お役立ちコラム

法律・制度

障害者雇用とは?法定雇用率・一般雇用との違い・働く側と企業側双方のリアルを解説

障害者雇用とは?法定雇用率・一般雇用との違い・働く側と企業側双方のリアルを解説

著者: フラカラ編集部

このコラムのまとめ

障害者雇用の仕組みを法定雇用率や一般雇用との比較、メリット・デメリットの両面から解説。精神・発達・身体障害の当事者の体験談や、企業が雇用を進める具体的ステップ、2026年7月の制度改正情報まで、求職者にも採用担当者にも役立つ情報を網羅しています。

そもそも障害者雇用とは何か──制度の骨格を押さえる

「障害者雇用」と聞くと、特別な枠組みを想像するかもしれません。しかし実態は、障害のある人が自分の特性に合った条件で企業や自治体に雇用される仕組みであり、根拠法は「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」です。単なる福祉ではなく、労働市場の多様性を担保するための法的フレームワークとして位置づけられています。

障害者雇用の定義──一般雇用と何が違うのか

障害者雇用とは、障害のある人が「障害者雇用枠」という別枠で採用される雇用形態を指します。採用段階から障害の内容を企業に伝えるため、入社後に業務量や勤務時間、作業環境などの調整──いわゆる「合理的配慮」──を受けやすくなる点が最大の特徴です。

一般雇用との決定的な違いは、この「配慮を前提とした雇用契約」にあります。一般雇用では、本人が障害を開示するかどうかは任意であり、開示しなければ配慮を受けにくい構造になっています。障害者雇用枠では最初から特性が共有されるため、ミスマッチが起きにくく、結果として職場定着率が高くなる傾向があります。

対象になるのは誰か──3種類の障害者手帳

障害者雇用枠に応募するには、原則として障害者手帳の所持が条件です。手帳には以下の3種類があります。

  • 身体障害者手帳:視覚・聴覚・肢体不自由など、身体機能に一定以上の制限がある方に交付
  • 療育手帳:知的障害のある方に交付(自治体によって名称が異なる場合あり)
  • 精神障害者保健福祉手帳:うつ病、統合失調症、発達障害など精神疾患のある方に交付

手帳を持っていても、障害者雇用枠だけに限定されるわけではありません。一般雇用枠への応募も可能で、自分の特性や希望する働き方に応じて使い分けることができます。

障害者雇用促進法の中核──法定雇用率と納付金制度

障害者雇用促進法は、企業に対して「一定割合以上の障害者を雇用する義務」を課しています。この割合が「法定雇用率」です。

法定雇用率の現状と今後

2026年3月時点の法定雇用率は以下のとおりです。

事業主区分2024年4月〜2026年7月〜
民間企業2.5%2.7%
国・地方公共団体等2.8%3.0%
都道府県等の教育委員会2.7%2.9%

常用労働者40人以上の企業には障害者を1人以上雇用する義務がありますが、2026年7月の引き上げ後は37.5人以上の企業にまで対象が広がります。中小企業にとっても「うちは関係ない」とは言えなくなる規模感です。

達成できないとどうなる?──納付金制度の仕組み

法定雇用率を満たせない企業(常用労働者100人超)には、不足1人につき月額5万円の納付金が課されます。徴収された納付金は、法定雇用率を上回って雇用する企業への調整金として還元される仕組みです。つまり、障害者を多く雇用する企業は経済的メリットも得られるということです。

このほか、障害者雇用促進法は差別禁止や合理的配慮の提供義務も定めています。合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と同等に働けるよう、個別に行う環境調整や支援のこと。2024年4月からは民間事業者にも義務化されており、「特別扱い」ではなく「当然の対応」として社会に定着しつつあります。

出典:

障害者雇用と一般雇用──数字で見る「定着率」の差

障害のある方の働き方は、大きく「一般雇用」「障害者雇用」「特例子会社」の3つに分かれます。それぞれの特徴を理解しておくと、自分に合った選択がしやすくなります。

一般雇用:選択肢は広いが、孤立しやすい

一般雇用は障害者手帳の有無を問わず応募できる求人です。職種の幅が広く、給与水準も比較的高い反面、障害を開示しなければ配慮を得にくいというジレンマがあります。

  • 求人数の多さ:障害者雇用枠の数十倍にのぼり、職種の選択肢が格段に広い
  • 開示・非開示の自由:クローズ(非開示)で働く選択もできるが、困ったときに助けを求めにくい
  • 給与・昇進:障害者雇用に比べ水準が高い傾向がある一方、成果へのプレッシャーも大きい

障害者職業総合センターの調査では、一般雇用で就職した場合の1年後の職場定着率は、障害を開示した場合で49.9%、非開示では30.8%にとどまります。つまり、非開示の場合は約7割が1年以内に離職しているという現実があります。

出典:

障害者雇用:定着率70.4%の背景にあるもの

障害者雇用枠は、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれかを持つ方が対象です。入社時点で障害特性が共有されるため、企業側が勤務条件や業務内容を調整しやすく、1年後の職場定着率は70.4%と一般雇用を大きく上回ります。

  • 配慮が前提:通院日の確保、業務量の調整、感覚過敏への対応など、個別の相談がしやすい
  • 相談体制の厚さ:社内の障害者職業生活相談員や、外部のジョブコーチとの連携がある職場も多い
  • 短時間勤務の選択肢:2024年4月から週10〜20時間未満の短時間労働者も雇用率算定の対象(0.5人カウント)に

一方、給与面では一般雇用との差が無視できません。令和5年度の障害者雇用実態調査によると、障害種別ごとの平均月額賃金は以下のとおりです。

障害の種類平均月額賃金(令和5年調査)
身体障害者約23万5,000円
知的障害者約13万7,000円
精神障害者約14万9,000円
一般雇用(参考)約31万8,300円

身体障害者を除くと、一般雇用の半分以下にとどまるケースも少なくありません。「配慮を取るか、収入を取るか」──この二択で悩む当事者は今なお多く、制度設計の課題として議論が続いています。

出典:

特例子会社という「第三の選択肢」

特例子会社とは、親会社が障害者雇用の促進を目的に設立した子会社です。特例子会社での雇用人数は親会社の雇用率に合算できるため、大企業グループを中心に設立が進んでいます。2025年6月時点で全国に631社が存在します。

  • 手厚い支援体制:障害特性に精通したスタッフが常駐し、日常的なフォローがある
  • 安定した雇用基盤:親会社が大企業であるケースが多く、経営基盤が比較的安定
  • 仲間の存在:障害のある社員が多数在籍しており、悩みを共有しやすい環境

ただし、特例子会社は都市部に集中しており、地方では選択肢がほとんどない地域もあります。業務内容や待遇も企業ごとに差が大きいため、見学や実習を通じて自分の目で確かめることが欠かせません。

出典:

「一般雇用でチャレンジすべきか、それとも障害者雇用枠を選ぶべきか」。多くの当事者の方が、この選択肢の間で悩み、立ち止まってしまいます。どちらが「正解」ということはありません。大切なのは、あなたの今の特性、キャリアの目的、そして「何を最も大切にして働きたいか」という価値観に照らし合わせて、自分に合った枠組みを選ぶことです。
無理をして一般枠で消耗するよりも、支援の整った枠で実力を発揮する方が、結果としてキャリアが安定することもあります。それぞれの雇用の仕組みと特徴を整理して、自分らしい働き方の選択肢を広げていきましょう。

障害者が働き続けるための3つの雇用形態比較

障害者雇用のメリットとデメリット──当事者と企業、それぞれの視点

障害者雇用という働き方を選ぶかどうかは、メリットだけでなくデメリットも含めて判断したいところです。ここでは当事者側・企業側の双方から、見落とされがちな論点も含めて整理します。

当事者にとってのメリット──「安心して失敗できる環境」の価値

障害者雇用の最も大きな恩恵は、「特性を隠さなくていい」という心理的安全性です。クローズ就労で常に神経を張り詰めていた方が、障害者雇用に切り替えたことで症状が安定したというケースは珍しくありません。

  • 配慮を「交渉」ではなく「前提」にできる:通院や休憩、業務調整について遠慮なく相談できる
  • 定着率の高さが示す安心感:1年後の定着率70.4%は、障害を開示した一般雇用(49.9%)を約20ポイント上回る
  • 外部支援との連携:ジョブコーチや就業・生活支援センターなど、職場外のサポート資源を活用しやすい

うつ病と自閉スペクトラム症を持つNさんは、障害者雇用で事務職に就いて6年目。「自分用のマニュアルを作る時間をもらえたこと、聴覚過敏で耳栓を使えること──小さな配慮の積み重ねが、安心して働ける土台になっています」と話します。

当事者が感じるデメリット──給与差とキャリアの天井

一方で、障害者雇用には構造的な課題も残っています。

  • 求人数の壁:一般雇用と比較すると求人数は限られ、地方ではさらに選択肢が狭まる
  • 業務範囲の制限:「配慮」が「過度な業務制限」になり、スキルを発揮しきれないケースもある
  • 給与水準:精神障害者の平均月額賃金は約14万9,000円と、一般雇用の半分以下の水準
  • キャリアアップの停滞:昇進ルートが不明確な企業が多く、「ずっと同じ仕事」という閉塞感を抱える人もいる

これらのデメリットは企業によって大きく異なります。応募前に障害者雇用の実績年数や定着率、過去の昇進事例などを確認しておくと、入社後のギャップを減らせます。

企業にとってのメリット──法令遵守の先にある「組織力の強化」

障害者雇用は法定雇用率を満たすための施策と捉えられがちですが、実際には組織全体にポジティブな波及効果をもたらすことがあります。

  • 業務プロセスの可視化:障害のある社員向けにマニュアルを整備した結果、新人研修のクオリティが上がったという企業は少なくない
  • 多様性の実践:障害のある社員の存在が、チーム内の「困ったら声を上げる文化」を醸成する
  • 助成金・税制優遇:特定求職者雇用開発助成金やトライアル雇用助成金など、複数の経済的支援が活用できる

ある製造業の人事部長は「障害者雇用のために業務を細分化したことで、他の従業員の仕事も整理され、部門全体の生産性が上がった」と振り返ります。

企業側が直面する課題と、その打開策

とはいえ、障害者雇用を軌道に乗せるまでには壁もあります。多くの企業がつまずくポイントと、それぞれの打開策を押さえておきましょう。

  • 「適した業務がない」という思い込み

    課題:既存の業務をそのまま割り当てようとして行き詰まる

    打開策:業務の棚卸しを行い、各部署の「誰かがやっているけど本来その人の仕事ではない作業」を洗い出す。地域障害者職業センターに相談すれば、業務切り出しの支援を受けられる

  • 社内の理解不足

    課題:「特別扱い」への反発や、接し方がわからない不安

    打開策:厚生労働省の「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」(無料・オンライン対応あり)を全社的に受講する動きが広がっている

  • 採用後の定着支援の不足

    課題:「採用して終わり」になり、フォロー不足で早期離職につながる

    打開策:入社後3ヶ月・6ヶ月・1年の節目で定期面談を設定し、ジョブコーチ支援を併用する

障害者雇用を「コスト」ではなく「投資」として設計できるかどうかが、企業にとっての分岐点になります。

当事者の声──障害者雇用で働く3人のリアル

制度の説明だけでは見えてこない「実際の働き心地」を、異なる障害特性を持つ3人の事例から紹介します。

精神障害:うつ病×自閉スペクトラム症のNさん(事務職・勤続6年)

福祉系の職場を転々とした後、障害者雇用で事務職に就いたNさん。現在は勤続6年目を迎えています。

  • 業務のルーティン化:自分用のマニュアルを作成する時間を確保してもらっている
  • 感覚過敏への配慮:聴覚過敏のため、耳栓の使用が許可されている
  • 定期面談:月1回、上司と30分の面談時間を設け、困りごとを早めに共有

Nさんは「一番ありがたかったのは、『耳栓していいよ』と言われたとき。小さなことだけど、それだけで1日の疲労が全然違う」と話してくれました。

発達障害:複数指示で混乱しやすいBさん(事務職)

発達障害の診断を受けた後、障害者雇用枠で就職したBさん。以前は複数の指示が飛び交う職場で自信を失っていました。

  • 指示系統の一本化:指示を出す人を一人に固定し、質問もその人に集約
  • 業務の可視化:TODOリストで優先順位を明確にし、終わったものからチェック
  • 作業環境の調整:パーテーションで区切った静かなスペースを確保

「何をすべきかが一目でわかるようになって、ミスが激減しました。以前は毎日が綱渡りでしたが、今は自分のペースで確実に進められる安心感があります」とBさん。

身体障害:車いすユーザーのKさん(事務職)

リハビリを経て障害者雇用で復職したKさんは、物理的な環境整備が働きやすさに直結した事例です。

  • バリアフリー環境:スロープと自動ドアの設置
  • デスクの高さ調整:車いすのまま作業できるよう、昇降式デスクを導入
  • 通勤配慮:フレックスタイム制で朝のラッシュを回避

「通勤ラッシュを避けられるだけで、出社前に体力を消耗しなくなった。そのぶん仕事に集中できるようになりました」とKさんは語ります。

3人に共通するのは、「大がかりな設備投資」よりも「日常の小さな調整」が職場定着の鍵になっているという点です。企業側にとっても、過度な負担をかけずに実行できる配慮は多くあります。

障害者雇用で働くための具体的な方法と支援制度

「障害者雇用で働きたい」と思ったとき、最初の一歩をどこに踏み出せばいいのか。利用できる支援機関とサービスを、アクションの順番に沿って整理します。

ハローワーク──最も身近な「障害者専門窓口」

全国のハローワークには障害者専門の相談窓口があり、利用は無料です。障害者職業相談員が常駐しており、障害特性に応じた求人紹介や職業適性検査を受けられます。

  • 障害者求人の閲覧・紹介:ハローワークインターネットサービスでも検索可能
  • 障害者就職面接会:複数企業と一度に面接できるイベントを定期開催
  • トライアル雇用の紹介:原則3ヶ月の試行雇用を経て正式採用につなげる制度

地域障害者職業センター──「働く力」を客観的に測る

全47都道府県に設置されている専門機関で、職業評価(作業検査・適性検査)や職業準備支援を提供しています。「自分にどんな仕事が合うかわからない」という段階で特に頼りになる存在です。

  • 職業評価:作業スピードや集中力、対人スキルなどを客観的に測定
  • 職業準備支援:生活リズムの安定やビジネスマナーの習得をサポート
  • ジョブコーチ支援:就職後に職場へ出向き、業務の進め方や環境調整を直接支援

就労移行支援事業所──最大2年間の「就職準備プログラム」

一般企業への就職を目指す障害のある方向けの福祉サービスで、障害福祉サービス受給者証があれば利用できます。パソコン操作やビジネスマナーの訓練だけでなく、協力企業での実習や面接対策、就職後の定着フォローまで一貫して支援してくれます。

  • 利用期間:原則最大2年間
  • 費用:9割以上の利用者が自己負担なし(世帯収入による)
  • 就職後のフォロー:定着支援として最大3年間のアフターケアあり

障害者雇用専門の求人サイト──自宅から情報収集

対面相談と並行して、オンラインでの情報収集も有効です。障害者雇用に特化した求人サイトでは、配慮内容や職場環境の情報が詳しく掲載されていることが多く、自分のペースで比較検討できます。

  • dodaチャレンジ(パーソルチャレンジ運営)
  • atGP(ゼネラルパートナーズ運営)
  • LITALICO仕事ナビ(LITALICOワークス運営)
  • ハローワークインターネットサービス(厚生労働省運営)

支援機関を利用することに抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、これらのサービスは「使ったほうが有利」になるよう設計されています。一人で求人を探すよりも、企業の内情や配慮の実態を把握した担当者の情報を活かすほうが、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。

企業が障害者雇用を進めるための4ステップ

障害者雇用をこれから始める企業、あるいは雇用率の達成に苦戦している企業に向けて、実務的な手順を4つのステップに整理します。

ステップ1:社内理解の促進と受け入れ態勢の構築

トップダウンで基本方針を示すことが出発点です。経営層が「なぜ障害者雇用に取り組むのか」を明確に語れなければ、現場の理解は進みません。

  • 障害理解研修の実施:厚生労働省の養成講座や、地域障害者職業センターの出前講座を活用
  • 障害者職業生活相談員の選任:5人以上の障害者を雇用する事業所では法的義務。それ以下でも早期に配置すると現場の安心感が段違い
  • 外部支援機関との連携構築:ハローワークや障害者就業・生活支援センターとの関係づくりを採用前から始める

ステップ2:業務の切り出しと職域開発

「障害者に任せる仕事がない」という声はよく聞きますが、多くの場合、業務を細分化しきれていないだけです。

  • 業務棚卸し:各部署で「本来の担当者でなくてもできる作業」を洗い出す
  • 障害特性との照合:反復作業が得意な方、データ入力の正確性が高い方など、特性に合う業務を紐づける
  • マニュアル整備:写真や図解を多用した視覚的な手順書を作成。これが後に新人研修にも転用できる

ステップ3:採用活動と面接時の配慮

障害者雇用の採用活動では、求人票の書き方から面接の進め方まで、一般採用とは異なる配慮が必要です。

  • 求人票:業務内容、配慮の具体例、勤務時間の柔軟性を明記する
  • 採用チャネル:ハローワーク、障害者就職面接会、就労移行支援事業所との連携
  • 面接時の配慮:筆記試験の代替手段、面接時間の延長、手話通訳の手配など
  • 職場実習:採用前に1〜2週間の実習を実施し、双方の適性を確認する

ステップ4:職場定着支援──「採用して終わり」にしない

障害者雇用における最大の課題は採用ではなく定着です。入社後のフォロー体制が職場定着率を左右します。

  • 定期面談:入社1ヶ月目は週1回、その後は月1回のペースで上司または相談員が面談
  • ジョブコーチ支援の活用:地域障害者職業センターから派遣されるジョブコーチが、職場に出向いて具体的な課題解決を支援
  • 業務調整の柔軟性:体調の波や季節変動に合わせ、業務量やスケジュールを適宜見直す

この4ステップは一度完了すれば終わりではなく、運用しながら改善を重ねるサイクルです。最初から完璧を目指すのではなく、「まず1人の雇用を成功させる」ことに集中するほうが、結果的に組織全体の理解が進みます。

2026年7月改正を控えた障害者雇用の最新動向

障害者雇用を取り巻く環境は年々変化しています。特に2026年7月に控える法定雇用率の引き上げは、中小企業を含む幅広い事業者に影響を及ぼします。

法定雇用率2.7%時代──対象企業の拡大

2026年7月から民間企業の法定雇用率は2.5%から2.7%に引き上げられます。これに伴い、雇用義務の対象企業も常用労働者40人以上から37.5人以上に拡大。従業員38人の小規模事業者にも、障害者を1人以上雇用する義務が生じます。

事業主区分〜2026年6月2026年7月〜
民間企業2.5%2.7%
国・地方公共団体等2.8%3.0%
都道府県等の教育委員会2.7%2.9%

また、2024年4月から導入された「週10〜20時間未満の短時間労働者の0.5人カウント」は、精神障害者・重度身体障害者・重度知的障害者が対象です。短時間からスタートしたい当事者にとっても、段階的な就労がしやすい環境が整いつつあります。

精神障害者の雇用が急増──前年比11.8%増の背景

厚生労働省の「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業で雇用されている精神障害者は約16.8万人に達し、前年比11.8%増と3種別の中で最も伸び率が高い状況です。

この急増を支えているのが、精神障害者雇用トータルサポーターの配置や、精神・発達障害者しごとサポーター養成講座の全国展開です。加えて、週20〜30時間未満の短時間労働者を1カウントとする精神障害者に対する特例措置も当面の間延長されており、「短時間×配慮つき」という働き方の選択肢が広がっています。

出典:

テレワーク・ハイブリッド勤務が変える障害者雇用の地図

コロナ禍で急速に普及したテレワークは、障害者雇用の可能性を大きく広げました。通勤による身体的負担がなくなり、自宅の慣れた環境で作業できることは、身体障害だけでなく精神・発達障害のある方にとっても大きなアドバンテージです。

  • 通勤負担ゼロ:疲労が蓄積しやすい方や、車いすユーザーにとって通勤そのものが障壁だった
  • 感覚刺激のコントロール:オフィスの騒音や照明が苦手な方も、自宅なら環境を最適化できる
  • 地方在住者への機会拡大:都市部の企業にリモートで就職するケースが増加中

一方で、テレワーク特有の課題もあります。コミュニケーションが文字中心になることで意図の齟齬が生じやすい、孤立感を感じるなど、メンタルヘルス面のケアが欠かせません。そのため、出社とリモートを組み合わせた「ハイブリッド勤務」や、自宅近くのサテライトオフィスを利用する形態を採用する企業も増えています。

音声認識ソフトや視線入力装置などの支援技術も年々進化しており、これまで就労が難しかった重度障害のある方にとっても、働く選択肢が広がり始めています。

まとめ──障害者雇用は「特別な制度」ではなく「働き方の選択肢」

障害者雇用は、障害のある方にとっては「自分の特性を隠さず、配慮を前提に働ける環境」であり、企業にとっては「多様な視点を取り込み、業務プロセスを改善するきっかけ」になり得ます。

制度面では、2026年7月の法定雇用率引き上げや短時間労働者のカウント対象拡大など、障害のある方が働きやすい方向への改正が続いています。テレワークの普及やICT技術の進化も追い風です。

ただし、制度がどれだけ整っても、最終的にモノを言うのは「現場の理解」と「日々の小さな調整」です。障害のある方自身が支援機関を上手に活用し、企業側も受け入れ態勢を一歩ずつ整えていく──その地道な積み重ねが、「共に働く」を当たり前にしていく土台になります。