つの原因、特性に合った職場選びのポイント、合理的配慮の具体的な求め方、日常のセルフケア、そして頼れる支援機関を紹介してきました。
大切なのは、自分の特性を正しく理解し、強みを活かせる環境を選ぶことです。特性そのものをなくすことはできなくても、環境と配慮を整えることで安定して働き続けることは十分に可能です。一人で抱え込まず、まずは支援機関への相談から第一歩を踏み出してみてください。

