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聴覚障害の等級と仕事|向いてる職種と働く上での配慮を解説

聴覚障害の等級と仕事|向いてる職種と働く上での配慮を解説

著者: フラカラ編集部

監修: 中村 啓吾

このコラムのまとめ

聴覚障害の等級は2級・3級・4級・6級の4区分ですが、働ける仕事の範囲を決めるものではありません。等級ごとの状態と制度、IT・事務・製造など向いてる職種、文字による情報保障や視覚的な警報といった職場で求めたい配慮をまとめました。

聴覚障害の種類と聞こえの程度

聴覚障害は、障害のある部位・聴力レベル・発症時期の3つの軸で整理すると、自分の状態を伝えやすくなります。

伝音性難聴・感音性難聴・混合性難聴の違い

音は外耳から中耳、内耳を通り、聴神経を経て脳へ届きます。この経路のどこに障害があるかで3つに分かれます。

種類部位聞こえ方の特徴
伝音性難聴外耳~中耳補聴器の活用などで会話できることが多い
感音性難聴内耳~聴神経・脳音が歪み、大きくしても言葉として伝わりにくい
混合性難聴両方両者の特徴が併存する

感音性難聴では、一対一なら通じても、3人、5人と増えると誰が何を話しているか音声だけで把握するのが難しくなります。

軽度・中等度・高度・重度|デシベル(dB)で見る聞こえの程度

聞こえの程度は平均聴力レベル(dB)で表されます。

程度平均聴力レベル聞こえの程度
軽度難聴25~40dB未満小さな声や騒音下での聞き取りが難しい
中等度難聴40~70dB未満普通の大きさの声の会話が聞き取りにくい
高度難聴70~90dB未満大きい声か補聴器がないと会話が聞こえない
重度難聴90dB以上補聴器でも聞き取れないことが多い

ただしこれは静かな検査室での目安です。雑音や反響のある場所、マイク越しの音声では聞き取りは大きく下がります。日本聴覚医学会の分類、WHOの分類、身体障害者手帳の認定基準は、それぞれ目的が異なります。

先天性のろう者と中途失聴・難聴者で異なる特性

いつ聞こえにくくなったかでも、必要な配慮は変わります。

  • ろう者:音声言語の習得前に聴覚障害となった人。手話を第一言語とすることが多い
  • 中途失聴者:音声言語の習得後に聴覚障害となった人
  • 難聴者:残存する聴覚を活かしたやり取りを望む人

聴覚障害のある人が全員手話を使うわけではありません。手話、筆談、口話、聴覚活用などを相手や場面で使い分けている人が多く、自分はどの手段なら伝わりやすいかをあわせて伝えることが出発点になります。

身体障害者手帳における聴覚障害の等級

手帳は聴力低下の程度に応じて等級が認定されます。

2級(両耳100dB以上・両耳全ろう)の状態と日常生活

両耳の聴力レベルがそれぞれ100dB以上(両耳全ろう)で、聴覚障害単独では最も重い区分です。手話を母語とするろう者か、音声言語の習得後に失聴した中途失聴者かで、必要な手段は異なります。人工内耳を装用しても、聞こえの困難は残ります。

3級(両耳90dB以上)の状態と日常生活

耳介に接しなければ大声語を理解し得ない水準です。補聴器だけで会話を成立させるのは難しく、大声はかえって聞き取りを妨げることもあります。警報音や接近する車に気づけない点も課題です。

4級(両耳80dB以上/語音明瞭度50%以下)の状態と日常生活

①両耳80dB以上(耳介に接しなければ話声語を理解し得ない)、②両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50%以下、のいずれかで認定されます。語音明瞭度は、言葉を正しく聞き分けられた割合を示す検査値です。

6級(両耳70dB以上/一側90dB以上かつ他側50dB以上)の状態と日常生活

①両耳70dB以上(40cm以上の距離の会話語を理解し得ない)、②一側耳90dB以上かつ他側耳50dB以上のいずれかです。後者は左右差の大きい難聴で、音の方向がつかみにくく、呼ばれても誰か判断しにくくなります。

聴覚障害に1級・5級がない理由と手帳申請の流れ

等級表は平衡機能障害と共通の枠で、3級と5級の一部が平衡機能に充てられるため、聴覚障害単独では2級が上限です。言語機能の障害が重なると1級となることがあります。申請は市区町村の窓口で行い、指定医の診断書が必要です。

聴覚障害の等級は仕事にどう影響するのか

等級が影響するのは、主に利用できる制度の側です。

等級の重さと働ける仕事の幅は必ずしも一致しない

採用で問われるのは聴力の数値ではなく、その業務をどんな手段でなら遂行できるかです。2級でも、チャットとドキュメントで完結する開発職なら聴力はほとんど制約になりません。逆に6級でも、騒音のある現場で口頭指示が飛び交えば負担は毎日積み重なります。働きやすさを決めるのは業務内容 × 情報伝達の方法 × 環境の組み合わせです。

等級によって受けられる支援(障害年金・各種割引・助成金)

混同しやすいのが、手帳の等級と障害年金の等級は別制度だという点です。

身体障害者手帳障害年金
申請先市区町村の障害福祉窓口年金事務所など
等級2・3・4・6級基礎年金は1・2級、厚生年金は1~3級
主な効果福祉サービス、割引、障害者雇用枠現金給付

障害年金は初診日の加入制度や保険料の納付状況も要件となり、金額は年度ごとに改定されます。1級は2級の1.25倍にあたる水準で、対象となる子がいる場合は加算があります。ほかに障害者手当、交通機関の割引、NHK受信料の割引などが等級に応じて定められています。

出典:

障害者雇用枠で働くには手帳の取得が前提になる

障害者雇用枠への応募には、原則として手帳が必要です。配慮の相談が前提として扱われる一方、平均給与が一般枠より低い場合や職種が限られる傾向もあります。手帳があっても一般雇用枠に応募でき、開示するオープン就労と伏せるクローズ就労のどちらも選べます。企業での就労が難しい段階では、受給者証で利用できる就労継続支援A型・B型という選択肢もあります。

聴覚障害のある人に向いてる職種

共通するのは、業務の中心が文字・数値・図など視覚情報でやり取りできることです。

IT・Web系(エンジニア、Webデザイナー、動画編集など)

仕様書やコード、デザインデータなど成果物自体が視覚情報で、チャットやドキュメント共有を前提とする文化が根づいています。プログラマー、システムエンジニア、Webデザイナー、Webライター、動画編集などが該当します。ただし顧客先常駐の上流工程や電話サポートは音声の比重が高く、担当工程の確認が必要です。

事務・バックオフィス系(一般事務、経理、データ入力など)

事務、データ入力、経理、総務などは扱う情報が書類やデータで、正確さが評価されます。注意点は電話対応の有無で、求人票の「一般事務」表記だけでは判断できません。電話を他のメンバーが担い、代わりに集計や書類作成を多く引き受ける形もあります。

製造・技術・ものづくり系(検品、組立、CADオペレーターなど)

検品、組立、CADオペレーター、設備保全などは、指示が図面や作業標準書で共有されます。一方、機械の異常音や車両の接近音が安全情報として機能する現場も多く、注意が必要です。ただし回転灯や振動通知、動線の分離が整っていれば十分な選択肢になります。

専門スキルを活かす職種(研究、翻訳、士業、クリエイター)

研究、翻訳・校正、イラストレーター、税理士や社会保険労務士などの士業は、成果の質と資格が評価に直結します。士業の面談も、論点を事前に文書で共有すれば口頭の比重を下げられます。当事者としての経験を活かす仕事や、在宅中心の働き方という道もあります。

逆に慎重に検討したい仕事とその理由

業務の中核に音声が組み込まれた仕事は、慎重な検討が必要です。

  • 電話が主業務:コールセンター、電話営業
  • 即時の音声対応が必要な接客:ホール、受付
  • 音が安全に直結:ドライバー、警備、重機
  • 音を扱う:音響エンジニア、通訳

ただし働き方の調整によって続けられる場合もあります。タブレット注文の店舗、バックヤードやEC運用への配置、モニター監視中心の施設警備など、工程を分解すれば成り立つ形があります。

聴覚障害のある人が仕事で直面しやすい困りごと

困りごとは本人の努力不足ではなく、音声を前提に設計された環境との間で生じます。

電話対応や口頭での指示が聞き取りにくい

やっかいなのは「半分は聞こえている」ときの取り違えです。断片的に聞こえると自分なりに補って理解したつもりになり、後から認識のずれが発覚します。口の動きを手がかりにする場合、口形の似た言葉や同音異義語は区別できず、初めての話題では文脈もつかめません。聞き返しづらさから確認を遠慮し、ずれが広がる悪循環も起きます。

会議・朝礼・雑談で情報格差が生まれる

誰の発言か判別できず、議論の速さについていけないため、発言の機会や決定事項を取りこぼします。見落とされがちなのが、雑談や立ち話に含まれる非公式な情報から取り残されることです。物音から相手の感情を察することも難しく「空気が読めない」と誤解されますが、実際は情報が届いていないだけです。昇格に関する話題に気づけず、機会を逃すこともあります。

見た目では分かりにくく「伝わっている」と誤解される

外見から分かりにくいため、次のような誤解が生じます。

  • 背後から呼ばれて気づかず、無視したと思われる
  • 大声で話せば聞こえると思われている
  • 補聴器があるから困っていないと思われる
  • 発話が明瞭なので聞き取れていると思われる

「分かった?」と聞かれてもどの部分か判断できず、分かったふりをしてしまいがちです。

緊急放送や背後の危険に気づきにくい

館内放送や警報は流れていること自体に気づけません。通勤時も遅延や振替輸送の案内を受け取れず、職場への連絡が遅れます。放送内容を紙に書いて渡す、チャットに即時投稿するなど、運用を平時に決めておくことが備えになります。

聞き取りへの集中で疲労やストレスが蓄積しやすい

聴覚に神経を集中させながら口元や資料を目で追うため、二重の負荷がかかります。断片から推測し続ける状態は緊張を伴い、頭痛や眼精疲労、意欲の減退につながることもあります。この疲労は業務量ではなく情報環境の設計で増減します。聞こえの変化を感じたら、早めに主治医に相談してください。

働く上で職場に求めたい合理的配慮

2024年4月から、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務化されました。内容は本人と職場の対話で決めていきます。

聴覚障害への職場配慮3選

出典:

筆談・チャット・音声認識アプリによる文字情報の保障

業務連絡をチャットやメールに寄せれば記録が残り、聞き返す負担がなくなります。メモパッドやタブレットの常備、音声認識アプリの活用も有効です。筆談は次の点を伝えておくと精度が上がります。

  • 濃くはっきりした文字で書く
  • あいまいな表現や長文を避け、要点を短く区切る
  • 意味の変わる省略や要約をしない

会議での座席配置・議事録・要約筆記・手話通訳の活用

発言前に名乗る、同時に話さない、資料で顔を隠さないといった進行ルールは費用なく導入できます。情報保障の手段は性質が異なります。

手段特徴
自動字幕即時性が高いが誤変換が起きやすい
要約筆記人が要点を文字化。音声言語で育った人向き
手話通訳手話を第一言語とする人に有効
議事録共有追加費用がほぼかからず決定事項を確認できる

通訳が入る場合は適度な間をとり、通訳者ではなく本人の顔を見て話します。

回転灯や振動デバイスなど緊急時を視覚・触覚で知らせる仕組み

点滅灯やパトライト、振動通知、視覚的なアラーム、避難経路の掲示などが該当します。避難時に誰が声をかけるかを決めておくことも必要です。導入には事業主向けの助成制度がある場合もあります。

在宅勤務・時差出勤など柔軟な働き方の選択

フレックスや時差出勤で混雑した通勤を避けられます。在宅勤務は雑音がなく、字幕や録画も併用できます。めまいや強い疲労を伴う場合があることを事前に伝えておくと、急な変化にも対応してもらいやすくなります。

配慮事項を具体的に伝えるコツ(ナビゲーションブックの作り方)

困る場面と有効だった対処法を一対にして伝えます。文書にまとめたものがナビゲーションブックで、次の項目で構成します。

  1. 聞こえの状態(左右差、環境による変動)
  2. 得意なコミュニケーション手段
  3. 困りやすい場面
  4. お願いしたい配慮
  5. 自分で行っている工夫
  6. 緊急時に取ってほしい対応

自分の工夫も併記すると、協働の提案として受け取られやすくなります。

自分に合った仕事を見つけるためのステップ

全員に共通して合う仕事はありませんが、条件を言語化すれば候補は絞り込めます。

自分の聞こえ方と対処法を言語化して整理する

聞こえ方を数値ではなく場面で書き出します。

  • 右側からの声は聞き取りにくいが、左側なら会話できる
  • 一対一なら問題ないが、3人以上だと誰の発言か追えない
  • 口の動きが見えれば理解できるが、マスク越しは難しい
  • 議題を事前に文書で共有されれば会議についていける

整理が難しいときは、主治医と検査結果を確認しながら症状の特徴を把握しましょう。厚生労働省の職業情報サイトでは、得意・苦手な業務から職業を検索できます。

障害者雇用枠と一般雇用枠のメリット・デメリットを比較する

給与水準だけでなく、配慮の得やすさと職種の幅も含めて比べます。

障害者雇用枠一般枠(オープン)一般枠(クローズ)
配慮前提として整いやすい個別に交渉基本的に得られない
職種の幅限られる傾向広い広い
留意点求人に地域差理解度に企業差負担を一人で抱えやすい

障害者雇用で経験を積んでから一般雇用へ移る人もおり、段階で選び直せます。

求人票と面接で確認しておきたい配慮のチェックポイント

職種名ではなく職場の情報伝達の仕組みまで確認します。

  1. 社内連絡はチャット中心か、口頭中心か
  2. 議事録は作成・共有されるか
  3. 電話業務は担当範囲に含まれるか
  4. 聴覚障害のある社員の受け入れ実績があるか

実績がなくても、前向きに検討する姿勢があるかが重要です。面接では、正確さを求められる作業への適性や文字でのやり取りの速さなど、強みも具体的に伝えましょう。

聴覚障害のある人が仕事を相談できる支援機関

多くは無料で、手帳がなくても相談できる窓口もあります。

機関主な役割手帳
ハローワーク求人紹介、職業相談、定着支援不要
就労移行支援事業所訓練と就職準備、定着支援受給者証
地域障害者職業センター職業評価、職業リハビリテーション不要
障害者就業・生活支援センター仕事と生活の両面の相談不要
聴覚障害者情報提供施設情報保障、相談支援不要

ハローワーク(専門援助部門・手話協力員)

専門援助部門が求職申込から就職後まで対応し、障害者雇用の求人数も多くあります。手話協力員が配置され、筆談やFAX・メールでの相談にも応じます。求人開拓や面接同行で、配慮事項の説明を補助してもらえることもあります。

就労移行支援事業所

一般企業への就職と定着を目的とした福祉サービスで、利用には受給者証が必要です。ビジネススキルの訓練、自己分析、職場実習、企業との配慮の調整、就職後の定着支援などを受けられます。実習で自分に合う環境を実地で確かめられる点が強みです。

地域障害者職業センター・障害者就業・生活支援センター

前者は障害者職業カウンセラーによる職業評価と、職場に出向くジョブコーチの派遣を担います。後者は通院との両立や生活リズムなど、日常面も含めて長期的に伴走します。適性評価や職場調整は前者、生活を含む相談は後者と使い分けます。

聴覚障害者情報提供施設・当事者団体

地域により「聴覚障害者センター」などの名称で、聴覚障害に特化した支援ノウハウを持ちます。来所・FAX・メールなど相談方法を選べ、予約制です。当事者の交流会では、職場との調整経験や役立つツールの情報も得られます。

まとめ

聴覚障害の等級は2級・3級・4級・6級の4区分で、障害者雇用枠や各種割引の条件に関わる一方、働ける仕事の範囲を決めるものではありません。働きやすさを左右するのは、業務内容と職場の情報の流れ方です。

職場での困りごとは、文字による伝達、議事録や要約筆記、視覚的な警報、柔軟な勤務形態で軽減できます。配慮を求める際は、困る場面と有効だった対処法を一対にして伝えましょう。

まずは自分の聞こえ方を場面ごとに書き出すことから始めてください。ハローワークや地域障害者職業センターなど、手帳がなくても相談できる窓口があります。

必要なのは職種の変更ではなく、情報の届き方の調整だったというケースは少なくありません。まずは今の困りごとを話しに来てください。

相談支援専門員