障害者手帳とは?3種類の違い・等級・申請方法・メリットをわかりやすく解説
著者: フラカラ編集部
このコラムのまとめ
障害者手帳には身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳の3種類があり、それぞれ対象者や等級、申請方法が異なります。この記事では、障害者手帳の取得条件から申請の流れ、受けられる税金控除・割引・障害者雇用枠等のメリット、取得をためらう方が気になるデメリットまで解説。手帳なしでも使える支援制度の情報も掲載しています。
障害者手帳とは?制度の全体像と3種類の基本知識
「障害者手帳を持つことは、何かの終わりではないか」。そう恐れて、取得を迷い続けていませんか?
実は、手帳はあなたを縛るものではなく、自分らしく生きるための選択肢を広げる「パスポート」のようなものです。税金や医療費の軽減といった経済的なメリットはもちろん、あなたにとって無理のない働き方や環境を選ぶための強力な味方になります。
「誰かにバレるのでは?」という不安も含め、手帳に対する正しい知識と取得のメリットを以下の図に整理しました。
いかがでしたでしょうか。
「手帳を持つこと=周囲に障害が知れ渡る」というのは大きな誤解です。自分の意志で公開しない限り、職場や他人にバレることはありません。あくまで、あなたが困った時に自分を守り、サポートを受けるための「補助ツール」なのです。
手帳は、いつでも「自分を守る武器」として持っておくことができます。「いつか使うかもしれない」という安心感のために、今のうちに制度の全体像を知っておくことが、あなたのこれからの生活をずっと楽にしてくれます。一緒に詳しく見ていきましょう。
障害者手帳とは、障害のある方が各種福祉サービスや支援制度を利用するために交付される公的な証明書です。「障害があることを周囲に知らせるもの」ではなく、税金の控除や交通費の割引、障害者雇用枠での就職など、生活のあらゆる場面で実用的なサポートを受けるための「パスポート」のような役割を果たします。
障害者手帳の3種類と対象者の違い
日本の障害者手帳制度は、障害の種類に応じて以下の3種類に分かれています。
- 身体障害者手帳:視覚・聴覚・肢体不自由・内部障害など、身体の機能に永続的な障害がある方が対象
- 精神障害者保健福祉手帳:統合失調症・うつ病・双極性障害・発達障害(ASD・ADHD)・てんかんなど、精神疾患により長期にわたり生活に制約がある方が対象
- 療育手帳:知的障害のある方が対象。自治体によって「愛の手帳」「みどりの手帳」など名称が異なる
3種類の手帳はそれぞれ根拠となる法律や運用の仕組みが異なります。身体障害者手帳は「身体障害者福祉法」、精神障害者保健福祉手帳は「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」に基づいています。療育手帳は法律ではなく厚生労働省の通知をもとに各自治体が独自に運営する制度であるため、判定基準や名称に地域差があるのが特徴です。
どの手帳であっても、取得することで得られる恩恵の基本構造は共通しています。
- 経済的負担の軽減:所得税・住民税の障害者控除、自動車税の減免、医療費の自己負担軽減など
- 社会参加の促進:公共交通機関の運賃割引、映画館・美術館等の入場料割引、携帯電話料金の割引など
- 就労の選択肢の拡大:障害者雇用枠での応募が可能になり、職場での合理的配慮を求めやすくなる
障害者手帳制度の歴史|なぜ3種類に分かれているのか
障害者手帳が3種類に分かれている背景には、制度が誕生した時代の違いがあります。
最初に制度化されたのは「身体障害者手帳」で、1949年(昭和24年)のことです。戦後、戦傷者や労働災害で身体に障害を負った方を救済する必要性から始まりました。次に「療育手帳」が1973年(昭和48年)に厚生省の通知により制度化。そして「精神障害者保健福祉手帳」が創設されたのは1995年(平成7年)で、心の病気を持つ方への公的な手帳制度としてはまだ30年ほどの歴史しかありません。
この時間的なズレは、社会の「障害」に対する認識の変化を反映しています。当初は目に見える身体の障害のみが支援対象でしたが、知的障害、さらには精神障害へと対象が広がり、現在では発達障害(ASD・ADHD等)も精神障害者保健福祉手帳の対象に含まれています。
2006年には国連で「障害者権利条約」が採択されました。「Nothing about us without us(私たちのことを、私たち抜きで決めないで)」というスローガンのもと、障害当事者自身が権利を主張する国際的な潮流が生まれ、日本でも障害者基本法の改正や障害者差別解消法の制定など、国内法の整備が急速に進みました。
2024年4月からは障害者差別解消法の改正により、民間事業者にも合理的配慮の提供が法的義務となっています。手帳の役割は「保護」から「権利の保障」へと大きくシフトしており、障害のある方の社会参加と自立を促進するための実用的なツールとして機能しています。
出典:
障害者手帳は時代とともに進化し続ける制度です。「自分は対象になるのか」「取得する意味はあるのか」と迷っている方は、まず3種類の手帳それぞれの対象者と等級を確認するところから始めてみましょう。
障害者手帳の対象者と取得条件|手帳がなくても申請できるケースとは
障害者手帳を取得するには、障害の種類や程度に関する一定の条件を満たす必要があります。ただし、障害者手帳の有無にかかわらず利用できる支援もあるため、「自分は対象になるのか」を正しく知ることが第一歩です。
身体障害者手帳の対象者と取得条件
身体障害者手帳は、身体障害者福祉法に定められた障害に該当し、その障害が永続するものである場合に交付されます。対象となる障害の範囲は以下の通りです。
- 視覚障害:矯正視力や視野の状態により判定。全盲だけでなく、弱視や視野狭窄も対象
- 聴覚・平衡機能障害:聴力レベル(デシベル)や平衡機能の障害により判定
- 音声・言語・そしゃく機能障害:発声や咀嚼に障害がある場合
- 肢体不自由:上肢・下肢・体幹の機能障害。脳性まひや脊髄損傷なども含む
- 内部障害:心臓、腎臓、呼吸器、膀胱・直腸、小腸、肝臓、免疫(HIV)の機能障害
身体障害者手帳の大きな特徴は、原則として障害が「永続する」ものであることが条件となる点です。一時的な骨折や治療で回復が見込まれるケガは対象外ですが、人工関節や人工透析、ペースメーカーの装着など、医療機器に依存する状態も内部障害として認定されるケースがあります。
精神障害者保健福祉手帳の対象者|発達障害・うつ病でも取得できる?
精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患により長期にわたり日常生活や社会生活に制約がある方を対象としています。取得の前提条件として、初診日から6か月以上が経過していることが必要です。
対象となる主な精神疾患は以下の通りです。
- 統合失調症:幻覚・妄想・思考の混乱などの症状が特徴
- 気分障害:うつ病、双極性障害(躁うつ病)など
- 発達障害:自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)など
- 不安障害・強迫性障害・PTSD:パニック障害、社交不安障害なども含む
- てんかん:発作の頻度や日常生活への影響で判定
- 高次脳機能障害:脳の損傷による記憶障害・注意障害・遂行機能障害など
精神保健福祉士
療育手帳の対象者と判定基準|IQだけでは決まらない理由
療育手帳は、知的障害のある方を対象とした手帳です。厚生労働省の通知に基づき各自治体が独自の基準で運用しているため、名称や判定基準に地域差があります。東京都では「愛の手帳」、埼玉県では「みどりの手帳」と呼ばれるなど、呼称も統一されていません。
一般的に「IQ(知能指数)が概ね70未満」が知的障害の目安とされていますが、これは絶対的な基準ではありません。
- 数値よりも「生活上の困りごと」が重視される:IQが70を超えていても、金銭管理ができない、対人関係でトラブルが絶えないといった「社会生活能力(適応行動)」に大きな課題があれば、対象となるケースがある
- 境界域(グレーゾーン)は自己判断しない:IQが境界線付近にある場合こそ、専門家の判断が分かれやすいため、児童相談所や更生相談所に相談することが重要
障害者手帳は手帳なしでも申請できる?必要書類の現実
「障害者手帳を取得するには障害者手帳が必要」ということはありません。手帳を初めて申請する場合に必要なのは、障害の状態を証明する医師の診断書です。
ただし、ここで注意が必要なのは「誰の診断書でもいいわけではない」という点です。
- 身体障害者手帳:都道府県知事が指定した「指定医」の診断書が必須。かかりつけ医が指定医でない場合、紹介状を書いてもらう必要がある
- 精神障害者保健福祉手帳:精神科の主治医の診断書、または障害年金の年金証書の写しで申請可能
- 療育手帳:医師の診断書に加え、児童相談所(18歳未満)または知的障害者更生相談所(18歳以上)での面接・判定が必要
「自分が対象になるか分からない」という段階でも、市区町村の障害福祉窓口に相談すれば、申請の可否や必要書類について案内を受けられます。電話での事前相談だけでも構いません。
障害者手帳の等級一覧と認定基準|等級によって受けられる支援はどう変わる?
障害者手帳には障害の程度に応じた等級が設定されており、この等級によって受けられるサービスや支援の範囲が変わります。ここでは、身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳それぞれの等級制度と認定基準を解説します。
身体障害者手帳の等級一覧|1級〜6級の判定基準
身体障害者手帳の等級は1級から6級まであり、数字が小さいほど障害の程度が重いことを示します。等級は身体障害者福祉法に基づく「身体障害者障害程度等級表」に定められた基準で判定されます。
| 等級 | 障害の程度 | 代表的な例 |
|---|---|---|
| 1級 | 最重度 | 両眼の視力の和が0.01以下、両上肢の機能を全廃したもの |
| 2級 | 重度 | 両眼の視力の和が0.02以上0.04以下、両耳の聴力レベルが100デシベル以上 |
| 3級 | 中度〜重度 | 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下、一上肢の機能を全廃したもの |
| 4級 | 中度 | 両眼の視力の和が0.09以上0.12以下、両耳の聴力レベルが80デシベル以上 |
| 5級 | 中度〜軽度 | 一下肢の股関節または膝関節の機能の著しい障害 |
| 6級 | 軽度 | 一上肢の親指の機能の著しい障害、一下肢の足関節の機能の著しい障害 |
7級という区分も存在しますが、7級単独では手帳は交付されません。ただし、7級の障害が2つ以上重複する場合は6級以上として認定され、手帳が交付されることがあります。
身体障害者手帳の重要な特徴として、障害が固定された状態で判定されるため、原則として有効期限がなく、更新手続きも不要です。ただし、障害の状態が変化する可能性がある場合(例:人工関節置換術後の再判定など)には、再認定が行われることがあります。
精神障害者保健福祉手帳の等級|1級・2級・3級の違いと生活レベルの目安
精神障害者保健福祉手帳の等級は1級から3級の3段階です。精神疾患の種類や症状の重さだけでなく、「実際にどの程度の支援が必要な生活状態か」という観点で判定されます。
| 等級 | 状態の目安 | 日常生活のイメージ |
|---|---|---|
| 1級(重度) | 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度 | 食事・入浴・着替えなどに常時の援助が必要。家族やヘルパーの付き添いがないと安全な生活が難しい状態 |
| 2級(中度) | 精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、著しい制限を加えることを必要とする程度 | 一人での外出は可能だが、予想外のストレスや環境変化に弱い。定期的な支援や見守りが必要な状態 |
| 3級(軽度) | 精神障害であって、日常生活もしくは社会生活が制限を受けるか、制限を加えることを必要とする程度 | 日常の家事や単純な業務はこなせるが、対人関係や社会生活で大きな負担を感じる。フルタイム勤務が困難な場合も多い |
精神障害者保健福祉手帳の最大の特徴は、2年ごとの更新が必要な点です。精神疾患は症状が変動しやすいため、更新のたびに再判定が行われ、等級が変わる可能性があります。症状が改善すれば等級が下がることもあり、逆に悪化すれば等級が上がることもあります。
精神保健福祉士
療育手帳の等級と判定基準|「A判定」「B判定」の違いと地域差
療育手帳の等級は、国の統一基準がないため自治体によって運用が異なります。基本的には重度の「A」と中・軽度の「B」に分けられますが、「A1・A2」「B1・B2」と細分化している自治体や、数字で表記する自治体もあります。
| 等級 | IQの目安 | 日常生活の状態 |
|---|---|---|
| A(重度) | 概ね35以下 | 常に介護が必要。身体障害を併せ持つ場合や、著しい問題行動がある場合も含む |
| B(中・軽度) | 概ね36〜70程度 | 一定の支援があれば日常生活が可能。日常会話はできるが、複雑な契約や金銭管理には支援が必要 |
判定ではIQ(知能指数)の数値だけでなく、「着替えが一人でできるか」「危険を回避できるか」「買い物ができるか」といった社会生活能力(適応行動)も総合的に評価されます。自治体によっては数年ごとの再判定が設けられているため、お住まいの地域の基準を確認しておくことが大切です。
障害者手帳の等級と障害年金の等級は別物|混同しやすい2つの制度
障害者手帳の等級と障害年金の等級は、よく混同されますが全く別の制度です。
- 障害者手帳の等級:「生活上の困難さ」を基準に判定。福祉サービスや各種割引を受けるための基準
- 障害年金の等級:「労働能力の制限」を基準に判定。年金の支給額を決めるための基準
そのため、障害者手帳を持っていても障害年金が支給されないケースや、逆に手帳がなくても障害年金が受給できるケースがあります。「手帳の等級が〇級だから年金も同じ等級」とはなりません。それぞれ個別に申請し、別々の審査を受ける必要があります。
障害者手帳の申請方法と手続きの流れ|準備から交付までのステップ
障害者手帳の取得を決めたら、次は申請手続きです。手帳の種類によって必要書類や流れが異なるため、自分が申請する手帳のルートを事前に確認しておきましょう。申請から交付までは一般的に1〜2か月(長い場合は3か月程度)かかります。
手帳の種類別|申請ルートと必要書類の違い
| 手帳の種類 | 申請の要点 | 診断書を書く医師 | 更新の有無 |
|---|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 都道府県知事が指定した「指定医」の診断書が必須 | 身体障害者福祉法第15条の指定医 | 原則なし(障害固定のため) |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 初診から6か月以上経過後に申請可能 | 精神科の主治医(または障害年金証書の写しで代替可) | 2年ごとに更新が必要 |
| 療育手帳 | 診断書に加え、児童相談所または更生相談所での面接・判定が必要 | 医師の診断書+専門機関での判定 | 自治体により異なる(再判定あり) |
障害者手帳の申請手順|窓口はどこ?何を持っていく?
申請の基本的な流れは、手帳の種類を問わず以下のステップで進みます。
- 市区町村の障害福祉窓口に事前相談:自分がどの手帳の対象になるか、必要書類は何かを確認する
- 医師の診断書を取得:指定医(身体)や主治医(精神)に、所定の様式で診断書を作成してもらう。診断書の作成費用は自己負担(3,000〜10,000円程度が目安)
- 申請書類を窓口に提出:申請書、診断書、写真(縦4cm×横3cm)、マイナンバーが確認できる書類などを提出
- 審査・判定:提出書類をもとに都道府県(または政令指定都市)で審査が行われる。療育手帳の場合は面接判定も実施
- 手帳の交付:審査の結果、認定されれば手帳が交付される
障害福祉課職員
精神障害者保健福祉手帳の更新手続き|有効期限切れに注意
精神障害者保健福祉手帳は2年ごとの更新が必要です。更新手続きは有効期限の3か月前から可能で、有効期限を過ぎると手帳は失効し、各種サービスが利用できなくなります。更新時にも医師の診断書(または障害年金証書の写し)が必要となるため、期限が近づいたら早めに主治医に相談しておきましょう。
「手続きが面倒」「診断書代がかかる」という声は多いですが、更新を忘れて手帳が失効すると、税金の控除や交通費の割引など受けていた恩恵がすべて一時停止します。スマートフォンのリマインダーなどで有効期限を管理しておくことをお勧めします。
障害者手帳を取得する7つのメリット|税金控除・割引・障害者雇用枠を解説
障害者手帳を取得することで受けられるメリットは多岐にわたります。「手帳を持つかどうか迷っている」という方に向けて、具体的にどのような恩恵があるのかを整理しました。
メリット①:所得税・住民税の障害者控除で税金が安くなる
障害者手帳を持つ方(またはその扶養者)は、確定申告や年末調整で「障害者控除」を受けることができます。控除額は等級によって異なり、所得税では一般障害者で27万円、特別障害者(1級・2級・A判定)で40万円の控除が適用されます。住民税にも同様の控除があり、年間で数万円から十数万円の税負担が軽減されるケースもあります。
このほか、自動車税・軽自動車税の減免、相続税の障害者控除、贈与税の非課税枠(特別障害者の場合6,000万円まで)なども利用可能です。
メリット②:医療費の自己負担が軽減される
精神障害者保健福祉手帳を持つ方は「自立支援医療(精神通院医療)」制度を利用でき、通院にかかる医療費の自己負担が3割から1割に軽減されます。月の自己負担にも上限額が設けられるため、長期的な通院が必要な方にとって大きな経済的メリットとなります。
メリット③:公共交通機関や施設の割引が受けられる
障害者手帳を提示することで、以下のような割引サービスを受けることができます。
- JR・私鉄・バス・タクシーなどの運賃割引(身体・療育手帳が中心。精神障害者保健福祉手帳は鉄道会社により対応が異なる)
- 映画館の入場料割引(多くの映画館で本人と同伴者1名が1,000円)
- 美術館・博物館・動物園などの公共施設の入場料割引または無料
- 携帯電話料金の割引(大手キャリア・格安SIMの一部で月額料金が割引)
- NHK受信料の減免
メリット④:障害者雇用枠での就職が可能になる
障害者手帳を取得すると、企業の「障害者雇用枠」で応募することができるようになります。障害者雇用枠では、障害特性に配慮した業務内容や勤務時間の調整、通院のための休暇取得など、合理的配慮を前提とした就労が可能です。
企業には法定雇用率(民間企業は2.5%、2026年7月から2.7%に引き上げ予定)が課されており、障害者の採用に積極的な企業は増加傾向にあります。一般枠では「配慮をお願いしづらい」と感じていた方にとって、障害者雇用枠は堂々と配慮を求められる環境です。
障害者雇用コンサルタント
メリット⑤:就労移行支援などの福祉サービスが利用しやすくなる
障害者手帳を持つことで、就労移行支援事業所や就労継続支援A型・B型事業所などの障害福祉サービスの利用がスムーズになります。手帳がなくても医師の診断書で利用できるケースはありますが、手帳があれば「障害福祉サービス受給者証」の申請手続きが簡略化されることが多いです。
メリット⑥:各種手当や障害年金の申請で有利になる場合がある
障害者手帳を持っていること自体が障害年金の受給要件ではありませんが、手帳の等級が年金審査の参考資料になることがあります。また、自治体独自の障害者手当(月額数千円〜数万円)が支給される場合もあります。
メリット⑦:生活保護の障害者加算が受けられる
生活保護を受給している方が障害者手帳を取得すると、「障害者加算」として保護費が上乗せされます。身体障害者手帳1〜3級、精神障害者保健福祉手帳1〜2級などが対象で、月額15,000円〜27,000円程度(地域による)が加算されます。
これらのメリットは手帳を「持っているだけ」で自動的に適用されるものではなく、それぞれ個別に申請や提示が必要です。取得後は、自分が利用できる制度を一つずつ確認し、使えるものは積極的に活用していきましょう。
障害者手帳のデメリットと取得をためらう方への回答
障害者手帳の取得には多くのメリットがありますが、「取得をためらう気持ち」も自然なことです。ここでは、取得前に感じやすい不安や懸念について、事実に基づいて回答します。
デメリット①:「障害者」というラベルへの心理的抵抗
手帳取得を迷う方が最も多く挙げる理由が、「自分が障害者であることを認めなければならない」という心理的な壁です。
しかし、障害とは個人の欠陥ではなく、「あなたの特性」と「社会の環境」がたまたま噛み合っていない状態を指す言葉にすぎません。手帳は、そのミスマッチを調整するための「道具」です。眼鏡や松葉杖と同じように、生活をスムーズにするための補助ツールとして捉えてみてください。
取得したからといって、周囲に公表する義務は一切ありません。誰にも言わずに机の奥にしまっておき、必要な場面でだけ使うことも自由です。
デメリット②:プライバシーが漏れる心配
「手帳を取得したことが会社や周囲にバレるのでは?」という不安もよく聞かれます。結論から言えば、障害者手帳の取得情報は厳重に管理されており、本人の同意なく第三者に開示されることはありません。
- 手帳を提示するかどうかは完全に本人の判断
- 精神障害者保健福祉手帳は表面に「障害者手帳」とだけ記載され、精神障害であることは外見上分からない
- 会社に障害者雇用枠で入社する場合を除き、手帳の有無を職場に伝える法的義務はない
デメリット③:就職・転職に不利になるのでは?
障害者手帳を取得しても、一般枠での応募は引き続き可能です。手帳を持っているからといって「障害者雇用でしか働けない」ということはなく、開示するかどうかは本人の選択です。むしろ、手帳があれば一般枠と障害者雇用枠の両方に応募できるため、選択肢が増えると言えます。
デメリット④:更新手続きの負担(精神障害者保健福祉手帳の場合)
精神障害者保健福祉手帳は2年ごとの更新が必要で、その都度医師の診断書を取得しなければなりません。診断書の作成費用(3,000〜10,000円程度)と通院の手間が定期的に発生する点は、負担に感じる方もいます。ただし、この更新制度があるおかげで、症状が改善した場合は等級が下がり、最終的に手帳が不要になるという前向きな側面もあります。
手帳の取得は、あなたの人生を縛るものではなく、「使いたい時に使い、不要になればやめられる」柔軟な制度です。デメリットを正しく理解した上で、メリットと天秤にかけて判断してください。
障害者手帳なしでも利用できる支援制度・相談窓口まとめ
「手帳の取得を迷っている」「まだ手帳が手元にない」という段階でも、利用できる支援制度や相談窓口は複数あります。医師の診断書があれば利用可能なサービスも多いため、手帳の有無にかかわらず、まずは相談することが大切です。
手帳なしで相談できる窓口一覧
| 相談したい内容 | おすすめの窓口 | 手帳の要否 |
|---|---|---|
| 生活全般・制度の案内 | 基幹相談支援センター:地域の相談窓口のまとめ役。「どこに相談すればいいか分からない」時の入口 | 不要 |
| 心の健康・精神疾患 | 精神保健福祉センター・保健所:メンタルヘルスの相談窓口。家族からの相談も可能 | 不要 |
| 発達の悩み | 発達障害者支援センター:診断前の「なんとなく生きづらい」という段階から相談可能 | 不要 |
| 就職・仕事の相談 | ハローワーク(障害者専門窓口):診断書があれば相談可能な場合がある | 不要(診断書が望ましい) |
| 若者の就労支援 | 地域若者サポートステーション:15〜49歳で就業・就学していない方が対象。障害の有無は問わない | 不要 |
手帳なしで利用できる医療・経済的支援
- 自立支援医療(精神通院医療):精神疾患で通院している方であれば、障害者手帳がなくても申請可能。医療費の自己負担が3割から1割に軽減される
- 障害年金:障害者手帳がなくても、初診日の証明と医師の診断書があれば申請可能。手帳の等級とは別の基準で審査される
- 傷病手当金:健康保険の被保険者が病気やケガで働けない場合に、最長1年6か月間支給される
手帳なしで利用できる就労支援サービス
- 就労移行支援事業所:医師の診断書があれば「障害福祉サービス受給者証」を取得して利用できるケースがある。手帳なしで利用している方も多い
- リワーク支援:うつ病などで休職中の方が復職を目指すプログラム。医療機関や地域の障害者職業センターが実施
- ジョブコーチ支援:職場に専門家が訪問して、障害のある方の職場適応をサポートする制度。条件を満たせば診断書のみで利用可能な場合がある
相談支援専門員
手帳の取得を検討している段階でも、これらの支援制度を先に活用することで生活や就労の安定を図ることができます。「手帳を取るかどうか」は、支援を受けながらゆっくり考えても遅くありません。
まとめ:障害者手帳は「守り」ではなく「攻め」のツール
障害者手帳は、「障害者」というレッテルを貼るためのものではありません。税金の控除、交通費の割引、障害者雇用枠での就職、福祉サービスの利用――これらの具体的なメリットを通じて、あなたの生活の選択肢を広げるための実用的なツールです。
制度は複雑で、手帳・障害年金・医療助成・就労支援など、パズルのように組み合わせて使う必要があります。しかし、それらを全て一人で勉強する必要はありません。分からないことは、市区町村の窓口や相談員に「私にはどんな支援が使えますか?」と聞いてしまって構いません。
障害者支援専門家
障害者手帳は、あなたが社会の中で自分らしく生きていくための「権利証」です。使えるサポートはすべて活用し、あなたの人生の可能性を広げるために役立ててください。

