感覚過敏がある人の職場対策|音・光・匂いストレスの減らし方
著者: フラカラ編集部
このコラムのまとめ
感覚過敏の人は、職場の音・光・匂いなどが気になり、仕事に集中できないケースが多くあります。そのまま放置していると仕事の能率もあがらず、ストレスが積み重なり、働き続けるのが難しくなってしまうケースも少なくありません。快適に仕事を進めるためには、自分がもっている感覚過敏に対して何らかの対策が必須です。本記事では、感覚過敏が仕事に与える影響を症状別に整理し、自分で行える対策や職場に求めるべき合理的配慮について具体的に解説します。
感覚過敏にはどんな症状や特徴がある?原因は?
感覚過敏とは、聴覚・視覚・嗅覚・触覚・味覚などの諸感覚が、周囲の人よりも過敏に感じられる状態を指します。多くの人が気にならない程度の音や光、匂いに対して、強い不快感やストレスを覚えるのが特徴です。
例えば聴覚過敏なら、パソコンの動作音が大きく聞こえて集中できない。視覚過敏の人は照明が眩しくて目を開けていられないといった症状が現れます。
感覚過敏が起こる主な原因の一つは、脳における感覚情報の処理プロセスにあります。脳は入ってくる膨大な情報から必要なものと不要なものを無意識に選別していますが、選別機能がうまく働かないと、本来なら無視できるはずの細かな刺激までがすべて脳へ届き、感覚過敏の症状として現れます。
この特性は、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)といった発達障害を持つ人に多く見られる傾向がありますが、障害の有無にかかわらず、うつ病やパニック障害などの精神疾患、身体的な疾患、一時的な体調不良や極度のストレスによって引き起こされるケースもあります。
症状別に見る感覚過敏が原因で起こる仕事の悩み
上述したとおり、感覚過敏には聴覚・視覚・嗅覚・触覚・味覚があり、症状によって仕事で生じる困りごとが異なります。
以下の項目では、感覚過敏の種類別にどのようなシーンで困難を感じるのかを具体的に解説しているので、自分に当てはまるものがあるか確認してみてください。
聴覚過敏は職場のさまざまな雑音が業務に支障をきたす
聴覚過敏は、周囲の同僚にとっては気にならない程度の生活雑音が、大きな音や不快なノイズとして感じられ、業務に支障をきたします。例えば電話の呼び出し音・キーボードの打鍵・コピー機の動作音・エアコンの稼働音・シュレッダーの音など、通常では問題にならない物音でも、仕事の集中を妨げる要因となります。
また、複数の音が混ざり合う環境での会話において、誰が話しているのかわからなかったり、言葉が聞き取れなかったりするのも、よくある困りごとです。例えば周囲の雑談と上司の指示を区別して聞き取ることができなければ、聞き漏らしや誤解が生じやすくなります。業務上のミスにつながるだけでなく、周囲からやる気がないと誤解されることで、大きなストレスを抱えて二次的な被害が生まれる可能性も考えられます。
視覚過敏は、光や色の情報に過剰に反応してしまう
視覚過敏がある人は、目から入る光や色の情報を過剰に受け取ってしまいます。例えばオフィスの蛍光灯を眩しく感じてしまったり、白地の書類や光沢のあるデスクに反射する光が目に刺さるように感じたりするのが特徴です。
視界に入る動くものに対して、過剰に反応してしまうケースも少なくありません。通路を歩く人の動きや、パソコン画面の端で流れる広告、デスク周りの小物などが気になり、作業への集中が削がれる場合もあります。視覚過敏の人がなんの対処もしないまま業務を続けていると、慢性的な眼精疲労や頭痛を引き起こす原因となるため、注意が必要です。
嗅覚過敏は、わずかな匂いでも不快感や体調不良を引き起こす
嗅覚過敏がある人は、特定の匂いを非常に強く感じたり、わずかな匂いでも不快感や体調不良を覚えたりします。例えば香水や整髪料・柔軟剤・タバコ・昼食時の食べ物の匂いなどがストレスの原因となります。
また、給湯室で使う洗剤や手指の消毒液、印刷機のインク、建材の匂いなどに敏感に反応し、集中力が途切れてしまうケースも少なくありません。
匂いは目に見えないため、本人が苦痛を感じていても周囲の理解が得にくい点も嗅覚過敏の悩みです。逃げ場のない空間で不快な匂いに晒され続けることは、精神的に大きな疲弊を招いてしまいます。
触覚過敏は皮膚に触れる刺激に反応し、痛みや違和感を覚えてしまう
触覚過敏がある人は、皮膚に触れる刺激に過剰反応することで、痛みや違和感を覚えるのが特徴です。職場においては、主にユニフォームやスーツの着用、オフィス備品の使用、他者との物理的な接触が原因となります。
例えば制服の襟元が擦れる感覚や、タグのチクチクとした感触、ストッキングやネクタイの締め付けなどが気になり、業務に集中できず、落ち着かない状態が続いてしまいます。また冷房の風が肌に直接当たるのが辛い、冬場の静電気に驚くといった症状も少なくありません。
さらに不意に肩を叩かれるなどの、対人接触にも拒否反応を示すケースがあります。本人は意図していなくても、身体がこわばったり咄嗟に避けてしまったりするため、対人関係の問題が引き起こされる可能性も否定できません。
味覚過敏は、一見仕事に関係ないように思えても無視できない
味覚過敏がある人は、何らかの味に対して敏感であったり、多くの人がおいしいと感じる味に違和感を覚えたりします。仕事に直接関係がないように思われがちですが、職場での円滑なコミュニケーションや健康維持において、無視できない問題が生じる可能性があります。
例えば特定の食材や調味料に対して、強い不快感や吐き気をもよおすことのある味覚過敏の人は、ランチタイムや飲み会などで同僚と同じメニューを食べられないことがあります。味覚過敏の特性を周囲に理解されていない環境では、好き嫌いが激しい、付き合いが悪いと捉えられてしまい、精神的なストレスにつながります。
また、社外の人との食事接待や会合において、出された料理に手をつけられないことで、マナーに欠けると誤解される不安を抱える人も少なくありません。
感覚過敏がある人の職場対策や合理的配慮を症状別に解説
感覚過敏がある人は、工夫次第で受ける刺激やストレスを軽減することが可能です。自分に合った工夫を取り入れれば、本来の能力も発揮しやすくなりますよ。
また、合理的配慮ができないかを職場に相談するのもよい方法です。合理的配慮とは、障害のある人が平等に働けるよう、職場側が過度な負担にならない範囲で障がい者のために環境を整えることを指します。2024年4月からは、民間企業にも配慮の提供が義務化されています。
以下で、感覚過敏の症状別の対策方法や合理的配慮の例を解説しているので、自分に合ったものを参考にしてみてください。
聴覚過敏は、物理的に音を遮断したり周囲の音を調整するのが効果的
聴覚過敏の人は、物理的に音を遮断するなどして、周囲の音を調整することが有効な可能性があります。例えばノイズキャンセリング機能付きのイヤホンや耳栓を使えば、不快に感じる環境音をシャットアウトできます。なかには人の話し声は聞き取れるような設計になっている商品もあり、業務中の使用にはぴったりだといえるでしょう。
また、具体的配慮として座席の配置を移動できるかを相談してみるのもよい方法です。コピー機・シュレッダー・電話機などから離れた席へ移動したり、壁側の席を選んだりすることで、背後や周囲から発生する音を減らせます。会議や打ち合わせ時には、スピーカーから離れた位置に座る、静かな会議室を優先的に利用できないかといった配慮を要求してみましょう。
視覚過敏は光の強さの調整や、目に映る情報を少なくする
視覚過敏の対策では、光の強さを調節することと、視界に入る余計な情報を減らすのが効果的です。例えばオフィス照明の眩しさが辛い場合は、デスクライトを導入して天井の照明を消す、自分の席の上だけ蛍光灯を外してもらうなどの配慮が可能か相談してみましょう。
個人レベルでは、色のついたレンズのメガネやブルーライトカットメガネを着用することで、目に入る光の刺激を和らげることが可能です。また、パソコンの画面設定で輝度やコントラストを下げたり、背景色を目の負担がかかりにくい色に変更したりするのも有効な手段です。
視界に入る人の動きや周囲の小物が気になる場合は、パーテーションや卓上パーティションを設置してみてください。視界を遮ることで、作業に集中しやすい環境を作れますよ。窓際で外の光や動きが気になる場合は、窓から離れた席への配置換えが可能かを相談してみましょう。
嗅覚過敏は、不快な匂いとの距離を置くのが重要
嗅覚過敏の対策では、不快な匂いとの距離を置くことが重要です。最も手軽にできる対策は、マスクの着用です。また、自分の好きなアロマオイルを少量マスクの端につけたり、お気に入りの香りがついたハンカチを用意したりして、不快な匂いを感じた際に上書きする方法も効果が期待できます。休憩時間には外の空気を吸いに行くなど、意識的に匂いのこもった場所から離れる習慣をつけるのも有効です。
合理的配慮としては、空気清浄機の設置や、換気がしやすい窓際の席への移動などが挙げられます。なお柔軟剤・香水・タバコの匂いについては、本人が直接伝えることが難しいケースも多いため、上司や担当者を通じて、職場全体で強い香料の使用を控えるよう周知してもらえないか相談してみてください。
触覚過敏は、皮膚への刺激を最小限に抑える工夫が効果的
触覚過敏の対策では、皮膚への刺激を最小限に抑える工夫が効果的です。例えば衣類の刺激に過敏に反応してしまう人は、肌触りのよい綿やシルクなどの天然素材の衣類を着ると改善されるケースがあります。また縫い目がある肌着を裏返しに着たり、タグを切り取ったりするのも有効です。ネクタイやベルトの締め付けが辛い場合は、伸縮性のある素材を選んだり、デスクワーク中のみ緩めたりするなどの調整も効果が期待できます。
合理的配慮としては、座席の配置を工夫し、人が頻繁に通る通路側を避けることで、不意に身体が触れるリスクを下げられます。冷暖房の風が直接当たることで不快感が生じる場合も、座席の配置換えを相談するとよいでしょう。
味覚過敏は、無理に周囲にあわせず自分の特性をしっかり伝えておく
味覚過敏への対策では、無理に周囲に合わせようとせず、自分の特性を周知しておくことが重要です。例えば会食や飲み会に参加するなら、事前に幹事や上司に事情を伝えておきましょう。好き嫌いではなく、特性によって身体が受け付けないことを共有するのが大切です。どうしても参加が難しい場合は、食事を伴わない時間帯のみ参加する、あるいは短時間で切り上げるといった調整ができないかも相談してみてください。
日常的なシーンでは、昼食にはあらかじめメニューが分かっている店舗を選んだり、特定の食材を除去できるか確認したりすることで、負担を軽減できます。飲み物に関しても、いつも飲む銘柄の水や茶類を常備しておくことで、不快な味によるストレスを避けることが可能です。
感覚過敏で受診する場合は何科に行けばいい?
感覚過敏の症状があり、日常生活や仕事に支障が出ている場合は、専門の医療機関を受診することが推奨されます。受診先としては、精神科や心療内科が一般的です。感覚過敏の背景にASDやADHDなどの発達障害の可能性が考えられる場合は、発達障害の診療を行っているクリニックを選ぶとスムーズです。予約の際には、感覚過敏について相談したい旨を伝えておくとよいでしょう。
特定の感覚だけが極端に過敏な場合は、身体的な疾患が隠れていないかを確認するため、耳鼻咽喉科(聴覚)や眼科(視覚)、皮膚科(触覚)などの専門科を先に受診し、器官そのものに異常がないかを診てもらうのも一つの方法です。
専門科で異常が見つからなければ、脳の情報の受け取り方に原因があると考え、改めて精神科や心療内科を受診してみてください。受診時は、いつ、どのような場面で、どのような症状が出るかをメモして持参すると、医師に状況を正確に伝えられます。
感覚過敏が原因で就職や転職に悩んだら支援機関の活用も検討しよう
感覚過敏の特性を持ちながら、自分一人で相性の良い職場を見つけたり、企業と配慮の交渉を行ったりするのは容易ではありません。就職活動や転換期において困難を感じる場合は、専門の支援機関の活用も検討してみてください。
代表的な支援機関には、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどがあります。これらの機関では、専門のアドバイザーが特性に応じた職業相談に乗ってくれるほか、企業に対してどのように配慮を求めるべきかのアドバイスも受けられます。
また就労移行支援事業所も、選択肢のひとつ。個々の特性に合わせたトレーニングを受けながら、自分に合った環境や職種を見極めることができます。実際の職場を想定した環境でどのような対策が有効かを事前に試せるため、就職後のミスマッチのリスクを抑えられますよ。
まとめ
感覚過敏がある人にとって、職場の音・光・匂いといった刺激は、単なる不快感を超えて業務遂行を妨げるストレス要因となります。一方で、職場の環境づくりを少し工夫するだけで、症状を軽減できる可能性があります。
ただし自力での対策には限界があるため、職場に合理的配慮ができないか相談するのも重要です。周囲に自分の特性を正しく伝え、環境を調整してもらうことで、本来の能力を発揮しやすくなりますよ。感覚過敏の特性をしっかりと理解して適切な対策をとれば、自分らしく働ける環境は必ず整えられるでしょう。