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オープン就労とは?障害を開示して働くメリット・デメリットと自分に合った就労形態の選び方

オープン就労とは?障害を開示して働くメリット・デメリットと自分に合った就労形態の選び方

著者: フラカラ編集部

このコラムのまとめ

オープン就労は障害を企業に開示して働く形態で、合理的配慮や勤務調整を受けやすい反面、給与水準や職種の幅に制約が生じることもあります。障害者雇用枠・一般枠・特例子会社という3つの選択肢や、クローズ就労との比較、向いている人の特徴まで、後悔しない就労形態選びのポイントを解説します。

オープン就労の基本――「開示して働く」とはどういうことか

「障害があることを会社に伝えて働く」。言葉にすれば一行ですが、この選択が日々の働きやすさやキャリアの方向性を大きく左右します。オープン就労の仕組みと、クローズ就労との違いを整理しておきましょう。

オープン就労の定義と仕組み

オープン就労とは、就職活動や職場において自分の障害を企業に伝え、特性に応じた配慮を受けながら働く就労形態です。多くの場合、企業が設ける「障害者雇用枠」での応募・採用となりますが、一般雇用枠で障害を開示して働くケースもあります。

オープン就労は単に「障害があります」と伝えることではありません。「自分はこういう場面で困りやすい」「こんな配慮があればパフォーマンスが上がる」と具体的に伝えることで、はじめて配慮が機能します。開示の"質"が、その後の働きやすさを決めるのです。

就労支援カウンセラー

障害者雇用枠で働くための条件

障害者雇用枠への応募には、原則として障害者手帳の所持が求められます。手帳の種類は「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の3つ。手帳を取得することで、障害者総合支援法に基づく就労支援サービスも利用しやすくなります。

なお、手帳の申請から交付までは1〜3ヶ月ほどかかるため、就職活動を本格化させる前に準備を進めておくとスムーズです。

クローズ就労との違い

クローズ就労とは、障害を企業に伝えずに一般枠で働く形態です。両者の違いは「配慮の受けやすさ」と「求人・給与の幅」のトレードオフに集約されます。

障害者職業総合センターの調査によると、障害を開示して就職した場合の1年後の職場定着率は約70%であるのに対し、非開示の場合は約31%と大きな差が出ています。一方で、クローズ就労は求人数が圧倒的に多く、給与水準も高い傾向があります。

出典:

「配慮をもらって長く働く」か、「自力で幅広いキャリアを切り拓く」か――どちらが正解というわけではなく、今の体調やライフステージに合わせて選ぶものです。

オープン就労の5つのメリット

障害を開示して働くことには、目に見えにくいけれど日々の安心感に直結するメリットがあります。配慮を受けながら無理なく働き続けるための土台が、オープン就労には備わっています。

メリット①:障害特性に合わせた業務配置や環境調整を受けられる

聴覚過敏がある方なら静かなフロアへの配属、集中力に波がある方なら定期的な休憩時間の設定など、特性に応じた配慮を受けやすくなります。こうした環境調整は、2024年4月から民間事業者にも法的義務として課されている「合理的配慮の提供」に基づくものです。

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メリット②:「隠し続ける」精神的負担から解放される

クローズ就労の経験者が口をそろえて語るのが、「バレるかもしれない」という緊張感の重さです。通院日の言い訳、体調不良時のごまかし、服薬タイミングの確保――こうした日常的な気苦労から解放されること自体が、メンタルヘルスの安定に直結します。

メリット③:支援機関と職場が連携したサポート体制を築ける

就労移行支援事業所や障害者就業・生活支援センターのスタッフが職場を訪問し、本人と企業の間に立って業務調整やコミュニケーションの橋渡しをしてくれます。この「三者連携」があるかないかで、職場定着率には大きな差が生まれます。

メリット④:体調の波に合わせた勤務調整がしやすい

「今週は調子が落ちているから短時間勤務に切り替えたい」「通院日は午後出勤にしたい」。こうした調整を、後ろめたさなく相談できるのはオープン就労ならではの強みです。体調を崩してから事後的に対処するのではなく、崩れる前に手を打てる環境があることで、長期的な就労の安定につながります。

メリット⑤:職場定着率が高い

上記のメリットが複合的に作用した結果として、オープン就労は職場定着率が比較的高い傾向にあります。短期間で転職を繰り返すよりも、一つの職場で経験を積み重ねるほうが、結果的にキャリアの厚みも生まれやすくなります。

こんな人はオープン就労が合っている

「オープンにすべきか、クローズでいくべきか」。この問いに万人共通の答えはありませんが、オープン就労で安定している方にはいくつかの共通点が見えてきます。

自分の障害特性を具体的に言語化できる人

「私はADHDです」と診断名だけ伝えても、企業側は何をどう配慮すればよいかわかりません。「口頭だけの指示だと抜け落ちやすいので、メールやチャットで残してもらえると助かります」「午後に集中力が下がる傾向があるので、重要な作業は午前中に回してもらえるとありがたいです」――こうした具体的な言語化ができる人ほど、オープン就労のメリットを最大限に引き出せます。

自己理解は障害開示の質を大きく左右します。「どんな場面で困るのか」「どうしてもらえれば解決するのか」をセットで伝えられると、企業側も対応しやすいのです。就労移行支援事業所での訓練期間を、この"言語化の練習"に充てるのもおすすめです。

就労支援カウンセラー

配慮を受けながら働きたい人

定期通院が欠かせない方、体調の波が読みにくい方、過去にクローズ就労で無理をして体調を崩した経験がある方にとっては、「配慮を受けられる」という安心感が何よりの支えになります。支援機関が間に入ることで、自分一人では言い出しにくい調整も進めやすくなります。

職場定着を最優先に考えている人

「給与やキャリアのスピードより、まずは一つの職場で安定して長く働きたい」という優先順位の方には、オープン就労が向いています。配慮のある環境で実績を積みながら、ゆっくりとキャリアを築いていく道も立派な選択です。

初めての就労、または離職を繰り返している人

はじめて社会に出る方や、過去に何度か離職を経験している方にとって、サポートなしでいきなり飛び込むのはリスクが高い選択です。まずはオープン就労で「働くこと自体」に慣れ、自信がついてからクローズに切り替えるというステップを踏む方法もあります。

オープン就労を成功させる4つの準備

障害を開示して働くからといって、すべてが自動的にうまくいくわけではありません。オープン就労で長く安定して働くためには、就職前の「仕込み」が成否を分けます。

自己理解を深め、「取扱説明書」を作る

オープン就労で最も大切なのは、自分自身の障害特性を正確に把握しておくことです。医療機関での評価や、就労移行支援事業所でのプログラムを通じて、「どんな環境なら力を発揮できるか」「何がストレス要因になるか」を棚卸ししましょう。

自己理解は一度で完成するものではなく、働く中で常に更新されていきます。ただ、就職前の段階で「今の自分」をできるだけ正確に把握しておくことが、入社後のミスマッチを防ぐ最大の予防策になります。

精神保健福祉士

合理的配慮の求め方を練習しておく

2024年4月以降、すべての民間事業者に合理的配慮の提供が義務づけられました。ただし、配慮は「企業が察してくれるもの」ではなく「本人が具体的に申し出るもの」です。面接や入社後に、必要な配慮を過不足なく伝えるための準備をしておきましょう。

効果的な伝え方のコツは、「困りごと」と「解決策」をセットにすること。「電話対応が苦手なので免除してほしい」だけでなく、「電話対応を外してもらえれば、その分データ入力の精度と速度を上げられます」と、企業側にもメリットがある形で提示できると交渉がスムーズに進みます。

支援機関を「味方」として巻き込む

就労移行支援事業所や障害者就業・生活支援センターは、就職前の準備段階から就職後の定着支援まで、継続的にサポートしてくれる存在です。就職後に困りごとが生じた際、自分一人で企業と交渉するのではなく、支援者を介して調整できるのはオープン就労の大きな強みです。

セルフモニタリングの習慣をつける

体調や気分の変化を記録する習慣をつけておくと、ストレスサインの早期発見に役立ちます。「何曜日に調子が落ちやすいか」「どんな業務の後に疲労が出やすいか」といったパターンが見えてくると、先手を打った対処が可能になります。配慮を受ける側としても、「なんとなく辛い」ではなく「こういう状況で調子が落ちる」と客観的に伝えられるほうが、企業側も対応しやすくなります。

改めて、オープン就労をするために必要な準備に関して、重要点をまとめます。

オープン就労を成功させる3つの準備

いかがでしたでしょうか。
仕事や業務内容の理解も重要ですが、オープン就労で必要なことは自分や障がいについてしっかりと理解し、降りかかる問題に対して自分と周囲の力を合わせて乗り越えていくことが、安定して働き続けるための大きな土台となります。

オープン就労の3つの選択肢――自分に合う働き方はどれか

「オープン就労」と一口に言っても、実際にはいくつかの形態があります。それぞれ特徴が異なるため、自分の障害特性やキャリアの方向性に合った選択肢を知っておきましょう。

一般企業の「障害者雇用枠」で働く

もっとも一般的なオープン就労の形です。障害特性への配慮が前提となっており、業務内容や勤務時間の調整がしやすい環境が整っています。一方で、担当業務が事務補助やデータ入力など定型業務に限られやすいこと、給与水準が一般枠より低くなりがちなことは把握しておく必要があります。

一般企業の「一般雇用枠」で障害を開示して働く

一般枠の求人に応募しつつ、選考過程や入社後に障害を伝えるパターンです。職種や給与の選択肢は広がりますが、障害者雇用枠ほど手厚い配慮は期待しにくい面があります。合理的配慮の提供義務は一般枠にも適用されるため、制度上は配慮を求めることが可能です。

合理的配慮の提供が法的義務になったことで、一般枠でも「障害があるから不採用」という対応は許されなくなっています。ただし、実際の運用は企業によって温度差があるのも事実です。面接時に配慮への姿勢を確認しておくことをおすすめします。

障害者雇用コンサルタント

特例子会社で働く

特例子会社は、障害者の雇用促進を目的として親会社が設立する子会社です。バリアフリーな設備、専任の支援スタッフ、障害特性に合わせた業務設計など、働きやすさに特化した環境が整っています。同じ障害を持つ仲間が多いことで孤立感が薄れるというメリットもあります。ただし、業務内容が限定的で給与水準もやや低めの傾向があります。

オープン就労の4つのデメリット――目をそらさずに知っておくこと

メリットだけで就労形態を決めると、入社後に「こんなはずでは」と後悔することになりかねません。デメリットも正面から受け止めたうえで、それでも自分にとってプラスが大きいかどうかを判断しましょう。

デメリット①:給与水準が低くなりやすい

厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査」によると、精神障害者の月額平均給与は約14万9千円。一般労働者の平均月給(約31万8千円)と比較すると、約半分の水準にとどまっています。短時間勤務が多いことも影響していますが、フルタイムであっても一般枠との差は残る傾向があります。

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デメリット②:求人数が限られる

障害者雇用枠の求人は増加傾向にあるものの、一般枠と比べれば選択肢はまだ少ないのが現状です。特に地方では、希望する業種や職種、勤務地の条件をすべて満たす求人に出会うのが難しいこともあります。

求人の少なさは確かに課題ですが、ハローワークの専門窓口や障害者向け転職エージェントなど、複数のチャネルを並行して使うことで選択肢は広がります。「1つのルートだけで探す」のは、もったいないですよ。

就労支援専門家

デメリット③:担当できる職種が偏りがち

障害者雇用枠の求人は、事務補助やデータ入力、軽作業などの定型業務が中心です。専門性の高い仕事や企画・営業職を希望する場合、障害者雇用枠だけでは物足りなさを感じるかもしれません。

デメリット④:キャリアアップの道筋が見えにくい

配属部署や担当業務が固定されやすく、異動や昇進のルートが一般社員と異なるケースがあります。入社前に「障害者雇用枠でのキャリアパスはどうなっていますか」と直接確認しておくことが、入社後のギャップを防ぐ一番の対策です。

オープン就労とクローズ就労、どちらを選ぶか――判断の軸を持つ

「配慮をもらって安定を取る」か「自力で勝負して可能性を広げる」か。この選択に正解はありません。ただし、自分なりの判断基準を持っておくと、迷いが減ります。

障害の程度と業務への影響から考える

障害による困りごとが業務に大きく影響する場合や、定期通院が欠かせない場合は、配慮を受けやすいオープン就労のほうがリスクが低いでしょう。逆に、自力で体調管理ができており、障害が業務パフォーマンスにほとんど影響しない場合は、クローズ就労で幅広いキャリアを追求する選択もあり得ます。

障害の「軽さ」「重さ」は、数値だけでは測れません。同じ診断名でも、職場環境との相性によって困りごとの深刻さはまったく変わります。「この環境なら自分はどうか」という視点で考えてみてください。

精神科医

今の優先順位を明確にする

体調の安定を最優先にしたいのか、給与やキャリアアップを重視したいのか。自分が今、何を一番大切にしたいのかを言語化してみましょう。「まずは体調を安定させたいからオープン就労で」「自信がついてきたらクローズに挑戦」というように、ライフステージに合わせて切り替えていくことも可能です。

将来のキャリアプランから逆算する

特定の専門領域でスキルを磨きたい場合は、職種の幅が広いクローズ就労のほうが選択肢は多くなります。一方、まずは安定した環境で長く勤め続けることを優先するなら、オープン就労で着実に実績を積むのが近道です。

専門家の視点を取り入れる

主治医、就労移行支援事業所のスタッフ、ハローワークの専門援助部門など、複数の立場からの意見を聞くことで、自分では気づかなかった選択肢が見えてくることがあります。一人で抱え込まず、判断材料を増やしてから決めても遅くはありません。

オープン就労に関するよくある質問

就労形態を検討する中で、多くの方が抱く疑問をまとめました。

Q1. 障害者手帳はどうやって取得するのですか?

主治医に診断書を作成してもらい、居住地の市区町村窓口に申請します。手帳の種類は障害の内容によって異なり、精神疾患であれば精神障害者保健福祉手帳、知的障害であれば療育手帳が該当します。申請から交付まで1〜3ヶ月ほどかかるため、就職活動を始める前に動き出しておくのがおすすめです。

Q2. オープンかクローズか、相談できる場所はありますか?

就労移行支援事業所、障害者就業・生活支援センター、ハローワークの専門援助部門で相談できます。それぞれ異なる角度からアドバイスをもらえるため、複数の機関に足を運んでみると判断材料が増えます。

「どちらが正解か教えてほしい」と相談に来る方は多いのですが、正解は一つではありません。大切なのは、複数の視点からの情報を集めたうえで、自分自身が納得のいく選択をすることです。

就労支援コーディネーター

Q3. 就労後に、障害の開示・非開示を変更することはできますか?

変更は可能です。クローズからオープンに切り替える場合は、伝える相手(上司のみか、部署全体かなど)やタイミングを慎重に検討しましょう。「体調面で相談したいことがある」という切り出し方であれば、自然な形で話を進められます。反対に、オープンからクローズへの切り替えは、転職を機に行うのが一般的です。

Q4. 障害者雇用枠でも昇進やキャリアアップはできますか?

企業の方針によって大きく異なります。障害者雇用枠でも正社員登用や昇格の制度を整えている企業は増えてきています。面接時に「障害者雇用枠での長期的なキャリアパスはどのようになっていますか」と率直に質問してみることをおすすめします。その回答が、企業の障害者雇用への本気度を測るバロメーターにもなります。

まとめ――就労形態は「一生モノの決断」ではない

オープン就労には、配慮を受けながら安心して働ける環境が整っている一方で、給与やキャリアの面では制約が伴います。クローズ就労にはクローズ就労の強みがあり、どちらが「正解」とは言い切れません。

ただ、一つだけ確かなことがあります。この選択は一度きりの不可逆な決断ではないということです。「今は体調を安定させたいからオープンで」「自信がついたらクローズに挑戦してみよう」――ライフステージや体調の変化に合わせて、働き方は何度でも選び直せます。

就労形態は「正解を当てるクイズ」ではなく、「今の自分に合うカードを選ぶ戦略」です。合わなければ切り替えればいい。大切なのは、自分が無理なく息ができる場所で、自分らしく働き続けられることです。

就労支援カウンセラー

焦らず、あなたのペースで。まずは支援機関の窓口をノックするところから、はじめてみてください。