うつ病で休職・退職するときに使える制度まとめ|手当・給付金・デメリットを解説
著者: フラカラ編集部
このコラムのまとめ
うつ病で休職・退職するときに使える制度を網羅的に解説。傷病手当金や失業保険、障害年金、自立支援医療の金額・期間・申請方法から、併給の可否、社会保険料や住民税の負担といったデメリット、休職と退職どちらを選ぶべきかの判断基準、損をしないための手続きの順番までわかりやすくまとめました。
うつ病で働けなくなったときに使える制度の全体像
うつ病で働くことが難しくなったとき、多くの方がまず不安に感じるのが「収入が途絶えたらどうしよう」というお金の問題です。実際に、経済面の不安からうつ病の症状が悪化してしまうケースは珍しくありません。
しかし、日本には休職中・退職後の生活を支える公的な制度が数多く用意されています。「貯金がなければうつ病で退職できない」というわけではありません。まずは全体像をつかむことから始めましょう。
社会保険労務士
「休職」と「退職」で使える制度はどう変わる?
うつ病で働けなくなったときの選択肢は、大きく「休職」と「退職」の2つです。どちらを選ぶかで、使える制度と受け取れる金額が変わります。
ざっくり整理すると、休職中は「健康保険の傷病手当金」、退職後は「雇用保険の基本手当(失業保険)」が生活費の柱になります。
| 休職する場合 | 退職する場合 | |
|---|---|---|
| 雇用関係 | 労働契約を保ったまま就業が免除される | 雇用関係が終了する |
| 主な生活費の支え | 傷病手当金(給料のおおむね3分の2) | 失業保険(前職給与のおよそ50%~80%)/条件を満たせば傷病手当金の継続給付 |
| 社会保険 | 健康保険・厚生年金の資格は継続し、保険料の支払いも発生する | 国民健康保険・国民年金などへの切り替えが必要 |
| 向いている人 | 環境を調整すれば働き続けられそうな人 | 職場そのものが不調の原因になっている人 |
重要なのは、この2つは二者択一ではないということです。まず休職して傷病手当金を受け取りながら療養し、それでも復帰が難しければ退職する、という順番を踏むことで受け取れる給付が増えるケースもあります。いったん休職することで治療に専念しやすくなり、症状が回復したら現職で再びはたらける可能性もあります。
制度は大きく4種類(生活費・医療費・就労支援・税や保険料の軽減)に分けられる
「制度が多すぎて何から調べればいいか分からない」という方は、目的別に4つに分けると整理しやすくなります。
① 生活費を支える制度
- 健康保険の傷病手当金
- 雇用保険の基本手当(失業保険)・傷病手当
- 労災保険(休業補償給付)
- 障害年金、住居確保給付金 など
② 医療費の負担を減らす制度
- 自立支援医療(精神通院医療)
- 高額療養費制度・限度額適用認定証
③ 復職・再就職を支える制度
- リワークプログラム(職場復帰支援)
- 就労移行支援事業所
- ハローワークの専門援助部門
- 障害者就業・生活支援センター
④ 税金・社会保険料の負担を軽くする制度
- 国民年金保険料の免除・納付猶予
- 国民健康保険料の減免、住民税の減免
- 精神障害者保健福祉手帳による税控除・各種割引
精神保健福祉士
制度の申請先一覧(会社・健康保険組合・年金事務所・ハローワーク・自治体)
制度ごとに窓口が異なるため、主な申請先を一覧にまとめました。
| 制度 | 申請先・相談先 |
|---|---|
| 傷病手当金 | 健康保険組合・協会けんぽ(会社経由でも可) |
| 労災保険 | 労働基準監督署 |
| 失業保険・受給期間の延長 | ハローワーク |
| 自立支援医療・障害者手帳 | 市区町村の障害福祉課 |
| 障害年金 | 年金事務所・市区町村の年金窓口 |
| 健康保険・年金の切り替え/減免 | 市区町村役場 |
| 休職制度の内容確認 | 会社の人事部・上司・産業医 |
なお、傷病手当金の申請書には「事業主記入用」の欄があり、会社側に記入を依頼する必要があります。
まず動くべき順番|受診→診断書→会社への相談→制度申請
制度を使うには、ほぼすべての入り口に「医師の診断」が必要です。順番さえ間違えなければ、手続きは一本道で進みます。
- 心療内科・精神科を受診する
- 診断書を発行してもらう
- 就業規則を確認し、会社に相談する
- 休職または退職の手続きを行う
- 各種手当・給付金を申請する
順番を逆にすると行き詰まります。会社に相談しても、診断書がなければ休職の可否を判断してもらえません。逆に、診断書さえあれば話は前に進みます。各ステップの具体的な進め方は、後半の「うつ病で休職・退職するまでの手続きの流れ」で詳しく解説します。
かかりつけ医がいない場合は、勤務先の産業医に相談することもできます。労働安全衛生法により、常時50人以上の事業場には産業医の選任が義務付けられており、診断書を発行できる専門機関を紹介してもらえる場合もあります。
産業医
出典:
うつ病で休職するときに使える制度と手当
「会社を休んだら収入がゼロになる」と思い込み、限界まで無理を続ける方は少なくありません。実際には、休職中の生活を支える仕組みが用意されています。
休職制度とは|法律上の義務ではなく会社の就業規則で決まる
休職制度とは、労働者がなんらかの事情により働けなくなった場合に、労働契約を保ったまま就業が免除される仕組みです。休職制度に関する定めが法律にないため、導入するか否かは会社が決めることができます。
適用条件は各社の就業規則で定められており、雇用形態によって異なることも多くあります。まずは勤務先に制度があるか、自分が対象かを確認しましょう。
休職前に就業規則で確認すべき5項目(期間・給与・社会保険料・連絡方法・復職条件)
休職を申し出る前に、最低限つかんでおきたいのが次の5点です。
- 休職可能な期間……満了時に理由が消滅していない場合、自然退職や解雇が定められていることが多い
- 給料や賞与……一般には無給となる場合が多い
- 社会保険料の支払い方法
- 休職中の連絡方法……窓口となる担当者を一人に絞ると負担が減る
- 復職条件や流れ
なお診断書には医師が必要と判断した休養期間が記載されますが、会社の規定によってはそれより短い期間が定められている場合もあります。
傷病手当金|給与の約3分の2を最長1年6か月受給できる
休職中の生活を支える最大の柱が傷病手当金です。病気や怪我により会社を休み、会社から十分な報酬が得られない場合に支給されます。
支給される4つの条件
- 業務外の病気や怪我による休業であること
- 働くことができない状態であること(判定は自己判断では不十分で、医師の意見などをもとに判断される)
- 連続する3日を含む4日以上仕事ができないこと
- 休業期間中の給与が支払われないこと
支給金額の計算方法と具体例
支給額は給料のおおむね3分の2です。1日あたりの支給額=支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均÷30日×2/3で計算します。
| 標準報酬月額の平均 | 30日分の支給額(目安) |
|---|---|
| 20万円 | 約13万3,000円 |
| 30万円 | 約20万円 |
| 38万円 | 約25万3,000円 |
支給される期間と「通算1年6か月」のルール
令和4年1月1日より、支給期間は「支給開始日から通算して1年6か月」に変わりました。これにより、一旦復職して再度休職する場合、働いていた期間は算入されず、残りの期間分を受給できます。
社会保険労務士
申請の流れと必要書類(医師の意見書・事業主の証明)
申請は休職後に行います。申請書は「被保険者記入用」「事業主記入用」「療養担当者記入用」に分かれ、それぞれ本人・会社・医師が記入します。不備がなければ提出から約2週間で支給されます。申請期限は働けなかった日ごとに翌日から2年です。
待期期間3日間の数え方と注意点
休んだ日が連続して3日間続き、4日目以降も仕事に就けなかった場合に支給対象となります。この3日間(待期)は連続していなければ成立しません。飛び石の休み方では支給が始まらない点に注意しましょう。
労災保険(休業補償給付)|パワハラ・長時間労働が原因の場合
うつ病の原因が長時間残業やハラスメントなど職場環境にある場合は、労災保険を申請できる可能性があります。認定されれば、休業補償給付と休業特別支給金を合わせて給付基礎日額の約8割が支給され、治療費の自己負担もなくなります。傷病手当金(給与の約3分の2・通算1年6か月)より手厚く、期間の上限もありません。
認定は、労働基準監督署が「業務による強い心理的負荷があったか」を厚生労働省の認定基準に沿って判断します。次のような記録が判断材料になります。
- 残業時間が分かる資料(タイムカード、勤怠記録、入退館記録)
- ハラスメントの具体的な言動と日時のメモ、メールやチャットの履歴
- 異動・過大なノルマなど、発症前おおむね6か月の出来事の経緯
ただし精神疾患は因果関係の証明が難しく、審査に数か月以上かかることも珍しくありません。そのため、まず傷病手当金で生活を確保しながら、並行して労災を申請するのが実務的です。認定されれば後から精算して切り替えます。
有給休暇の活用|休職前に消化すべきか残すべきか
休職に入る前に有給休暇が残っている場合、先に消化すれば満額の給与を受け取れます。一方で、有給休暇中は給与が支払われるため、その日の傷病手当金は支給されません(給与額が傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます)。
| 先に消化する | 残しておく | |
|---|---|---|
| 受け取れる額 | その期間は給与の満額 | 給与の約3分の2(傷病手当金) |
| メリット | 収入の落ち込みを後ろにずらせる | 復職後の通院や不調時に使える |
判断の目安は、復職後に通院日や体調不良で休む可能性がどれくらいあるかです。数日分は復職後のために残しておくと、再発の初期段階で無理をせずに休めます。なお、待期期間の3日間に有給休暇を充てても、待期は成立します。
会社独自の見舞金・GLTD(団体長期障害所得補償保険)
公的制度以外に、勤務先や健康保険組合の独自の給付が用意されている場合があります。見落とされやすいので、休職に入る前に確認しておきましょう。
- 健康保険組合の付加給付……組合独自の上乗せ給付。傷病手当金に一定額が加算される制度を持つ組合があります(協会けんぽにはありません)
- GLTD(団体長期障害所得補償保険)……会社が契約し、傷病手当金の終了後まで所得を補償する保険。精神疾患は支払期間が短く設定されている契約もあります
- 会社独自の見舞金・休業補償……就業規則や福利厚生規程に記載されています
いずれも自動的には支払われず、申請が必要です。人事や健康保険組合の窓口に「利用できる給付があるか」を直接確認してください。
休職中の社会保険料・住民税はどうなる?
休職中も健康保険や厚生年金の被保険者資格は継続するため、社会保険料の支払いは発生します。無給で天引きできない場合、会社が立て替えて復職後の給与から追加天引きするケースが多いようです。
また住民税は前年所得に対して課税されるため、収入が減っても納付は続きます。
ファイナンシャルプランナー
出典:
うつ病で退職・離職したときに使える制度と手当
退職すると「収入が完全に途絶えるのでは」という不安が大きくなりますが、退職後にも生活を支える制度は複数あります。
失業保険(雇用保険の基本手当)|特定理由離職者になれば給付制限なし
雇用保険の基本手当は、失業した際にお金の心配をせずに次の仕事を探せるよう支援する制度です。対象となるのは次の方です。
- 再就職への意欲と能力を持ちながら仕事に就けていない「失業状態」であること
- 離職日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上あること
うつ病での退職は自己都合でも「特定理由離職者」になる可能性がある
自己都合退職の場合、受給開始まで給付制限期間があります。2025年4月1日以降に離職した場合は原則1か月に短縮されました(過去5年以内に3回以上の自己都合離職は3か月)。さらに、体調不良でやむを得ず退職した場合は「特定理由離職者」として給付制限が付かないことがあります。
| 一般の自己都合 | 特定理由離職者 | |
|---|---|---|
| 給付制限 | あり(2025年4月1日以降の離職は原則1か月) | なし |
| 必要な加入期間 | 2年間で通算12か月以上 | 1年間で通算6か月以上でも可 |
認定には医師の診断書が有効です。
受給金額・給付日数の目安
金額は前職給与のおよそ50%~80%(60歳~64歳は45~80%)、受給可能期間は原則として離職日の翌日から1年間です。
「働ける状態」でないと受給できない点に注意
対象は「再就職の意欲と能力がある」方です。症状が重く働けない状態では受給できません。その場合に使うのが次の延長申請です。
受給期間の延長申請|最長4年まで失業保険を先送りできる
退職後、引き続き30日以上働けない状態になったら、その翌日以降にハローワークで延長申請ができます。最大3年間延長でき、本来の1年と合わせて最長4年間まで先送り可能です。
ハローワーク相談員
雇用保険の傷病手当|受給資格決定後に働けなくなった場合
離職後にハローワークで求職の申し込みをしたものの、その後に病気やけがで働けなくなった場合の給付です。働けない日数によって使う制度が変わります。
| 働けない期間 | 使う制度 |
|---|---|
| 14日以内 | 基本手当(失業認定で対応可) |
| 15日以上30日未満 | 雇用保険の傷病手当 |
| 30日以上 | 受給期間の延長を申請 |
金額は基本手当と同額で、日数も所定給付日数の範囲内です(受け取った分は基本手当の日数から差し引かれます)。健康保険の傷病手当金とは別制度で、名称が似ていますが併用はできません。申請には医師の証明が必要です。
退職後も傷病手当金は受け取れる|継続給付の3つの条件
次の条件を満たせば、退職後も傷病手当金を受け取れる可能性があります。
- 資格喪失の前日(退職日など)までに継続して被保険者期間が1年以上あったこと
- 資格喪失の前日に傷病手当金を受給していた、または受給できる状態にあったこと
- 退職後も同じ疾患で働けない状態が続いていること
ここで絶対に避けたいのが、退職日に出勤してしまうことです。挨拶回りのための出社が「労務不能ではない」と判断され、継続給付を受けられなくなるおそれがあります。
社会保険労務士
なお、傷病手当金と失業保険は同時に受け取れません。前者は「働けない人」、後者は「働ける人」への給付だからです。
退職後の健康保険|任意継続・国民健康保険・扶養のどれを選ぶ?
選択肢は3つあり、保険料に大きな差が出ます。
| 任意継続 | 国民健康保険 | 扶養に入る | |
|---|---|---|---|
| 保険料 | 在職中の約2倍 | 前年所得に応じる | 0円 |
| 期限 | 退職翌日から20日以内 | 退職翌日から14日以内 | すみやかに |
任意継続は期限が短く、過ぎると原則選べません。また、傷病手当金や失業保険を受給していると扶養に入れない場合があります。
国民年金・国民健康保険料の免除・減免制度
失業を理由に、前年所得にかかわらず特例免除を申請できます。最も注意すべきは「未納」との違いです。手続きせず放置すると未納となり、将来障害年金を受け取れなくなる可能性があります。
社会保険労務士
住民税の減免・徴収猶予
住民税は前年所得に課税されるため、収入がゼロでも納付が必要です。支払いが難しい場合は放置せず、市区町村の税務窓口に相談すれば減免や分割納付に応じてもらえることがあります。
出典:
休職・退職を問わず使える医療費・生活費の支援制度
ここまでの制度は「働いていた状態」が前提でした。一方、在職中か離職中かにかかわらず、治療を続けている方なら使える制度もあります。支出を減らし、長期化に備えるタイプの支援です。
自立支援医療(精神通院医療)|医療費の自己負担が1割に
うつ病で通院する方がまず申請を検討すべき制度です。精神疾患で継続的な通院を必要とする方の医療費を軽減する仕組みで、通常3割の自己負担が1割になります。さらに所得に応じた月額上限も設定されます。
対象は精神科・心療内科の診察料、処方薬、デイケアや訪問看護などです。精神疾患と関係のない治療や入院費は対象外です。
申請は主治医に診断書を書いてもらい、市区町村の障害福祉窓口へ提出します。受診する医療機関と薬局を指定する必要があり、有効期間は1年間です。
| 月の医療費が総額1万円の場合 | 年間の自己負担 |
|---|---|
| 制度を使わない | 36,000円 |
| 自立支援医療を使う | 12,000円 |
高額療養費制度・限度額適用認定証
入院や高額な治療が必要になった場合、同じ月(1日〜末日)の自己負担が上限額を超えた分が払い戻される制度です。上限額は年齢と所得で決まり、住民税非課税世帯なら大幅に低く設定されます。
| 区分(70歳未満) | 1か月の自己負担上限(目安) |
|---|---|
| 年収約370万円〜770万円 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% |
| 年収約370万円以下 | 57,600円 |
| 住民税非課税世帯 | 35,400円 |
事後申請では一度立て替えが必要になるため、入院が決まったら事前に「限度額適用認定証」(またはマイナ保険証の利用)で上限額までの支払いに抑えるのが確実です。なお、通院のみの精神科治療は自立支援医療のほうが軽減幅が大きく、あわせて利用できます。
精神障害者保健福祉手帳|税控除や各種割引が受けられる
手帳は受けられる支援を増やすための証明書です。初診日から6か月以上経過していることが申請の要件で、うつ病では2級・3級が中心です。
- 所得税・住民税の障害者控除など税制上の優遇
- NHK受信料の減免、携帯電話料金の割引
- 公共交通機関や公共施設の利用料減免
- 障害者雇用枠での応募が可能になる
精神保健福祉士
自立支援医療と同時に申請すれば診断書を1通にまとめられる自治体が多く、費用と手間を節約できます。
障害年金|うつ病が長期化した場合の生活の柱
傷病手当金には通算1年6か月の期限があります。その後も働けない場合、最大の支えとなるのが障害年金です。うつ病などの精神疾患も対象です。
障害基礎年金と障害厚生年金の違い
| 障害基礎年金 | 障害厚生年金 | |
|---|---|---|
| 初診日の加入制度 | 国民年金 | 厚生年金(会社員) |
| 等級 | 1級・2級 | 1級・2級・3級+障害手当金 |
社会保険労務士
初診日・保険料納付要件・障害認定日のポイント
- 初診日要件……初診日が特定でき、年金制度に加入していたこと
- 保険料納付要件……初診日のある月の前々月までの公的年金加入期間の3分の2以上が納付・免除済みであること。これを満たさない場合も、初診日に65歳未満で、前々月までの直近1年間に未納がなければ要件を満たす特例があります
- 障害状態要件……原則、初診日から1年6か月経過した日に一定の障害状態にあること
特に初診日の証明は要注意です。カルテの保存期間は5年のため、最初の医療機関名と受診日は必ず記録しておきましょう。
受給できる金額の目安と申請の流れ
令和8年度(2026年度)の障害基礎年金は、2級が年額847,300円(月額約70,600円)、1級が年額1,059,125円(月額約88,300円)です。金額は毎年度改定されるため、申請時点の最新額を確認してください。障害厚生年金の場合は、これに報酬比例部分が上乗せされます。
手続きは、年金事務所で納付要件を確認し、受診状況等証明書・診断書・病歴就労状況等申立書をそろえて提出する流れです。
このうち申立書は、本人が困りごとを伝えられる唯一の書類です。調子の良い日ではなく、困難な状態を基準に具体的に書きましょう。
出典:
住居確保給付金|家賃相当額の支給
離職等で住居を失うおそれがある方に、自治体が家賃相当額を支給する制度です。原則3か月(最長9か月)で、家賃は貸主へ直接支払われます。ただし求職活動が前提のため、療養専念中は対象になりにくい点に注意が必要です。
生活福祉資金貸付制度・生活保護
ここまでの制度を使っても生活が成り立たない場合の選択肢です。
| 生活福祉資金貸付 | 生活保護 | |
|---|---|---|
| 性質 | 無利子・低利の貸付(返済義務あり) | 給付(返済不要) |
| 窓口 | 市区町村の社会福祉協議会 | 市区町村の福祉事務所 |
| 医療費 | 別途負担 | 医療扶助により原則自己負担なし |
生活保護については誤解が多く、持ち家や自動車があっても認められる場合があり、状況が改善すれば廃止できる一時的な利用も可能です。医療扶助により自己負担なく通院を続けられる点も、治療の継続という観点では重要です。
相談の際は、傷病手当金や障害年金など先に使える制度を確認したうえで、それでも足りない分を相談する流れになります。申請は権利であり、窓口で断られても再度相談できます。
民間の就業不能保険・医療保険の給付金請求
見落とされがちなのが、すでに加入している民間保険です。
- 就業不能保険・所得補償保険(精神疾患は対象外の契約も多い)
- 医療保険の入院給付金
- 住宅ローンの団体信用生命保険の特約
いずれも請求しなければ受け取れず、時効は3年です。保険証券を確認しましょう。
出典:
【比較表】うつ病で使える手当・給付金の金額・期間・併給可否まとめ
「結局、自分はどれをいくらもらえるのか」を整理します。特に重要なのが併給可否です。同時に受け取れない制度を知らずに申請すると、あとから返還を求められることもあります。
もらえる金額と期間の比較一覧
| 制度名 | 対象となる状態 | 金額の目安 | 受給できる期間 |
|---|---|---|---|
| 傷病手当金 | 働けない(在職中・退職後) | 給与のおおむね3分の2 | 通算1年6か月 |
| 労災保険 | 業務が原因で働けない | 給付基礎日額の約8割 | 働けない間 |
| 失業保険 | 働ける状態で求職中 | 賃金日額の50~80% | 所定給付日数90~150日(受給期限は離職日の翌日から1年) |
| 雇用保険の傷病手当 | 求職申込後に15日以上働けない | 基本手当と同額 | 所定給付日数の範囲内 |
| 障害年金 | 障害等級に該当 | 基礎年金2級で年約84万7,000円(令和8年度) | 更新しながら継続可 |
| 自立支援医療 | 精神疾患で継続通院中 | 自己負担3割→1割 | 1年ごとに更新 |
読み取れるポイントは3つあります。
- 1か月あたりの水準は労災(給付基礎日額の約8割)>傷病手当金(給与の約3分の2)>失業保険の順。失業保険の「50〜80%」は賃金日額に対する率で、率が高くなるのは低賃金の方に限られるため、標準的な給与水準では5割前後になります
- 受け取れる期間の差はさらに大きいです。障害年金は更新すれば継続でき、労災も働けない間は続きます。一方、傷病手当金は通算1年6か月、失業保険は所定給付日数(自己都合で被保険者期間10年未満なら90日)で終わります
- ただし、これは好きな制度を選べるという話ではありません。「働けない人向け」と「働ける人向け」に分かれており、ここが併給の境界線です
傷病手当金と失業保険は同時に受け取れない
この2つは前提が正反対です。傷病手当金は「働けない」こと、失業保険は「働く意欲と能力がある」ことが条件のため、両立しません。
そこで時間差で乗り継ぐのが基本です。
- 退職後、まず傷病手当金の継続給付を受ける
- 同時にハローワークで失業保険の受給期間延長を申請する
- 療養に専念し、主治医から就労可能の判断を得る
- 傷病手当金を終え、求職申込をして失業保険に切り替える
ハローワーク相談員
なお、雇用保険の傷病手当と健康保険の傷病手当金も、名称は似ていますが別制度のため併用できません。
傷病手当金と障害年金を同時受給する場合の調整
この2つは併給可能ですが調整されます。同一傷病による障害厚生年金を受給していると傷病手当金は支給されませんが、障害年金の日額が下回る場合は差額が支給されます。なお、調整の対象は障害厚生年金です。障害基礎年金のみを受給している場合は、原則として傷病手当金と調整されません。
| ケースA | ケースB | |
|---|---|---|
| 傷病手当金の日額 | 6,000円 | 4,000円 |
| 障害年金の日額換算 | 4,000円 | 5,000円 |
| 受け取れる額 | 6,000円(差額支給) | 5,000円(傷病手当金は停止) |
ただし「調整されるから申請しなくてよい」わけではありません。傷病手当金が終わった後を支えるのは障害年金です。期限前に準備を始めましょう。
労災保険と傷病手当金の関係
この2つは対象が排他的です。業務外なら傷病手当金、業務上なら労災となります。
| 労災保険 | 傷病手当金 | |
|---|---|---|
| 補償水準 | 給付基礎日額の約8割 | 給与の約3分の2 |
| 医療費 | 自己負担なし | 通常3割負担 |
| 認定 | ハードルが高い | 比較的認定されやすい |
実務上はまず傷病手当金で生活を確保しつつ、並行して労災を申請します。認定されれば精算して切り替えます。
収入シミュレーション|休職1年間・退職後1年間でいくら受け取れる?
月収30万円・勤続5年の会社員Aさんが1年間休職した場合です。
| 項目 | 年間 |
|---|---|
| 傷病手当金 | 約240万円 |
| 社会保険料 | ▲約54万円 |
| 住民税 | ▲約15万円 |
| 手元に残る額 | 約170万円(月約14万円) |
在職中の手取りが月24万円なら6割弱の水準です。「3分の2」より少なく感じるのは、社会保険料と住民税の負担があるためです。
さらに退職後は、傷病手当金が終わり、まだ働けないという「空白期間」が生じやすくなります。ここを乗り切るための備えが次の3つです。
- 障害年金の申請を前倒しで進める
- 保険料・住民税の減免申請で支出を圧縮する
- 自治体の窓口に早めに相談しておく
ファイナンシャルプランナー
出典:
休職と退職、どちらを選ぶべきか?判断のポイント
ここは正解が一つに決まる問題ではありませんが、判断を誤りやすいタイミングと、後悔しにくい順番は存在します。結論として、多くのケースでは「まず休職」から検討するのが安全です。
まずは休職を検討したほうがよい理由
理由は大きく4つあります。
- 元の職場に戻る選択肢を残せる……労働契約を保ったまま休めるため、回復すれば現職で再びはたらける可能性があります
- 経済的な条件が有利……傷病手当金で給与の約3分の2が保障されます。退職後は「働ける状態」でなければ失業保険を受給できません
- 判断能力が落ちた状態で決断せずに済む
- 社会保険の切り替え手続きが不要
特に③は重要です。うつ状態にあるときは冷静に判断することが難しく、「自分なんてこの職場にいない方がいい」など悲観的な考えしかできなくなることがあります。休職は「決断を先送りにする時間」を買う手段でもあります。
産業医
退職を検討したほうがよいケース(原因が職場環境にある場合など)
一方、症状の悪化を防ぐためには退職も有効な選択肢です。次に当てはまるなら前向きに検討してよいでしょう。
- ハラスメントや長時間労働など、不調の原因が職場そのものにある
- 会社に休職制度がない、または雇用形態が適用対象外
- 休職期間の上限が短く、満了時に自然退職や解雇となる規定がある
- 相談したが環境調整に応じてもらえなかった
- 「あの会社に戻る」と考えるだけで症状が悪化する
治療に専念するために退職をすることは決して甘えではありません。「勇気を出して退職してよかった」という方も多くいます。
| 休職が向いているサイン | 退職も選択肢に入るサイン |
|---|---|
| 原因が業務量や一時的な繁忙 | 原因がハラスメントや企業体質 |
| 上司や人事が相談に応じてくれる | 相談しても取り合ってもらえない |
| 異動や配置転換の余地がある | 異動しても状況が変わらない |
| 「回復したら戻りたい」と思える | 復帰を想像すると症状が悪化する |
退職前にできる選択肢|異動・時短勤務・業務内容の変更・配置転換
二択で考えがちですが、中間的な選択肢もあります。
- 業務量・業務内容の調整
- 配置転換の申し入れ
- 時短勤務への変更
- 残業免除・深夜業の制限
- 在宅勤務・出社日数の削減
申し出る際は、医師の意見書を添えて具体的に伝えるのがポイントです。「主治医から残業を月20時間以内にと指示が出ています」といった形なら会社も動きやすくなります。
産業医
大きな決断は症状が落ち着いてから|医師に相談する
答えが出ないなら、「今すぐ決めない」ことが最善の判断です。判断を保留したまま療養できるのが、休職という制度の利点でもあります。そのうえで、一人で抱えずに次の相手に相談してみてください。
| 相談相手 | 相談できること |
|---|---|
| 主治医 | 客観的な意見、就労可否の判断、診断書 |
| 産業医 | 職場環境を踏まえた助言、会社との調整 |
| 家族 | 生活設計、経済面のサポート |
| 人事・上司 | 休職制度の内容、異動の可能性 |
主治医には、現職で抱えている課題をできるだけ具体的に伝えましょう。また家族は退職後のサポート役になる可能性が高いため、事後報告ではなく事前に相談することが大切です。
退職を選ぶなら「休職→傷病手当金受給→退職」の順が有利な理由
退職を選ぶ場合でも、順番によって受け取れる金額が大きく変わります。
| いきなり退職 | 休職→傷病手当金→退職 | |
|---|---|---|
| 退職直後の収入 | 働けなければ無収入になりやすい | 継続給付を受けられる可能性 |
| 受け取れる総額 | 失業保険のみ | 傷病手当金+回復後に失業保険 |
| 離職理由 | 自己都合になりやすい | 特定理由離職者となる可能性 |
退職後も傷病手当金を受けるには、退職前に「受給している状態」をつくっておく必要があります。遡って受給することはできません。
- 受診し、休職を要する診断書をもらう
- 診断書を提出し休職に入る
- 傷病手当金の受給を開始する
- 療養しながら復職か退職かを検討する
- 退職する場合も退職日には出勤しない
- 失業保険の受給期間延長も申請する
社会保険労務士
なお被保険者期間が1年未満だと継続給付は受けられません。自分の加入期間を確認して組み立てましょう。
出典:
うつ病で休職・退職するまでの手続きの流れ
方針が決まったら、あとは動くだけです。「何を、どの順番で、誰に対して行うか」を5ステップに整理しました。
| ステップ | やること | 相手 |
|---|---|---|
| 1 | 受診し、診断書をもらう | 心療内科・精神科 |
| 2 | 上司・人事に伝える | 会社 |
| 3 | 休職・退職の手続きと引き継ぎ | 会社 |
| 4 | 健康保険・年金の切り替え | 市区町村・健保 |
| 5 | 各種手当・給付金の申請 | 健保・ハローワーク等 |
ステップ1:心療内科・精神科を受診し診断書をもらう
すべての起点が診断書です。療養目的の休職では提出を求められる場合が多く、退職時も会社によっては求められます。ほかにも次の場面で必要になります。
- ハローワークで「特定理由離職者」として手続きするとき
- 失業保険の受給期間延長を申請するとき
- 障害福祉サービスを利用するとき
診断書に記載される内容と発行費用
| 目安 | |
|---|---|
| 記載内容 | 病名、現在の症状、必要な療養期間など |
| 発行費用 | 3,000円前後(複雑な場合5,000円以上) |
| 発行期間 | 1週間~2週間ほど |
診断書をもらうときに伝えるべきこと
診断書の内容はあなたが伝えた情報に左右されます。目的(休職用か退職用か)、業務への支障の具体例、職場の状況、希望する療養期間を伝えましょう。
精神科医
ステップ2:上司・人事へ伝える(言い方の例文)
ポイントは「診断書という客観的な根拠」を先に立てることです。
【休職の場合】「体調のことでご相談があります。医療機関を受診したところ、〇か月の療養が必要との診断を受けました。診断書をお持ちしましたので、休職についてご相談させてください。」
【退職の場合】「体調不良により治療が必要な状態が続いており、業務の継続が難しいと判断いたしました。〇月〇日をもって退職させていただきたく存じます。」
うつ病だと伝えたくない場合、「一身上の都合」でも問題ありません。通院歴を会社に伝える義務もありません。口頭が基本ですが、難しければ郵送やメールも法的に有効です。タイミングは就業規則に従い、記載がなければ退職日の1ヶ月前が目安(法律上は2週間前)です。
キャリアコンサルタント
ステップ3:休職・退職の手続きと引き継ぎ
休職の場合は休職届と診断書を提出し、期間・給与・社会保険料・連絡方法・復職条件を書面で残る形で確認します。傷病手当金の「事業主記入用」をいつ依頼すればよいかも聞いておきましょう。
| 会社から受け取るもの | 会社へ返却するもの |
|---|---|
| 雇用保険被保険者離職票 | 健康保険証 |
| 雇用保険被保険者証 | 社員証・入館証 |
| 源泉徴収票 | 貸与PC・携帯電話 |
| 健康保険資格喪失証明書 | 制服・業務資料 |
引き継ぎは無理のない範囲で構いません。担当業務のリスト、進行中の案件と連絡先、ファイルの保存場所——この3点のメモで十分機能します。
ステップ4:健康保険・年金の切り替え手続き(退職の場合)
| 手続き | 期限 | 窓口 |
|---|---|---|
| 健康保険の任意継続 | 退職翌日から20日以内 | 健保組合・協会けんぽ |
| 国民健康保険・国民年金 | 退職翌日から14日以内 | 市区町村役場 |
| 年金保険料の免除申請 | 切り替えと同時が望ましい | 市区町村・年金事務所 |
手続きには本人確認書類や資格喪失日が分かる書類が必要です。役場では複数の手続きを同日にまとめてしまうのが、体力の消耗を防ぐコツです。
ステップ5:各種手当・給付金の申請
制度は申請しなければ受け取れません。
| 状況 | 申請するもの |
|---|---|
| 休職中 | 傷病手当金(1か月単位が推奨) |
| 退職後・働けない | 継続給付+失業保険の受給期間延長 |
| 退職後・働ける | 失業保険 |
| 通院継続中 | 自立支援医療 |
精神保健福祉士
会社に行けない・退職を切り出せないときの対処法
動けないのは症状であって、意志の弱さではありません。
- メール・郵送で伝える……退職届は内容証明郵便なら到達の証拠が残る
- 家族に代わりに連絡してもらう
- 上司を飛ばして産業医・人事に相談する
- 外部窓口を使う……総合労働相談コーナー、こころの耳、精神保健福祉センターなど
- 退職代行サービス……運営主体(弁護士・労働組合か)を確認して利用する
精神保健福祉士
休職中・退職後の過ごし方と復職・再就職の準備
手続きが一段落すると「この時間をどう過ごすか」という問いが生まれます。大切なのは、回復の段階に応じてやることを変えるという視点です。
回復の3段階(休養期・回復期・リハビリ期)と過ごし方
| 休養期 | 回復期 | リハビリ期 | |
|---|---|---|---|
| 状態 | 何もする気が起きない | 調子に波がある | 安定した日が続く |
| やること | とにかく休む | 生活リズムを整える | 復職・再就職の準備 |
| 避けること | 復職時期の検討や大きな決断 | 予定の詰め込み | 一気に全開に戻すこと |
初期は心と身体をゆっくり休めましょう。うつ病の治療では「休養」「薬物療法」「精神療法・カウンセリング」が主な方法で、なかでも休養が治療の基本とされています。脳機能が低下した状態にあるため、しっかり休ませることが重要です。
回復期には「寛解」という、症状が一時的に軽くなったり消えたりする状態が訪れます。ただし再発することもあるため、できるようになったことの8割程度にとどめるのが目安です。
精神科医
生活リズムを整える・軽い運動を取り入れる
規則正しい生活リズムは体内時計を正確に働かせ、気分を安定させます。正しいリズムが維持できていることは復職を考える際にも大切です。
- 毎日同じ時間に起きて寝る、朝日を浴びる
- 3食を決まった時間にとる
- ウォーキングなど軽い運動を取り入れる
- 日記をつけて気持ちの変化を記録する
適度な運動はストレス解消に役立ち、不安感や疲労感が減る効果も期待できます。また、入浴や読書、音楽など自分に合うリラックス方法を見つけておくと、ストレスに直面したときに対処しやすくなります。
なお、回復期に多い失敗が通院・服薬の自己中断です。自己判断でやめると回復が遅れたり再発リスクが高まったりするため、必ず主治医に相談しましょう。
復職の可否は自己判断せず主治医と産業医に相談する
知っておきたいのは、「主治医の復職可能」と「会社が求める回復レベル」は一致しないことがある点です。回復しきらないまま復職すると再発を招く可能性があります。
| 主治医が見るもの | 産業医・会社が見るもの |
|---|---|
| 症状の軽快、日常生活 | 業務遂行能力、通勤に耐えられるか |
| 服薬の安定、本人の意欲 | 職場との適合性、再発リスク |
復職前のセルフチェックとして、次の状態が2週間続いているか確認しましょう。
- 毎朝決まった時間に起きられる
- 通勤時間帯に通勤ルートを往復できる
- 数時間集中して過ごせる
- 本や新聞の内容が頭に入る
いきなりフルタイムに戻らず、時短勤務など段階的な復職ができる場合もあります。
リワークプログラム(職場復帰支援)を活用する
リワーク支援は、精神的な不調で休職した方の職場復帰を支援するプログラムです。症状と付き合いながら安定して働く準備を整えることを目的に、セルフケア方法の習得や模擬業務などを行います。
| 実施主体 | 特徴 |
|---|---|
| 医療機関 | 主治医と連携しやすい |
| 地域障害者職業センター | 事業主・主治医と三者連携 |
| 就労移行支援事業所 | 条件を満たせば休職中も利用可 |
公認心理師
就労移行支援事業所を利用する
一般企業への就職を望む障害のある方(65歳未満)を支援する機関です。生活リズムの安定やビジネススキル向上のプログラム、企業インターン、就職後の定着支援を提供しています。体調に合わせて短時間から利用できるため、無理のないペースで準備を進められます。
ハローワークの専門援助部門・障害者就業・生活支援センター
ハローワークには精神疾患のある方が相談できる専門援助部門があり、求人探しや面接対策を支援します。手帳がなくても相談できますが、障害者求人の紹介には手帳が必要です。
障害者就業・生活支援センターは仕事と生活の両面をサポートする機関で、全国に330か所以上設置されています。手帳がなくても利用できる場合があります。
障害者雇用と一般雇用のどちらを選ぶか
| 障害者雇用 | 一般雇用 | |
|---|---|---|
| 配慮 | 受けやすい | 原則なし |
| 求人数・給与 | 限られる/低めの傾向 | 多い/選択肢が広い |
| 必要なもの | 精神障害者保健福祉手帳 | 不要 |
キャリアコンサルタント
再発を防ぐための働き方の工夫
うつ病は再発しやすいことが知られています。「人一倍がんばらなければ」と思わず、不調を感じたら早めに主治医へ相談しましょう。また、ストレスをなくすだけでなく、うまく付き合う「ストレスマネジメント」も役立ちます。
再発には前触れがあります。自分のサインをリスト化し、家族や同僚と共有しておきましょう。
- 寝つきが悪くなる、早朝に目が覚める
- 食欲が落ちる、または過食になる
- 人と話すのが億劫になる
- 好きだったことに興味が持てない
出典:
制度を利用するときのデメリット・注意点
どの制度にも「限界」と「落とし穴」があります。ただし事前に知っておけば、多くは回避できます。
休職のデメリット
収入が減り社会保険料の自己負担が発生する
前述のとおり、休職中も社会保険料の支払いは続きます。傷病手当金は額面の約3分の2であり、そこから保険料と住民税を負担するため、実感としては手取りの半分程度になることもあります。休職前に、月々いくら手元に残るかを試算しておきましょう。
休職期間満了で自然退職・解雇となるリスク
休職期間の上限に達しても復職できない場合、自然退職や解雇が定められていることが多いのが最大のリスクです。特に見落としやすいのが再休職の通算規定で、前回の休職と通算されると、2回目に使える期間が大幅に短くなることがあります。上限が近づいてから慌てないよう、休職に入る時点で満了日を把握しておきましょう。
キャリア・昇進・ボーナスへの影響
賞与は在籍実績で判断されるため減額や不支給となる可能性があり、昇給・昇格の審査でも実績がないことが影響し得ます。
復職後の居場所や人間関係の不安
担当業務が引き継がれている、周囲の目が気になるなど、制度以外の不安も生じます。
産業医
退職のデメリット
収入が完全に途絶えるまでのタイムラグ
経済面の不安から症状が悪化するケースは珍しくありません。特に収入がゼロなのに支出だけ先に来るのが退職直後の苦しさです。
| 時期 | 起こること |
|---|---|
| 退職直後 | 離職票が届くまで1~2週間かかる |
| 1~2か月後 | 国保・年金・住民税の請求が始まる |
最低でも2~3か月分の生活費は確保しておきたいところです。
社会的つながりが減り症状が悪化するケースも
職場は「人と関わる場」「一日の枠組みを与える場」でもあります。失うと生活リズムが崩れ、孤立感が強まることがあります。
転職活動時のブランク・退職理由の説明
空白期間について説明を求められる場面が生じます。ただし面接官が知りたいのは「これから安定して働けるか」です。「療養していたが現在は回復し支障はない」と簡潔に伝え、取り組んだことや再発防止の工夫を添えれば十分です。
各制度そのもののデメリット・落とし穴
傷病手当金は申請から入金まで1〜2か月かかる
審査自体は約2週間ですが、実績の確定、医師と会社の記入を待つため、初回入金は休職開始から1~2か月後が一般的です。
傷病手当金は「通算1年6か月」で打ち切られる
通算化されても総量は変わりません。期限後に備え、障害年金の準備を半年前から始めることをおすすめします。
失業保険は「求職活動できる状態」が前提
療養中で働けない方は受給できません。それどころか、不正受給とみなされ3倍返還を求められることもあります。
ハローワーク相談員
障害年金は更新が必要で不支給・等級落ちの可能性がある
精神疾患は1~5年ごとの有期認定です。改善と判断されれば等級が下がり、提出期限を過ぎると一時差し止めになります。不支給の二大理由は「初診日を証明できない」「納付要件を満たさない」です。
障害者手帳の取得は解除もできるがデメリットは限定的
| よくある不安 | 実際 |
|---|---|
| 会社に知られる | 申告しない限り通知されない |
| 一生ついて回る | 2年ごとの更新制。返還も可能 |
| 戸籍に記載される | 記載されない |
住宅ローン・生命保険の加入審査に影響はある?
影響はあります。団体信用生命保険の告知で精神疾患の治療歴を申告すると、審査が通らない場合があります。対応策としてワイド団信、団信加入が任意のフラット35、告知対象期間の経過を待つ方法があります。虚偽告知は契約解除につながるため厳禁です。
ファイナンシャルプランナー
制度利用が会社や転職先に知られることはある?
本人が申告しない限り、原則知られません。通院歴を会社に伝える義務はなく、マイナンバーで医療情報が伝わることもありません。ただし在職中の傷病手当金は事業主記入欄があるため会社は把握します。
申請でよくある不備・却下される理由
| よくある不備 | 対策 |
|---|---|
| 待期3日が連続していない | 飛び石で休まない |
| 退職日に出勤した | 退職日は絶対に出勤しない |
| 受給期間の延長を忘れた | 30日経過後すぐ申請 |
| 初診日を証明できない | 医療機関名と受診日を記録 |
| 保険料の未納 | 払えない時期は免除申請 |
最も重要なのは「よく調べずに退職しないこと」です。「もらえると思っていたのにもらえなかった」を防ぐため、受給条件は必ず退職前に確認しましょう。
うつ病の休職・退職と制度に関するよくある質問
最後に、実際によく寄せられる疑問をまとめました。細かい条件は加入している健康保険や勤務先の規定で異なるため、迷ったら各窓口に確認してください。
休職中にアルバイトや副業をしてもいい?
原則としておすすめできません。理由は2つあります。
- 傷病手当金は「働くことができない」状態への給付のため、アルバイトができる状態なら支給停止や返還を求められる可能性がある
- 多くの会社が休職中の兼業を禁止しており、懲戒処分の対象になり得る
社会保険労務士
試用期間中や入社1年未満でも傷病手当金はもらえる?
受け取れる可能性があります。傷病手当金に勤続年数の要件はなく、健康保険の被保険者であることが条件です。勤務期間が12か月に満たない場合は、標準報酬月額の平均か全被保険者の平均額のいずれか低い額をもとに計算されます。
| 在職中 | 退職後の継続給付 | |
|---|---|---|
| 勤続1年未満 | 受給できる | 受給できない |
| 勤続1年以上 | 受給できる | 条件を満たせば可 |
パート・派遣・契約社員でも制度は使える?
雇用形態より「社会保険に加入しているか」が分かれ目です。
| 制度 | 非正規雇用での扱い |
|---|---|
| 傷病手当金 | 健康保険の被保険者なら対象(扶養の方は対象外) |
| 労災保険 | 雇用形態を問わず全労働者が対象 |
| 休職制度 | 就業規則次第。正社員のみのケースが多い |
休職が適用される条件は各社の就業規則で定められており、雇用形態によって異なることも多くあります。派遣社員の場合、窓口は派遣元の会社です。
退職後に傷病手当金の申請を忘れていた場合は遡れる?
2年以内なら遡れます。申請期限は「働けなかった日ごとに、その翌日から2年」のため、気づいた時点で申請すれば直近2年分は取り戻せる可能性があります。
ただし、当時の労務不能について医師の証明が必要で、退職した会社に事業主証明を依頼しなければなりません。
社会保険労務士
休職中に転職活動をしてもいい?
禁止ではありませんが、次のリスクを理解しておく必要があります。
- 面接に行けるなら「労務不能ではない」と判断される可能性がある
- 転職活動は消耗が大きく、冷静な判断が難しい状態では選択を誤りやすい
- 回復しきらないまま入社すると早期の再発につながる
方針を決める→傷病手当金を整理する→回復してから転職活動、という順番が安全です。始める際は必ず主治医に相談しましょう。
会社から退職を勧められたら応じるべき?
その場で即答する必要はありません。
- 退職勧奨は「お願い」であり、応じる義務はない
- 退職勧奨に応じて退職する場合は「会社都合(特定受給資格者)」扱いとなり、失業保険で有利になる。それにもかかわらず「自己都合」と記載された書類を示された場合は、その場でサインせず離職理由の確認を求める
- ただし休職期間満了による自然退職は、就業規則に基づく別の扱いになる
キャリアコンサルタント
応じる場合でも、継続給付の要件を満たすまで退職日を延ばせないか交渉する価値はあります。
傷病手当金の受給中に引っ越し・扶養に入るとどうなる?
引っ越しは受給に影響しませんが、住所変更の届出は必要です。転居で通院先が変わる場合、申請書の「療養担当者記入用」は新しい主治医に依頼します。
扶養については誤解が多いポイントです。
| 項目 | 扱い |
|---|---|
| 健康保険の扶養 | 傷病手当金は収入とみなされ、日額3,612円以上だと入れないのが一般的 |
| 税法上の扶養 | 傷病手当金は非課税所得のため収入に含まれない |
つまり「健康保険の扶養には入れないが、税金の扶養には入れる」状態が起こり得ます。実務上は、受給が終わってから扶養に入る流れが一般的です。
ファイナンシャルプランナー
認定基準は健康保険組合ごとに違うため、必ずご家族の勤務先を通じて確認してください。
まとめ|制度を知って、まずは安心して休むことから始めよう
最後に、この記事の要点を整理します。
| テーマ | 押さえるべきポイント |
|---|---|
| 休職中の柱 | 傷病手当金(給与の約3分の2・通算1年6か月) |
| 退職後の柱 | 傷病手当金の継続給付/失業保険 |
| 長期化への備え | 障害年金・自立支援医療・障害者手帳 |
| 順番の鉄則 | 「休職→傷病手当金→(必要なら)退職」 |
| 最大の落とし穴 | 退職日に出勤しない/受給期間の延長を忘れない |
制度のほとんどは「医師の診断」が入口です。裏を返せば、受診という一歩さえ踏み出せば、あとは一本道で進みます。
治療に専念するために休むことは甘えではなく、休養はうつ病治療の基本とされています。「貯金がなければ退職できない」わけでもありません。使える制度を把握すれば不安は小さくなり、治療に専念できます。
精神科医
今つらい方は、まず「受診の予約を取る」ことだけを目標にしてください。手続きは体調が戻ってから一つずつで間に合います。あなたが安心して休むための仕組みは、すでに用意されています。
フラカラ編集部では、障がいのある方の就労や働き方について、できるだけ分かりやすく、実生活に役立つ情報をお届けすることを大切にしています。
制度や仕組みだけでなく、利用者の立場や現場で感じやすい悩みに目を向け、
一つひとつのテーマを丁寧に整理・編集しています。
難しい言葉や専門的な表現に偏らず、はじめて調べる方にも伝わる内容になるよう心がけながら、日々コラムの制作を行っています。