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算数障害(ディスカリキュリア)とは?大人の診断テスト・チェック方法を解説

算数障害(ディスカリキュリア)とは?大人の診断テスト・チェック方法を解説

著者: フラカラ編集部

監修: 中村 啓吾

このコラムのまとめ

算数障害(ディスカリキュリア)は大人になってからでも診断を受けられます。数や計算の困りごとを確かめるセルフチェック項目、DSM-5-TRの診断基準とWAIS-Ⅳなどの検査内容、受診できる医療機関や相談窓口、診断後に使える配慮と支援機関までまとめました。

算数障害(ディスカリキュリア)とは?

「電卓なしでは簡単な計算もできない」「割り勘の金額がとっさに出てこない」——子どもの頃から続くこうした困りごとの背景には、算数障害(ディスカリキュリア)がある場合があります。

限局性学習症(SLD)/学習障害(LD)の一つとしての算数障害

算数障害は単独の障害名ではなく、学習障害(LD)の一タイプです。学習障害とは、全般的な知的発達に遅れはないものの、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す状態で、中枢神経系の機能障害が推定されています。

診断名としては、DSM-5以降「限局性学習症(SLD)」が用いられ、算数障害はそのうち算数の困難を伴うものにあたります。旧来の「学習障害(LD)」という呼び方も広く使われていますが、指す状態は同じです。

読字障害(ディスレクシア)・書字表出障害(ディスグラフィア)との違い

学習障害は、困難が現れる領域によって次の3つに分けられます。

タイプ 困難な領域 大人での現れ方
読字障害 読む・読解する 資料や長文メールの読解に時間がかかる
書字表出障害 書く メモや文書の作成が難しい
算数障害 数の概念・計算・推論 金額や時間の計算・見積もりが難しい

境界は明確ではなく、算数障害だけが単独で現れる人も、読み書きの困難と重なる人もいます。

「算数が苦手」との違いはどこにあるのか

単なる不得意との違いは、困難の程度・持続期間・生活への支障の大きさにあります。

  • 努力してきたにもかかわらず改善しない
  • 年齢や受けた教育から期待される水準を著しく下回る
  • 仕事や家計管理に実際の支障が出ている
  • 知的発達の遅れや学習機会の不足では説明できない

DSM-5では困難が6か月以上続くことが目安とされ、子どもの頃から一貫している点が前提です。当てはまっても自己判断はせず、医療機関の判断に委ねましょう。

算数障害の原因と、大人になってから気づかれやすい理由

原因は解明されていませんが、脳機能の一部の特性が関わると考えられており、本人の努力不足ではありません。大人になって気づかれる理由は主に次の3点です。

  1. 読み書き計算は就学後に学ぶため、発見が遅れやすい
  2. 単なる苦手分野と判断されてきた
  3. 学習障害の認知度が低い時代があった

学習障害は生まれつきの特性であり、大人になってから発症することはありません。

大人の診断は「新たな発症」ではなく、これまで気づかれなかった困難に説明がつくということです。

精神科医

大人の算数障害(ディスカリキュリア)に見られる特徴・症状

現れ方は領域ごとに異なり、以下のすべてが当てはまる必要はありません。

大人の算数障害3つの困りごと

数の大小や量の感覚(数感覚)をつかみにくい

算数障害の根底にあるのは、数がどれくらいの量を表すかを直感的に把握しにくいという特性です。

  • 概算や「だいたいこのくらい」の見当がつけられない
  • 単位の換算に迷う(1メートルと100センチが結びつかない)
  • 言葉を数字に直すときに桁がずれる
  • グラフや図表から量の差や傾向が読み取れない

視覚認知の面でも、数字を揃えて書く・桁のバランスを取ることが苦手なため、筆算の桁ずれや表計算ソフトのセルの入力間違いが起こりやすくなります。

暗算・筆算・繰り上がりなど計算につまずく

大人でも一桁の暗算が難しい場合があり、頭の中で数を保持しながら操作することに大きな負荷がかかります。

場面 起こりやすいこと
繰り上がり・繰り下がり 桁をまたぐ処理が抜け、答えが大きくずれる
暗算 途中の数を保持できず、やり直しになる
文章形式の課題 足すのか引くのか、演算の選択ができない

「6」と「9」の取り違え、図形や展開図の理解の難しさも含まれます。

時間の見積もりやスケジュール管理が苦手

時計が読みにくい、残り時間を計算できないといった困難が大人になっても残ることがあります。

  1. 所要時間を過小に見積もり、間に合わなくなる
  2. 「9時集合なら何時に出るか」の逆算ができない
  3. 締め切りまでの作業配分が組み立てられない

「計画性がない」と受け取られやすい領域ですが、タイマーやカレンダーアプリで感覚に頼らない仕組みに置き換えると負担が減ります。

お金の計算・家計管理でミスが起きやすい

お釣りや割り勘の計算は日常的につまずく場面です。家計面では次の困りごとが生じます。

  • レシートを合算して支出を把握できない
  • 割引率や還元率が実際にいくら得か判断できない
  • 口座残高と引き落とし予定を突き合わせられない

割合や利率の理解が難しいと不利な契約を選ぶリスクがあるため、契約前に第三者の確認を入れることが現実的な対策になります。

仕事で起こりやすい困りごと(見積書・在庫管理・売上集計など)

正確さと速さを同時に求められる職場では負荷が高まり、相談に至るきっかけになりやすい領域です。

業務 困りごと 工夫
見積書・発注書 概算が立てられず数量や金額を誤る 関数入りテンプレートを使う
在庫管理・棚卸 数える途中で見失う カウンターアプリを使う
売上集計 合算・比較でミスが出る 集計を自動化する

数字を扱う職種は負担が大きい一方、業務分担やツールの調整で働き続けられる例も多くあります。

集計フォーマットを関数入りに変えてもらったら、同じ仕事が半分の時間で片づきました。

算数障害の診断を受けた当事者

【セルフチェック】大人の算数障害チェックリスト

ここでは症状そのものではなく、困難が生活にどう影響し、どう対処してきたかという視点で確認します。受診時のメモとしても使えます。

日常生活に関するチェック項目

確認の軸は、子どもの頃から続いているかと数字を扱う場面を避けていないかです。

  • 努力しても算数の成績が上がらないままだった
  • 他の教科は人並みだったのに算数・数学だけ極端に低かった
  • 通知表に「計算に時間がかかる」などの記載が残っている
  • 買い物や食事で、金額を扱う役割を避けている
  • 人前でその場で計算する状況に強い緊張を感じる
  • 家族や友人に計算や手続きを任せることが習慣になっている
  • レシピの分量変更やDIYの寸法計算でつまずく

「おおざっぱ」「計画性がない」という評価を長年受けてきた場合、その背景に数や量の処理のつまずきが隠れている可能性があります。当時の記憶があいまいなら、家族に尋ねる・通知表を確認するといった方法が役立ちます。

仕事・数字の扱いに関するチェック項目

職場では、自分の行動パターンに注目してみてください。

  • 数字が絡む仕事だけ他の人の何倍も時間がかかる
  • 何度見直しても同じ箇所を間違える
  • 電卓で出した答えが正しいか自分で判断できない
  • 数字を扱う担当や異動を理由をつけて回避してきた
  • 口頭で伝えられた数値を記録できず聞き返すことが多い
  • 数字のミスをきっかけに転職を考えたことがある

注目したいのはミスの質です。不注意によるミスは疲れているときに偏りますが、算数障害による困難は体調が良く時間に余裕があっても同じつまずきが繰り返されます。

チェック結果の見方と、当てはまった場合の考え方

「何個以上なら該当」という基準はありません。判断の軸は困難の持続期間と支障の大きさです。

状況 次のステップ
少数で生活に支障がない ツールで補いながら様子を見る
複数当てはまるが工夫で対処できている 今の工夫を記録し、崩れたら相談
複数当てはまり支障が出ている 医療機関や相談窓口に連絡
気分の落ち込みや不眠もある 早めに医療機関を受診

印を付けた項目に「いつから」「どんな場面で」を添えて書き出せば、そのまま相談材料になります。

セルフチェックだけで判断してはいけない理由

同じ「数字の困難」でも、背景には複数の可能性があり自己判断では区別できません。

  1. 注意の持続の問題:計算ミスの増加が別の特性由来である場合
  2. 不安や緊張:苦手意識から本来できる計算も止まる場合
  3. 読みの困難:文章題の意味が取れないのが読解由来の場合
  4. 心身の不調:疲労や気分の落ち込みで処理能力が一時的に下がっている場合

逆に当てはまらなくても、支障があるなら相談して構いません。

当てはまる項目に日付や具体例を添えて持ってきていただけると、検査の組み立てがしやすくなります。

臨床心理士

算数障害の診断基準と、大人が受ける診断テスト・検査の種類

診断は一つの検査で決まるものではなく、問診と複数の検査結果をもとに医師が総合的に判断します。

DSM-5-TRにおける限局性学習症の診断基準

DSM-5-TRでは算数障害は限局性学習症のうち算数の困難を伴うものとされ、大人と子どもで基準は共通です。おおむね次の4点がすべて満たされる必要があります。

  1. 支援を受けても計算などの技能の習得と使用に困難が続いている
  2. 年齢から期待される水準を著しく下回り、職業や日常生活に影響が出ている
  3. 困難の始まりが学齢期にある
  4. 知的能力障害や視聴覚の問題、学習機会の不足では説明できない

ICD-11でも同様の考え方が採用され、算数の困難を伴うものが分類項目として設けられています。

出典:

問診・生育歴の聞き取り(成績表や通知表が手がかりになる)

「学齢期に始まっていたか」は検査では測れないため、聞き取りが重みを持ちます。持参すると話が進みやすい資料は次のとおりです。

資料 分かること
通知表・成績表 算数・数学だけが低いという偏りの有無
当時のノートやテスト 筆算の桁ずれなど誤りの傾向
母子健康手帳 乳幼児期の発達経過、健診での指摘
職場のミスの記録 現在の支障の具体的な内容

問診では「どんな工夫で乗り越えてきたか」も尋ねられます。対処の積み重ねは困難の深さを示す情報になるためです。資料が残っていなくても問診は成立します。

知能検査(WAIS-Ⅳなど)でわかること

大人にはWAIS-Ⅳ(16歳以上対象、所要1時間半〜2時間程度)が用いられます。目的は認知機能の得意・不得意の差を明らかにすることです。

  • 全体の知的水準に遅れがないこと(学習障害の前提)
  • 指標間の開きと、数量処理に関わる領域の低下
  • 情報を保持しながら操作する力への負荷

この結果だけで算数障害と判断されることはなく、全体像をつかむ材料の一つです。

計算・推論の到達度を測る学力検査や神経心理学的検査

続いて、算数の技能自体の水準を調べます。評価対象はおおむね以下です。

領域 調べる内容
数処理 数字の読み書き、位取りの理解
数概念 数の大小の把握、量としての理解
計算 四則演算の正確さと所要時間
推論 演算の選択、図形や空間の把握

成人向けに標準化された算数の検査は限られるため、就学期向けの検査を参考に用いるなど医療機関ごとに工夫されています。業務書類や実際のミスの実例を持参すると評価の精度が上がります。

ADHD・ASD・不安症など、ほかの要因との鑑別

前述のとおり背景は複数あり得るため、他の可能性を一つずつ検討します。

  • ADHD:注意の持続の難しさによる確認漏れ
  • ASD:手順の切り替えや文脈理解の影響
  • 不安症・気分の不調:緊張や集中力低下による処理の停滞
  • 知的発達の全般的な遅れ:算数以外にも幅広く困難がある場合

これらは「どちらか一方」ではなく、併存する場合はそれぞれを把握して対処を組み立てます。そのため診断確定には一定の期間を要します。

鑑別は診断名を絞る作業というより、困難の全体像を明らかにする作業です。併存が分かることで必要な配慮も具体的になります。

精神科医

大人が算数障害の診断を受けるには?相談先と受診の流れ

大人の発達障害に対応している医療機関は限られています。相談先の選び方から診断までの道筋を整理します。

診断を受けられる医療機関(精神科・心療内科・発達障害専門外来)

診断ができるのは医師のみで、窓口は精神科・心療内科・メンタルクリニックです。ただし看板に精神科とあっても成人の発達障害に対応していない場合があるため、絞り込みが必要です。

  1. 診療内容に「成人の発達障害」の記載があるか確認する
  2. 心理検査を院内で実施できる体制があるか調べる
  3. 予約の電話で「算数の困難を相談したい」と具体的に伝える
  4. 対応外なら、地域の対応医療機関の紹介を依頼する

大学病院や発達障害専門外来では詳しい評価が受けやすい一方、紹介状が必要な場合や待機期間が長い場合があります。かかりつけ医からの紹介も選択肢です。

医療機関以外の相談窓口(発達障害者支援センターなど)

受診に踏み切れない段階では、公的な窓口が相談先になります。

窓口 相談できる内容 診断・手帳
発達障害者支援センター 特性の総合相談、医療機関の情報提供、生活・就労の助言 不要
精神保健福祉センター こころの健康相談、医療機関の案内 不要
市区町村の障害福祉担当課 福祉サービスの手続き、支援機関の紹介 サービスにより異なる

診断の代わりにはなりませんが、困りごとを整理する場として役立ちます。自治体ごとに体制の差があるため、まず電話で対応範囲を確認しましょう。

初診の予約から診断確定までの流れ・期間の目安

一度の受診で結論は出ず、複数回の通院を重ねます。

  1. 電話やWebで初診を予約(相談内容と持ち物を確認)
  2. 初診で現在の困りごとと過去の経緯を聞き取り
  3. 別日に検査を実施(複数回に分かれることもある)
  4. 臨床心理士などが結果を分析し報告書を作成
  5. 医師が総合的に判断し、結果を説明
  6. 職場での配慮や利用できる制度を相談

初診の予約自体が数か月先になることもあり、初診から診断確定までは一か月から数か月程度を見込むのが現実的です。結果説明では強みも示されるため、そこも聞き取っておきましょう。

受診前に準備しておくとよいもの・費用の目安

持ち物は健康保険証、お薬手帳、紹介状(指定がある場合)が基本です。あわせて困りごとを時系列でまとめたメモがあると話し忘れを防げます。

  • 初診・再診:保険適用で、3割負担なら数千円程度が一般的
  • 心理検査:保険適用の検査が多いが、種類により自己負担額は変動
  • 民間の専門機関:保険適用外となる場合がある
  • 診断書の作成:保険適用外で、料金は医療機関ごとに設定

予約時に検査の見込みと自己負担額を確認しておくと安心です。継続通院が必要な場合、自立支援医療で負担が軽減される可能性もあるため窓口に確認してください。

検査は体力を使います。睡眠を取り、体調の良い日に予約を入れてください。

臨床心理士

算数障害と診断されたあとの治療・対処法

診断後は、特性をなくすことではなく生じている支障を減らすことが対応の中心になります。

算数障害の「治療」の考え方(苦手を補う視点が基本)

算数障害そのものを治す薬や根本的な治療法は確立されていません。医療機関で示される方針は次の3つに整理できます。

  1. 困難を具体的に把握する:「数字が苦手」を「桁の多い数の合算でずれる」まで落とし込む
  2. 環境を調整する:業務内容やツール、手順を変えて負荷を下げる
  3. 併存する状態に対応する:他の発達特性や二次的な不調の治療を並行する

薬が処方されるのは算数障害に対してではなく、併存する状態に必要と判断された場合です。

電卓・表計算ソフト・アプリなどツールを活用する

もっとも即効性があるのは計算を自分の頭から切り離すことです。

困りごと ツール 工夫
金額の計算 電卓アプリ、家計簿アプリ レシート撮影で自動入力される機能を選ぶ
集計・合算 表計算ソフト、会計ソフト 計算式を固定し、入力欄だけを触る
支払い・現金管理 キャッシュレス決済、自動引き落とし 履歴で確認できる状態にする
割合の判断 単価計算アプリ 判断を外部の表示に委ねる

生成AIで計算式を組むこともできますが、重要な数値は別の手段で照合する運用が前提です。

仕事のミスを減らす工夫(ダブルチェック・テンプレート化)

人の手が入る工程には、ミスが起きにくい手順の設計が有効です。

  • 自由入力をやめ、決まった欄だけに入力するテンプレートを用意する
  • 三桁ごとのカンマ表示を徹底し、桁の読み違いを防ぐ
  • 数値を声に出して確認する
  • 数値が絡む書類は別の人が目を通す運用にする
  • 過去の書類を複製し、数値だけ差し替える

同じ人が二度見直しても同じ誤りを見逃すため、他者の目を入れる仕組みが要になります。頼みにくい場合は「業務全体のリスクを減らす手順」として提案すると受け入れられやすくなります。

職場に伝える際のポイントと合理的配慮の求め方

開示は義務ではなく自分で決められますが、伝えると合理的配慮を具体的に相談できます。2024年4月1日から、事業者による合理的配慮の提供が法的義務となりました。

困難 配慮の例
計算処理に時間がかかる 電卓・表計算ソフト使用を前提とした作業設計
数値の確認が困難 書類のチェック体制を設ける
口頭の数値を記録できない 数値はメールやチャットで伝達
所要時間の見積もりが難しい 納期設定を上司と一緒に行う

出典:

診断名を告げるだけでなく「何が苦手か」「どう対応してほしいか」を整理して伝えます。診断書は説明の裏付けになり、窓口は上司以外に人事や産業医も選べます。

就労・生活を支える支援機関(ハローワーク/障害者就業・生活支援センター/就労移行支援事業所)

職場だけで解決が難しい場合は外部機関が力になります。

機関 役割 手帳
ハローワーク 専門窓口で求人紹介と働き方の相談 なくても可
障害者就業・生活支援センター 就労面と生活面の支援、職場定着相談、事業主への助言 なくても可
就労移行支援事業所 職業訓練、応募書類・面接の準備、定着支援 事業所により異なる

求人探しはハローワーク、今の職場で働き続けたいなら障害者就業・生活支援センター、時間をかけて準備するなら就労移行支援事業所が適しており、併用も可能です。数字を扱う業務の練習ができるかは見学時に確認しましょう。

業務の中身は職場ごとに違います。どの工程なら対応できるかを切り分けると、選べる範囲は広がります。

就労支援員

大人の算数障害に関するよくある質問

相談の場で尋ねられることの多い疑問を取り上げます。

大人になってからでも診断は受けられる?

年齢を理由に診断が受けられなくなることはありません。基準は大人と子どもで共通で、四十代・五十代で初めて診断に至る方もいます。ただし大人の場合、次の点が子どもと異なります。

  • 学齢期の状況確認を記憶や当時の資料に頼る部分が大きい
  • 長年の工夫や回避によって困難が見えにくくなっている
  • 就労経験で生じた支障が、生活への影響を示す根拠になる

診断には、職場に配慮を求める根拠になる、支援機関の利用につながる、長年の自責から離れられるという実用的な意味があります。

診断されると障害者手帳や支援制度は使える?

診断が自動的に手帳取得につながるわけではありませんが、支障の程度によっては精神障害者保健福祉手帳の対象になります。発達障害は同手帳の対象に含まれます。

制度 内容 申請先
精神障害者保健福祉手帳 税控除、交通機関の割引、障害者雇用枠の利用 市区町村
自立支援医療 通院医療費の自己負担を軽減 市区町村
障害年金 日常生活や就労に相当の制限がある場合の給付 年金事務所

障害年金は初診日や保険料納付の要件を満たし、障害の状態が定められた程度に該当する必要があります。該当するかは個々の状況で異なるため、年金事務所で確認してください。

出典:

出典:

算数障害は治る?改善する可能性はある?

生まれつきの特性であるため特性自体が消える性質のものではありませんが、生活上の困難が軽くなる可能性はあります。

  1. つまずく場面が具体的に分かり、事前に備えられるようになる
  2. 自分に合ったツールや手順が定着し、負担が減る
  3. 職場の理解や業務分担が進み、困難が支障として現れにくくなる
  4. 自責が減り、緊張から生じていたミスが起こりにくくなる

一方で環境が変わり負荷が高まれば再び困難が前面に出ることもあり、改善の度合いには個人差があります。

特性が変わらないことと生活が楽にならないことは別の話です。変えられるのは環境と方法です。

精神科医

診断を受けるメリット・デメリットは?

得られるものは次の点です。

  • 困難の背景がはっきりし、自分を責める必要がなくなる
  • 職場に配慮を求める客観的な根拠になる
  • 手帳や福祉サービスの利用を検討できる
  • 強みが明らかになり、働き方の選択に活かせる

考慮したい点としては、診断までに時間と費用がかかること、診断名の受け止めに揺れが生じる場合があること、生命保険や医療保険の加入審査に影響する可能性があることが挙げられます。保険は加入時期や商品によって扱いが異なるため事前に確認しましょう。診断を受けたことが職場に自動的に知られることはありません。

診断と開示は別の決断です。開示するかどうかは支援機関と一緒に考えていく部分です。

就労支援員

まとめ

算数障害(ディスカリキュリア)は限局性学習症(SLD)の一つで、知的発達に遅れがないのに数や量の理解、計算、推論に著しい困難が生じる状態です。生まれつきの特性であり、努力不足が原因ではありません。

判断の軸は、困難がどれだけ長く続いているかといま生活や仕事に支障が出ているかです。セルフチェックは相談のきっかけを探る目安にすぎません。

診断後に向かう先は計算力の鍛え直しではなく、計算を自分の頭から切り離し、ミスが起きにくい仕組みをつくることです。特性は変わらなくても、環境と方法には変えられる余地があります。困っている今が、相談を始めるタイミングです。

相談に来られる方は、たいてい「もっと早く来ればよかった」とおっしゃいます。整理するところから一緒に始めましょう。

就労支援員