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生活保護を受けながら就労移行支援は使える?併用の条件・申請手順・収入の扱いまで徹底解説

生活保護を受けながら就労移行支援は使える?併用の条件・申請手順・収入の扱いまで徹底解説

著者: フラカラ編集部

このコラムのまとめ

生活保護受給中でも就労移行支援や就労継続支援は利用可能で、利用料は原則無料です。本記事では併用が認められる根拠から申請手続き、収入認定と控除の仕組み、就労自立給付金の活用法まで、経済的自立を目指すために知っておきたい情報を網羅的にまとめました。

生活保護と就労支援制度は併用できる ― その法的根拠

「生活保護を受けている自分が、就労移行支援に通ってもいいのだろうか」。この疑問を抱える方は少なくありません。答えは明確で、生活保護受給中であっても就労移行支援・就労継続支援A型・B型といった障害福祉サービスは問題なく利用できます

利用できる就労支援制度の種類

障害者総合支援法に基づく就労系の福祉サービスは、大きく3つに分かれます。目指すゴールや現在の体調によって、どれを選ぶかが変わってきます。

  • 就労移行支援:一般企業への就職を目標に、最長2年間の訓練を受けられる通所型サービス。ビジネスマナーやPCスキル、職場実習などのプログラムが用意されている
  • 就労継続支援A型:事業所と雇用契約を結び、最低賃金以上の給与を得ながら働く。2026年時点の全国平均賃金は月額約9万1,000円
  • 就労継続支援B型:雇用契約を結ばず、体調に合わせたペースで作業に取り組める。利用者には賃金ではなく工賃としてお金が支払われ、全国平均工賃は月額約2万4,000円

出典:

なぜ併用が認められるのか

生活保護法の目的は、第1条に「最低限度の生活の保障」と並んで「自立の助長」が掲げられています。就労支援サービスの利用はまさにこの「自立の助長」に該当するため、福祉事務所としてもむしろ積極的に勧めるケースが多いのが実情です。

就労移行支援の利用期間中は原則として収入がありません。家族の援助も期待できない方であれば、生活保護との併用がなければ訓練に通い続けること自体が難しくなります。両制度の併用は、制度設計として想定されている使い方です。

福祉事務所職員

利用料は原則ゼロ ― ただし実費は別

障害福祉サービスの自己負担額は世帯の所得区分で決まります。生活保護受給世帯は「生活保護」区分に該当し、利用者負担額は0円です。ただし、通所にかかる交通費や昼食代といった実費は自己負担になる点に注意してください。事業所によっては食事を無料提供していたり、交通費を一部補助していたりするところもあるので、見学時に確認しておくと安心です。

利用に必要な条件

就労支援サービスの対象者は、障害者総合支援法に定められた要件を満たす方です。具体的には次のとおりです。

  • 原則18歳以上65歳未満であること
  • 身体障害・知的障害・精神障害・発達障害・難病など、対象となる障害があること
  • 就労移行支援の場合は、一般企業への就職を希望していること

なお、障害者手帳を持っていなくても、医師の診断書や意見書があれば利用が認められるケースもあります。「手帳がないから無理だ」と諦める前に、まずは市区町村の障害福祉課に相談してみてください。

生活の土台を保ちながらスキルを磨ける ― 両制度の併用は、経済的不安を抱えた方にとって現実的な自立の第一歩になります。

併用するメリット ― 費用面だけではない3つの利点

利用料が無料になるという経済的メリットは大きいですが、併用の利点はそれだけにとどまりません。生活保護が「生活の土台」を、就労支援が「自立への階段」を担うことで、無理のないペースで社会復帰を進められます。

生活保護と就労支援を組み合わせることで得られる、3つの大きなメリットを確認しましょう。

生活保護と就労支援を併用するメリット

この図で示したように、生活保護による保障があるからこそ、あなたは「就職すること」だけを急ぐのではなく、「長く働き続けるためのスキル」をじっくりと身につけることができます。
ここからは、実際にこの制度を活用して自立を目指すための具体的なステップを解説します。

生活費の心配なく訓練に集中できる

就労移行支援の通所期間中は、基本的に収入がありません。貯蓄もない状態で訓練に通い続けるのは、精神的にも物理的にも厳しいものがあります。生活保護を受給していれば、住居費・生活費・医療費が保障されるため、「明日の家賃をどうしよう」という不安を抱えることなくプログラムに取り組めます。

  • 住居確保:住宅扶助により家賃が保障されるため、住まいを失うリスクがない
  • 医療費の負担なし:医療扶助によって通院や服薬のコストを気にせず、体調管理と訓練を両立できる

小さな一歩から始められる段階的な回復

いきなりフルタイムで働くのはハードルが高い。その不安は自然なものです。就労移行支援では、週2日・半日の通所からスタートし、体調を見ながら徐々に日数や時間を増やしていくアプローチが一般的です。生活保護があるからこそ、「まだ週3日しか通えない」という段階でも生活が成り立ちます。

  • 生活リズムの立て直し:決まった時間に外出する習慣をつくるところから始められる
  • 職場体験・企業実習:実際の職場で「自分にもできる」という感覚を得てから就職活動に入れる

就労自立給付金 ― 保護脱却時のセーフティネット

就職して収入が安定し、生活保護を卒業するときに受け取れるのが「就労自立給付金」です。保護受給中に収入認定された額の一部が仮想的に積み立てられ、保護廃止時にまとめて支給される仕組みです。

保護を抜けた直後は、税金や社会保険料の負担が一気に発生します。就労自立給付金は単身世帯で最大10万円、複数世帯で最大15万円。金額としては大きくありませんが、初月の生活を乗り切るための「つなぎ」として心強い存在です。

生活保護担当ケースワーカー

こうした制度上の手当てがあるからこそ、「就職しても保護が切れたら生活できなくなるのでは」という不安を軽減できます。経済面・精神面の両方にクッションを持ちながら、自分のペースで自立に向かえる ― それが併用の最大の価値です。

体験談に学ぶ ― 生活保護×就労支援で自立した2つのケース

制度の説明だけでは、実際に自分がどう動けばいいのかイメージしにくいかもしれません。ここでは、生活保護と就労支援の併用を経て就職に至った2人の体験を紹介します。

50代男性Aさん ― うつ病による離職から事務職へ復帰

Aさんは50代前半、長年勤めた職場で人間関係のトラブルが重なり、うつ病を発症しました。退職後、傷病手当金が切れたタイミングで生活保護を申請。症状が落ち着いた頃、担当ケースワーカーの勧めで就労移行支援事業所の見学に行きました。

最初の1か月は週2日、午前中だけの通所でした。それでも帰宅するとぐったりして何もできない日が続きました。でも3か月目に入る頃には週5日通えるようになり、「ああ、自分はまだやれるんだ」と思えるようになったんです。

Aさん

約1年間の訓練を経て、Aさんは障害者雇用枠で労務関係の事務職に就職しました。就労自立給付金を受け取り、生活保護から卒業。現在はフルタイムで勤務を続けています。Aさんが振り返って強調するのは、「生活保護があったから訓練に集中できた」という点でした。

30代女性Bさん ― 発達障害の特性を武器にIT企業へ

Bさんは30代前半、成人後にASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。対人コミュニケーションの難しさから就職活動が長期化し、経済的に行き詰まって生活保護を申請。まずは就労継続支援B型で軽作業に取り組みながら、生活リズムを整えることからスタートしました。

半年後、就労移行支援に切り替え。自己理解を深めるプログラムで「細部への集中力」「データの不整合に気づく力」といった自分の強みを言語化できるようになりました。その特性を活かしてIT企業のデータ分析部門の実習に参加し、実習先からそのまま採用のオファーを受けています。職場では静かな作業環境やテキストベースのコミュニケーションといった合理的配慮が整えられ、安定就労につながりました。

2つの事例に共通するポイント

  • 「今できること」から始めた:週2日でも、B型の軽作業でも、最初のハードルを下げたことが継続につながった
  • 自分の取扱説明書をつくった:苦手なことだけでなく、どんな環境なら力を発揮できるかを整理し、面接や職場で具体的に伝えられた
  • 就職後のサポートも活用した:就労移行支援事業所による定着支援を利用し、職場での困りごとを早期に解消できた

申請手続きの流れ ― 何をどの順番で進めればいいか

「使えることは分かったけれど、どこに何を申請すればいいのか分からない」。ここでは、生活保護と就労支援サービスを併用するまでの具体的な手順を時系列で整理します。

ステップ1:福祉事務所で生活保護を申請する

生活保護の窓口は、住んでいる地域を管轄する福祉事務所です。すでに受給中の方はこのステップは不要ですが、これから申請する場合の流れを押さえておきましょう。

  1. 電話で相談予約:福祉事務所に連絡し、面談の日時を決める
  2. 初回面談(インテーク):収入・資産・家族構成・健康状態などを聞き取られる。就労支援の利用希望もこの時点で伝えておくとスムーズ
  3. 申請書類の提出:収入申告書、資産申告書、同意書などを提出
  4. 家庭訪問・資産調査:ケースワーカーが自宅を訪問し、生活状況を確認する
  5. 決定通知:申請から原則14日以内(最長30日)に結果が通知される

ステップ2:障害福祉サービス受給者証を取得する

就労移行支援や就労継続支援を利用するには、「障害福祉サービス受給者証」が必要です。申請先は市区町村の障害福祉課です。医師の診断書または障害者手帳を持参のうえ、利用したいサービスの種類と日数を伝えます。

受給者証が手元に届くまでに1〜2か月かかることがあります。利用を考え始めた段階で障害福祉課に相談しておけば、事業所探しと並行して手続きを進められます。早めの行動が大切です。

相談支援専門員

ステップ3:自分に合った事業所を見つける

受給者証の申請と並行して、通所先の事業所探しを始めましょう。複数の事業所を見学・体験利用して比較することをお勧めします。チェックしたいポイントは以下のとおりです。

  • アクセス:自宅から無理なく通える距離か。体調が悪い日でも通所を続けやすい立地かどうか
  • プログラム内容:自分の障害特性や目指す職種に合った訓練が受けられるか
  • 実費の負担:交通費補助や昼食提供、送迎サービスの有無。生活保護受給中は実費の負担が重くなりやすい

事業所の雰囲気やスタッフとの相性も長く通ううえでは大切です。「ここなら続けられそうだ」と感じられる場所を、焦らず探してみてください。

見落としがちな注意点 ― 収入認定と申告のルール

併用にあたって最も注意が必要なのが、収入の取り扱いです。申告を忘れると不正受給と判断されるリスクがあるため、仕組みを正しく理解しておくことが欠かせません。

すべての収入を申告する義務がある

生活保護受給者は、金額の大小にかかわらず、あらゆる収入を福祉事務所に届け出る義務を負っています。就労継続支援A型の賃金やB型の工賃も例外ではありません。毎月の「収入申告書」に記載して提出します。

  • 勤労収入の控除:働いて得た収入には「基礎控除」が適用され、収入全額が差し引かれるわけではない。たとえば月収1万5,000円以下であれば全額が手元に残る
  • 扶助費の調整:控除後の収入額に応じて翌月以降の保護費が減額される仕組み

B型の工賃が月数千円であっても申告は必要です。「このくらいなら報告しなくてもいいだろう」と自己判断してしまうと、後から不正受給として保護費の返還を求められる場合があります。額が小さくても毎月きちんと申告してください。

ケースワーカー

通所にかかる実費 ― 交通費と食費の負担

サービス利用料は無料でも、通所のための交通費や昼食代は原則自己負担です。月額にすると数千円から1万円程度になることもあり、限られた保護費の中では軽視できない出費です。対策としては、送迎サービスを行っている事業所を選ぶ、障害者割引の交通系ICカードを活用する、昼食を提供している事業所を探す、といった方法があります。

障害年金を受給している場合の取り扱い

障害年金や失業給付などの社会保障給付も「収入」として認定され、保護費から差し引かれます。つまり、障害年金を受け取ったからといって手元の総額が増えるわけではありません。ただし、障害年金を受給している場合は「障害者加算」が適用されるケースがあり、加算分だけ保護費の上乗せが受けられる可能性があります。

就職して保護を卒業する際は就労自立給付金の申請を忘れずに。ケースワーカーに事前に確認しておけば、手続きの漏れを防げます。

よくある質問 ― 不安を一つずつ解消する

生活保護と就労支援の併用を考えている方から寄せられることの多い疑問をまとめました。

就職したら生活保護はすぐに打ち切られる?

就職=即打ち切り、ではありません。収入が最低生活費を安定的に上回っていると判断されるまでは、保護は継続されます。一般的には就職後3〜6か月程度の収入状況を見て廃止を検討するケースが多いです。

ケースワーカー

障害者手帳を持っていなくても就労支援は使える?

手帳がなくても利用できる場合があります。医師の診断書や意見書によって障害の状態が確認できれば、障害福祉サービスの対象と認められることがあります。まずは市区町村の障害福祉課に相談してみてください。

生活保護と障害年金は同時に受け取れる?

受け取ること自体は可能です。ただし前述のとおり、障害年金は収入として認定され、その分だけ保護費が減額されます。「両方もらえてお得」というわけではなく、最低生活費の不足分を保護費で補うという構造に変わりはありません。障害者加算が適用される点が実質的なメリットです。

通所の交通費を抑える方法はある?

  • 送迎サービスのある事業所を選ぶ ― 車での送迎を実施している事業所なら交通費がゼロになる
  • 障害者割引を活用する ― 精神障害者保健福祉手帳の提示でバス運賃が半額になる自治体もある
  • 自転車通所が可能な距離の事業所を探す ― 天候に左右されるが、最もコストがかからない手段

就労支援を受けたけれど就職できなかったらどうなる?

就労移行支援の利用期間は原則2年間です。この期間内に就職に至らなかった場合でも、いくつかの選択肢が残されています。就労継続支援A型やB型に切り替えて福祉的就労を続ける、自治体に申請して就労移行支援の期間延長を認めてもらう(やむを得ない事情がある場合に限り最大1年延長可能)、別の就労移行支援事業所に通い直すといった方法があります。生活保護が打ち切られるわけではないので、焦らず次のステップを担当のケースワーカーや相談支援専門員と一緒に考えていきましょう。

まとめ ― 「生活を守る制度」と「未来をつくる制度」を両輪で使う

生活保護は今日の暮らしを支え、就労支援はこれからの働き方をつくる。この2つの制度を組み合わせることで、経済的な不安に押しつぶされることなく、自分に合ったペースで社会復帰を進められます。

統合失調症の診断を受けて10年近く生活保護で暮らしていました。「もう社会に戻れないのでは」と何度も思いましたが、就労移行支援に通い始めてから少しずつ自信が戻ってきて、今は事務の仕事をしています。完璧を目指す必要はありません。まずは見学に行くだけでも、大きな一歩です。

就労支援利用経験者

併用に必要な手続きは複数の窓口にまたがるため、一人で全部を把握しようとすると混乱しがちです。担当ケースワーカー、相談支援専門員、就労移行支援事業所のスタッフ ― 周囲の支援者を頼りながら、一つひとつ進めていけば大丈夫です。

制度は「使う人」がいて初めて意味を持ちます。気になった方は、明日でなくていい。でも今週中に、福祉事務所か障害福祉課に電話を1本入れてみてください。